
看護師として働きたい人、働いている人のなかには、プライマリーナーシングという言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
また、看護方式のプライマリーナーシングとは何か、どのような目的があるのか気になっている人もいるでしょう。
この記事では、プライマリーナーシングの意味や概要、看護実践方法を解説します。
メリットとデメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
目次
プライマリーナーシングとは看護方式の一つ
プライマリーナーシングシステムとは、患者さんの入院から退院までを一人の看護師が担当する看護のことで、日本には1970年代に導入されました。
現在は多くの病院が採用しているシステムです。
プライマリーナーシングでは、看護計画の立案や評価などを個別に提供し、一人の看護師が受け持つ人数はだいたい5人程度といわれています。
また、最初から最後まで対応するため、信頼関係を築きやすいのが特徴です。
看護師の主体性や専門性を発揮しやすいため、看護師の質も維持しやすいでしょう。
プライマリーナーシングの看護師の役割・実践方法
ここからはプライマリーナーシングの看護師の役割や実践方法として、以下の5つについて解説します。
- 看護計画の立案
- 看護の実施
- 看護計画の評価・修正
- 退院看護サマリーの作成
- カンファレンスへの参加
看護計画の立案
最初に、患者さんが入院した日から、患者さんの症状はもちろん、看護師の経験年数なども踏まえ、プライマリーナーシングの担当看護師を選びます。
プライマリーナーシングの看護師は、患者さんの状況とご家族とのコミュニケーションを踏まえ、現在の患者さんに合う看護計画の立案が必要です。
シフト制の場合、常にプライマリーナーシングの看護師が病院にいるとは限りません。
プライマリーナーシングの看護師が不在の時間でも看護計画が継続できるように、チームやスタッフ間で情報共有を行っておくことが求められます。
看護の実施
看護の実施もプライマリーナーシングの看護師が担う役割の一つであり、患者さんの看護は、立案した看護計画に沿って実践していくことが基本です。
日常の看護はプライマリーナーシングの看護師がメインで行い、不在時は他の看護師が代わりに対応します。
看護師個人の力量を踏まえプライマリーナーシングの看護師がいる勤務でも、シフトによっては他の看護師が受け持つこともあります。
しかし、患者さんへの指導や退院支援などは、プライマリーナーシングの看護師が対応することが多いです。
プライマリーナーシングの看護師は、患者さん一人ひとりに丁寧な看護を行う必要があり、患者さんに合った痛みのケア、退院支援を行うなど、多角的な看護を実践していくことが求められます。
看護計画の評価・修正
患者さんの状態は入院から退院まで日々変化しているため、患者さんの変化を適切に把握し、その都度看護計画を適宜評価および修正を行います。
例えば、慢性期病棟などの比較的状態変化が少ない病棟では、週に1回看護計画を評価するなど、期間が決められている病院もあります。
一方で、ICUなどの特に患者さんの状態変化が起こりやすい病棟では、短い間隔で評価および修正を行うこともあるでしょう。
病院によってやり方が異なるため、自分の働く病院の対応をしっかり確認しておきましょう。
退院看護サマリーの作成
プライマリーナーシングの看護師は、患者さんの入院から退院までの全体のケアを見直し、看護計画が正しく行われたかの最終評価をし、退院看護サマリーを作成します。
これは成果のみならず、今後の課題やケアの継続にも関わるものです。
なぜなら、退院先が施設や病院、自宅であっても訪問看護を導入する場合は、退院看護サマリーを活用し継続した看護を提供する必要があるからです。
症状が急変した場合には転棟・転院サマリーが必要になるケースもあり、その作成もできるだけプライマリーナースが行うことが求められます。
カンファレンスへの参加
プライマリーナーシングの看護師は、職種カンファレンスや退院前カンファレンスに出席することがあります。
これは、患者さんの情報を共有するためにも必要なことと考えられます。
しかし、勤務体制によってプライマリーナースが出席できないケースもあるでしょう。
そのような際には、チームリーダーやプライマリーナーシングの看護師が不在の際に患者さんを担当するアソシエートナースが代理として出席することもあります。
プライマリーナーシングのメリット
ここからは、プライマリーナーシングのメリットとして、以下の3つを紹介します。
- 患者さんと信頼関係を築きやすい
- やりがいがある
- 看護の力をつけることができる
では、それぞれを見ていきましょう。
患者さんと信頼関係を築きやすい
プライマリーナーシングの利点の一つが、患者さんと信頼関係を築きやすいことです。
担当がコロコロ変わることで不安になる気持ちは、想像に難くないでしょう。
入院から退院まで一人の看護師が一貫して看護ケアを提供するため、患者さんには安心感が生まれます。
看護ケアだけではなく、関わる時間が長くコミュニケーションを多く取れることも、信頼関係を築くうえでのポイントといえるでしょう。
患者さんだけではなく、ご家族との信頼関係も築きやすい傾向にあります。
