
看護師の仕事は、医療処置や急変対応などがあるため、忙しいイメージを持っている方も多いでしょう。
たしかに、急性期病棟などでは、ミスが許されない精神的なプレッシャーを感じながら、テキパキと仕事をこなすことが求められるかもしれません。
一方で、同じ看護師の仕事でも、比較的ゆったりと働ける職場もあります。
今回の記事では、看護師でものんびりと働きたいと考えている方に向けて、おすすめの職場や転職先の選び方を紹介していきます。
目次
のんびり働きたい看護師におすすめの職場
看護師として「ワークライフバランスを整えたい」「自分のペースでのんびりと働きたい」と考えている方は、以下のような特徴がある職場を選びましょう。
- 夜勤や残業がない(少ない)
- カレンダーどおりに働ける
- 有休消化が十分にできる
- ルーティンワークが多い
- 急変患者が少ない
- 医療処置が少ない
- 看護師の人員配置にゆとりがある
- 人間関係が良好
すべての特徴を満たしている職場を探すことは難しいですが、自身の優先順位を考えて、希望に合った職場を探すことは可能です。
ここからは、「のんびり働きたい」と考えている方に向けて、具体的な職場例を紹介していきます。
病院以外の看護師の勤務先はこちらの記事でも紹介していますので、転職先を考える際の参考にしてください。
クリニック
クリニックは、基本的に夜勤がなく、日曜固定休のところも多いため、プライベートと仕事の両立を無理なくしたいと考えている方におすすめです。
病院のようにさまざまな診療科が集まっているわけではなく、整形外科クリニックや透析クリニックなど通院している患者さんの疾患が固定されているため、実施する医療処置も限られます。
業務に慣れてしまえば、精神的なプレッシャーを感じることも少ないでしょう。
また、全国には約10万のクリニックがあります。
数も多いことから、自宅から通勤しやすいクリニックも見つけられる可能性が高いでしょう。
看護師の仕事内容
クリニックの主な仕事内容は、医師の診療補助です。
小規模のクリニックでは、患者さんの案内や電話対応などの受付業務も看護師が実施することがあります。
■主な仕事内容
- 問診やバイタル測定
- 医師の指示に基づいた医療処置(採血や点滴、心電図の測定など)
- 診療の準備、片付け(医療器具の用意・洗浄・滅菌など)
- 在庫管理(医薬品や備品の発注や棚卸し)
- 受付業務(患者さんの案内・電話対応)
転職するクリニックの選び方
転職するクリニックは、勤務形態とクリニックの規模、診療科の3軸で選ぶと良いでしょう。
クリニックによって、カレンダーどおりの休みや曜日固定のシフト制など勤務形態が異なります。
まずは、自身の希望する働き方と勤務形態が合っているのかを確認しましょう。
また、実施する医療処置や仕事内容は、クリニックの診療科や規模によって変わります。
経験がある診療科のクリニックに転職すれば、今までの知識や経験を生かせるとともに、業務にも早く慣れることができるでしょう。
働き方や仕事内容を正しく把握してから、転職を決めるようにしましょう。
介護施設
介護施設で働く看護師は、身体的な負担が少なく、残業も少ない傾向にあります。
のんびり働きたい方には、おすすめの職場です。
介護施設には、主に以下の種類があります。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護医療院
- 有料老人ホーム
- 軽費老人ホーム
- 認知症高齢者グループホーム
- サービス付き高齢者住宅
- デイサービス
看護師の仕事内容
介護施設の主な仕事内容は、「利用者の健康管理」と「医療処置」です。
■利用者の健康管理
介護施設を利用している方々の健康管理は、看護師の重要な役割です。
具体的には、検温や血圧測定などのバイタルサイン測定や問診を行い、体調に異変がないかどうかを確認します。
また、口腔ケアや爪切りなどご自身ではできないケアのサポートをしたり、軟膏の塗布やガーゼの交換といった簡単な処置も行ったりします。
■医療処置
医師の指示に基づいて、医療処置を実施します。
例えば、内服薬や点滴など薬剤の投与や採血、痰の吸引、褥瘡の処置などを行います。
介護士などの他職種とも協力しながら、長期的な視点をもって、患者さんをサポートできるでしょう。
転職する介護施設の選び方
先述したように、介護施設には複数の種類があります。
働く介護施設を選ぶ際は、利用者の要介護度やADLを確認しておきましょう。
