「看護師にも働き方改革はあるの?」
「夜勤や長時間労働は解消される?」
看護師として働くうえで、働き方改革について上記のような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。
働き方改革は、看護師の働く現場にも適用されています。
本記事では、看護師の働き方改革として実施されている5つの施策について紹介していきます。
目次
働き方による看護師の業務改革とは
働き方改革は、看護師が働く現場でも他の職種と同じく、2019年4月より順次実施されています。
看護師は従来、夜勤や時間外労働が多い職種でした。
しかし、夜勤や長時間労働によって看護師が疲弊すると、医療ミスや労働災害の原因となります。
そのため、看護師の働き方の見直しは、以前より課題となっていました。
働き方改革では、このような課題の解決や業務改善が期待されており、日本看護協会のホームページにも「働き続けられる仕組みを創る。その仕組みは実現可能で、持続可能な仕組みであること、看護職が生涯にわたって、安心して働き続けられる環境づくりを構築し推進する」と記載されています。
看護師の働き方改革の具体的な内容
ここでは、看護師の働き方改革における、具体的な施策を見ていきましょう。
日本看護師協会は公式ホームページ上で、「働き方改革関連法の施行で何が変わる?」という質問に対し、以下の3点の施策を紹介しています。
- 時間外労働の罰則付き上限規制の導入
- 年次有給休暇5日の取得が義務化
- 客観的な記録による労働時間の把握が義務化
さらに以下の2点も、働き方改革関連法案の一環として推し進められている施策です。
- 「同一労働同一賃金」の導入
- 勤務間インターバル制度の努力義務化
以上5点の施策の詳細について、それぞれ解説していきます。
時間外労働の罰則付き上限規制の導入
働き方改革により、時間外労働に月45時間以内、年間360時間以内の上限が課せられました。
この上限は、労使間で特別条項を結んでおり、なおかつ特別な事情がある場合に限って延長することが認められています。
ただし延長する場合は、以下の条件をすべて守らなければなりません。
- 時間外労働が年間720時間以内
- 時間外労働と休日労働が合計100時間以内
- 時間外労働と休日労働の2~6ヵ月間の平均がいずれも80時間以内
- 時間外労働が45時間を超えている月が年間で6回以内
これらに違反した場合は、6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金が課せられます。
年次有給休暇5日の取得が義務化
使用者は労働者に対し、所定の日数の有給休暇を取得させることが義務付けられました。
対象となるのは年次有給休暇を10日以上付与された労働者で、少なくとも5日以上は取得させる必要があります。
また、有給休暇をいつ取得するかは、できるかぎり労働者本人の意向を汲まなければなりません。
従来、有給休暇は労働者の権利でしかなく、実際に取得するかどうかは労働者本人に委ねられていたため、「上司や同僚も取得していないから取得しにくい」や「病棟が忙しく休みがほしいと言い出せない」などという状況に陥っている職場が少なくありませんでした。
しかし、働き方改革により、有給休暇の取得は労働者の権利であると同時に、使用者にとっての義務にもなりました。
職場側からも取得を働きかける必要が出てきたため、労働者にとっては、従来よりは大幅に取得しやすくなったといえるでしょう。
客観的な記録による労働時間の把握が義務化
労働時間を客観的に記録し、正確に把握できるようにすることが義務付けられました。
客観的な記録とは、タイムカードや、勤怠管理システムなどによる記録のことです。
なお、労働時間には仕事のための更衣にかかる時間や、朝礼・清掃の時間なども含まれます。
「同一労働同一賃金」の導入
雇用形態を理由に、不合理な待遇差を設けることが禁止されました。
業務内容や責任範囲が同じである場合、正規職員であっても、非正規職員であっても、同じ待遇をされなければなりません。
ただし、業務内容や責任範囲の違いによる待遇差は合法です。
例えば以下のような事柄は、待遇差を設けるにあたっての合理的な理由とみなされます。
- 夜勤の有無
- 土日祝日勤務の可否
- 委員会などへの参加
- 配置変換・転勤の可否
- 出張などの可否
- クレーム対応の有無
また、労働者から待遇差についての説明を求められた場合、使用者は説明に応じる義務があります。
勤務間インターバル制度の努力義務化
勤務間インターバル制度とは、退勤から翌日の出勤までの間に、一定の休息時間(インターバル)を設けることです。
例えば、インターバルを11時間に設定した職場で22時まで時間外労働を行った労働者は、翌日の9時まで出勤できません。
この制度を導入することで、労働者の健康やワークライフバランスが確保されやすくなります。
インターバルの確保を実現するためには、以下のような施策が考えられます。
- 一定時間以降の時間外労働を禁止する
- 退勤時間に応じて翌日の出勤時間を遅らせる
勤務間インターバル制度の導入は、現時点では努力義務ですが、厚生労働省では2025年までに15%以上の企業で導入されることをめざしています。
特に医療現場においては、夜勤と日勤が続いてしまうと疲れが抜けきれず、医療ミスや離職の原因となるため、勤務間インターバル制度を導入する必要性は高いといえるでしょう。
看護師が働き続けられるための取り組み
日本看護協会は2021年3月に、「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」として、以下の10項目を挙げています。
5つの要因 | 「就業継続が可能な看護職の働き方の提案」(10 項目) |
1.夜勤負担 | 1)勤務間隔は 11 時間以上あける(勤務間インターバルの確保) 2)勤務拘束時間 13 時間以内とする 3)仮眠取得の確保と仮眠環境の整備をする 4)頻繁な昼夜遷移が生じない交代制勤務の編成とする |
2.時間外労働 | 1)夜勤・交代制勤務者においては時間外労働をなくす 2)可視化されていない時間外労働注を把握し、必要な業務は所定労働時間に取り込む 注)業務開始前残業(前残業)や持ち帰り業務、勤務時間外での研修参加等(業務時間外残業) |
3.暴力・ハラスメント | 1)暴力・ハラスメントに対し、実効性のある組織的対策を推進する 2)上司・同僚・外部からのサポート体制を充実させる |
4.仕事のコントロール感 | 1)仕事のコントロール感を持てるようにする |
5.評価と処遇 | 1)仕事・役割・責任等に見合った評価・処遇(賃金)とする |
看護師の働き方改革を知り、無理なく働き続けよう
看護師の働き方改革について解説しました。
看護師の職場においても働き方改革は適用され、労働者の健康やワークライフバランスを守るためのさまざまな法整備が行われています。
現在看護師として働いている方は、本記事で紹介した内容が現職でも適用されているか確認してみてください。