やりがいがある
プライマリーナーシングの看護師は、仕事のやりがいを感じやすいのもメリットの一つといえるでしょう。
一部の看護ケアを担当するのではなく、一人の看護師が患者さんの状態を把握して看護ケアすべてに関わるためです。
自分の担当している患者さんが回復していく様子を見ていると、より一層、やりがいが生まれるでしょう。
また、自分が担当看護師だと意識することで責任感が芽生え、看護師としてスキルアップをするなど向上していくことがやりがいにつながるケースもあります。
看護の力をつけることができる
プライマリーナーシングの看護師は、患者さんに対し責任感が生まれやすく、「誰かに任せる」ということをしなくなります。
自分の行動が患者さんの状態や生活、回復につながると意識する人もいるかもしれません。
そのため、積極的に患者さんのために疾患を勉強する、どのような看護ケアが必要かを考えるといったことが増える可能性が高いです。
その結果、自然と看護の力が向上するといえるでしょう。
プライマリーナーシングのデメリット
プライマリーナーシングにはメリットが多いものの、デメリットも存在しています。
ここでは以下の3つのデメリットを紹介します。
- 提供する看護の質に差が出ることがある
- 看護師個人の責任が重い
- 患者さんと相性が合わないこともある
提供する看護の質に差が出ることがある
プライマリーナーシングでは、看護師一人ひとりの実力によって提供できるケアの質に差が出ることがあります。
これは、担当看護師が新人なのかベテランなのかでも変わってきます。
担当看護師が不在のときに対応する看護師とレベルの差があると、クレームにつながってしまいかねません。
自分の看護ケアの内容に不安がある場合は、他の看護師や先輩看護師に相談し、アドバイスをもらう必要があるでしょう。
職場によってはプライマリーナーシングだけではなく、固定チームナーシングを加えて、それらの欠点を補う対策をとっている場合もあります。
その他、立案した計画をしっかり共有することも、改善策として用いられます。
看護師個人の責任が重い
一人ひとりにしっかり対応できるプライマリーナーシングですが、看護師個人の責任が重くなりがちです。
例えば、患者さんの状態が悪くなったり、退院が延期になったりすると、ついプライマリーナーシングの看護師が責任を感じてしまうなど、個人で必要以上に抱え込んでしまうこともあります。
過剰なプレッシャーやストレスを感じないためには、スタッフ同士でしっかりとコミュニケーションを図ることが大切です。
患者さんと相性が合わないこともある
看護師にもいえることですが、患者さんの性格はさまざまなため、相性が合わないこともあります。
患者さんと自分自身の性格が合わない場合、関わる時間が長いほどストレスを感じるかもしれません。
また、それによって、クレームとなる恐れも否めません。
看護師も一人の人間であるため、患者さんとのトラブルに必要以上に傷ついてしまうケースもあります。
場合によっては、患者さんと関わることが怖くなってしまうケースもあるため、注意が必要です。
プライマリーナーシングとセットで行う看護方式
プライマリーナーシングには、セットで行う看護方式があります。
ここでは、チームナーシングとパートナーシップの2つを見ていきましょう。
チームナーシング
チームナーシングとは、看護師を2つ以上のチームに分けて、チームで一定の患者数に対応する受け持ち看護方式のことをいいます。
経験や能力、専門分野など、さまざまなメンバーでチームが組まれているのが特徴です。
プライマリーナーシングとチームナーシングをセットで行う場合、普段のケアはプライマリーナーシングの看護師が行います。
そして、担当看護師が不在の際にチームナーシングがケアを行うのが基本です。
新人やベテラン関係なく、チームのなかでプライマリーをそれぞれ決めて、看護ケアやプラン評価の際にチームごとに相談や助言を行います。
その結果、より良い看護を提供することにつながる利点があります。
パートナーシップ
パートナーシップとは、看護師がパートナーになってお互いの特性を活かしながら看護を提供する看護方式のことで、PNSとも呼ばれています。
基本的にはプライマリーナーシングの看護師同士で患者さんのプランの修正を行いますが、ペアと相談しながら日々の業務にあたれるのが特徴です。
二人で相談しながらさまざまな問題に対応できるため、一人で責任を負う必要がありません。
必要以上にプレッシャーを感じてしまう人におすすめの方法です。
プライマリーナーシングを理解して看護ケアを実践しよう
プライマリーナーシングは入院から退院まで患者さんをトータルケアできるシステムです。
一人ひとりの患者さんに寄り添い、しっかりと向き合って看護したい人に向いています。
メリットだけではなくデメリットも存在しますが、スタッフや先輩に相談することで解決するケースもあるでしょう。
また、病院によってはプライマリーナーシングと他の看護方式をセットにして負担を少なくしているところもあります。
プライマリーナーシングを取り入れている病院は多く存在しており、転職希望の職場がそのシステムを採用していることもあるでしょう。
ぜひプライマリーナーシングを理解して、看護ケアに取り組んでいきましょう。