基本的に、介護施設には介護士がおり、日常生活ケアは主に介護士が実施します。
とはいえ、施設によっては、看護師も介護士と協力して利用者の日常生活ケアを行うことがあります。
日常生活ケアは身体的な負担につながる可能性もあるため、事前に看護師がどの程度日常生活ケアに関わっているかも確認しておくと良いでしょう。
健診・検診センター
健診・検診センターは、健康な人を対象とするため、急変リスクの低さに加えてルーティンワークが多い特徴があります。
身体的・精神的な負担が少なく、のんびりと働きたい人にとっておすすめの職場です。
基本的に夜勤はなく、カレンダーどおりの働き方であり、年末年始などの長期休暇も取得できます。
ご家族との時間を大切にするなど、プライベートを重視しながら規則正しい生活を守りながら働けるでしょう。
看護師の仕事内容
健診・検診センターの看護師の仕事内容は、主に以下のとおりです。
- 問診や身長体重測定、採血、心電図の測定などの検査業務
- 医師の診察の補助
- 検診結果のデータ入力や書類作成業務
- 精密検査の予約
1日に多くの人に対応する必要があるため、業務のスピード感と利用者に対する丁寧な接遇の両立が求められます。
特に採血などの処置に時間がかかりすぎると、利用者の待ち時間が長くなってしまったり、時間内に検査業務が終わらなくなったりすることにつながるため、正確かつ素早い採血技術が求められるでしょう。
転職する健診・検診センターの選び方
健診センターのなかには、巡回健診を行っている施設もあります。
巡回健診とは、健康診断を受ける人が健診センターに赴く代わりに、オフィスなどに訪問して健診業務を行うことです。
健診・健診センター勤務の看護師は、巡回健診の実施のたびに出張や宿泊が発生する可能性があります。
勤務条件や健診センターのサービス内容を確認しておくと良いでしょう。
保育園
保育園では、主として健康な子どもたちを相手にするため、医療行為を実施する機会が少なく、精神的なプレッシャーを感じにくいでしょう。
加えて、残業もほとんどなく、ほぼカレンダーどおりの勤務形態であるため、ワークライフバランスも保ちやすい特徴があります。
育児をしたことがある方であれば、看護師としてのスキルだけではなく、自身の育児経験も生かせ、子どもたちの成長を身近で感じられるでしょう。
子どもと触れ合うことが好きな方にとっては、おすすめの職場といえます。
保育園看護師の仕事内容
保育園看護師の主な仕事内容は、以下の5つです。
- 子どもたちの健康管理
- 園内の衛生管理・感染症対策、環境整備
- 保護者への保育指導
- 職員の健康管理・保健指導
- 保育補助
保育園で働く看護師の仕事には、体調不良や怪我が発生した場合の対応や応急処置はもちろんですが、トイレや手洗い場所、子どもたちが使用するおもちゃなどの衛生管理や、子どもたちへの手洗い・うがいの指導といった感染症対策まで含まれます。
これらの業務を通して、保育園に通う子どもたちが安全な環境で過ごせるようサポートします。
また、看護師としての仕事だけでなく、保育の補助を行うなど、保育士の仕事を手伝うこともあるでしょう。
転職する保育園の選び方
保育園への転職を検討する場合には、以下の2点を確認しておくと安心です。
- 保育園での看護師体制
- 教育制度やマニュアルの有無
ほとんどの保育園で、看護師は一人体制となっています。
そのため、緊急の対応が必要な場合に、他に相談できる看護師はいないのが通常です。
看護師経験が浅い方や保育園看護師が未経験の方の場合、対応方法がわからず困ってしまったり、不安を感じてしまうかもしれません。
看護師2人体制としている保育園を選んだり、事前に教育制度やマニュアルが整備されている保育園を選ぶと安心でしょう。
コールセンター
多くの職場において、看護師は日常生活ケアや医療処置を行ったりなど体を動かす仕事が多いのに対し、コールセンターでは座りながら仕事ができるため、体力的な負担が抑えられます。
加えて、患者さんと直接対面することがないため、身だしなみの規定が緩い傾向もあります。
仕事中でも、髪型やネイルなどのおしゃれを楽しめるでしょう。
看護師の仕事内容
コールセンターの仕事内容は電話対応ですが、対応内容は勤務先の企業によって異なります。
大きく分けて、次のような内容があります。
- 一般の方からの健康相談:子どもが嘔吐してしまった、夜間や休日に発熱してしまったなどの緊急時に、一般の方からの健康相談に対応
- 薬剤に関する相談対応:製薬会社のコールセンターで、薬剤の内服方法や保存の仕方などの薬の取扱方法を電話でサポート
- 医療機器の問い合わせ対応:医師や看護師などの医療職からの問い合わせ(医療機器の取扱方法やトラブル・故障時の対応方法)に電話で対応
転職するコールセンターの選び方
コールセンターへ転職する場合は、まず勤務形態を確認しましょう。
24時間体制をとっているコールセンターでは、夜勤のシフトが存在します。
また、ダブルワークや副業としてコールセンターで働くことを検討しているのであれば、副業の可否はもちろん、もう一方の勤務先とのシフト調整が重要となるでしょう。
事前に夜勤の有無や頻度やシフトの組み方を確認しておくと安心です。
のんびり働きたい看護師の病院選びのポイント
同じ病院でも診療科や病院の機能によって、忙しさや出張の有無といった勤務環境が異なります。
のんびり働きたいけれども病院で活躍したいと考えている場合は、これから紹介するポイントを意識しましょう。
急性期以外の病院・病棟を選ぶ
急性期病院・病棟は、急変対応など患者さんの命に直結する場面に関わる機会が多くあります。
精神的なプレッシャーを感じたり、急な処置が追加になってバタバタと対応に追われてしまうことから、身体的にも負担を感じてしまうでしょう。
そのため、のんびり働きたいと考えている場合は、急性期以外の病院や病棟を選ぶことをおすすめします。
例えば、慢性期病棟や回復期リハビリテーション病棟では、長期間にわたる治療や療養が必要ではあるものの容態は安定している患者さんや、自宅に帰るためにリハビリが必要な患者さんが入院しています。
急性期病棟と比較して容態が落ち着いている患者さんを対象としており、看護師の精神的・身体的な負担が少なくなる傾向です。
体力的・精神的に負担の少ない診療科を選ぶ
体力的・精神的に負担の少ない診療科もおすすめです。
具体的な診療科としては、眼科や皮膚科などがあります。
これらの診療科は、命に直結する処置が少ない・急変リスクが低いなどの特徴があり、過度な精神的負担を感じる機会も少ないでしょう。
また、ADLが自立している患者さんが多い病棟であれば、体位変換や清潔ケアなどの日常生活ケアの実施頻度が低くなり、身体的にも楽に感じるかもしれません。
のんびり働ける職場で働くことのデメリット
のんびり働けるような職場では、以下のようなデメリットもあります。
- 看護師のスキルを上げられない可能性がある
- 給料が下がる可能性がある
デメリットを知ったうえで、転職先を探しましょう。
看護師のスキルを上げられない可能性がある
のんびり働ける職場では、看護師としてのスキルを上げられない可能性があります。
例えば、コールセンターや保育園といった医療機関ではない職場では、採血や注射、点滴の投与などの医療処置を行うことはありません。
また、健診・検診センターやクリニックでは、ルーティンワークが多く、業務内容が限られています。
職場によっては、実施できる業務を増やしたり、新たな知識を獲得するといった看護師のスキルアップが難しいことを念頭に置いておきましょう。
給料が下がる可能性がある
のんびり働ける職場に転職した場合、給料が下がる可能性があります。
夜勤がある病棟勤務の場合、基本給に加えて夜勤手当がもらえます。
日本看護協会の調査によると1回の夜勤につき約11,000円の夜勤手当(2交代の場合)が支払われることから、1ヵ月に4回夜勤を実施すれば年間の夜勤手当は約50万円にも上るでしょう。
日勤のみや残業が少ない勤務先に転職すると、夜勤手当や残業代がなくなり、給料が下がってしまうかもしれません。
新卒看護師でものんびり働きたい場合は?
新卒看護師の場合は、まず病院への就職がおすすめです。
クリニックや保育園などの病院以外の勤務先は、臨床経験を応募要件としているなど、看護師としての即戦力を求める傾向があります。
新卒からしばらくは、一人前の看護師として、基礎的な能力を身につける大切な時期です。
一定期間経験を積み、スキルを身につけてから、のんびり働ける職場への転職を検討するのが良いでしょう。
業務内容に幅がある病院で勤務することで、日常生活ケアや採血や注射などの医療行為、アセスメント能力など基礎的な看護スキルを身につけられます。
看護師でものんびり働きたい場合は職場を選んでみよう
看護師でも勤務先を選ぶことで、ゆっくりと落ち着いた環境で働けます。
希望のシフトや給料、看護師としてのキャリアプランを考えて、価値観に合った職場を選びましょう。