
薬剤師の活躍フィールドである医療業界は変化が激しく、多様化するニーズに対応するためにも継続的なスキルアップが欠かせません。
少子高齢化が進む日本において、薬剤師が果たす役割も大きくなり、医療・介護・福祉など分野に応じた高度な専門性が求められています。
また、薬剤師の数は年々増加し、将来的には供給が過剰になる可能性も指摘されていることから、競争力を高めるための自己研鑽は必須といえるでしょう。
本記事では、薬剤師がスキルアップする3つの方法を具体的に解説します。
スキルアップの目的や身につけたい知識・技術をふまえて、自分に最適なスキルアップ方法を見つけてみてください。
目次
薬剤師のスキルアップについて
薬剤師のスキルアップは、ただ知識を増やすだけでなく、キャリアの可能性を広げ、より質の高い医療サービスを提供するために重要な取り組みです。
変化の激しい医療業界に適応し長く活躍し続けるには、継続的なスキルアップが欠かせません。
薬剤師がスキルアップを行う目的と身につく内容について理解を深めておきましょう。
スキルアップの目的
薬剤師のスキルアップには、「個人のキャリア差別化」と「医療サービスの質の向上」という2つの大きな目的があります。
薬剤師の数は年々増加しており、競争力を維持するためにも、継続的なスキルアップでほかの薬剤師との差別化が必要です。
また、医療に貢献し活躍し続けるには、最新の動向にアンテナを張り、薬剤師に求められる役割の変化を読み取りながら、必要な知識と技術を磨かなければなりません。
薬剤師のスキルアップは、現在の職場での業務品質に反映されるだけでなく、昇進や転職を考えるうえでも大きな意味を持ちます。
スキルアップの内容
薬剤師がスキルアップを必要とする内容は多岐にわたりますが、専門性の向上や最新情報の収集、業務スキル獲得など、薬剤師の実務に関係するものが中心となるでしょう。
例えば、認定薬剤師や専門薬剤師などの資格取得は、薬剤師のスキルアップに直結します。
また、次々と発売される新薬やジェネリック医薬品を適切に扱うためには、知識とスキルをつねにアップデートしなければなりません。
最新情報を収集し、服薬指導や薬歴管理などに役立てることは、より良い医療サービスの提供につながります。
また、ExcelやWordなどのパソコンスキルのほか、語学力の向上、経営知識の習得などもキャリアアップとなるでしょう。
薬剤師のスキルアップ方法
薬剤師がスキルアップする方法には、大きく3つ挙げられます。
- 資格取得
- 自己学習
- 転職
自分の現在の状況やキャリアプランに合わせて、最適な方法でスキルアップをめざしましょう。
資格取得
資格取得は、薬剤師がスキルアップをめざすうえでまず視野に入れたい取り組みです。
例えば、2016年の診療報酬改定で新設された「かかりつけ薬剤師指導料」を算定するためには、研修認定薬剤師への登録が必要です
ですから、調剤薬局では、かかりつけの患者さんを増やすために、研修認定薬剤師の登録を受けた人材が求められています。
認定・専門薬剤師のように専門性の高い資格を取得できれば、職場の選択肢も広がるでしょう。がんや感染制御、精神科など、特定の分野における高度なスキルを持った薬剤師は、患者さんにより良い医療サービスを提供するうえで欠かせません。
さらに、ケアマネジャーや労働衛生コンサルタントなど、薬学以外の資格を取得すれば、医療機関のみならず幅広い分野での活躍もめざせます。
薬剤師のスキルアップに役立つ資格については、こちらの記事も参考にしてみてください。
自己学習
自己学習でのスキルアップは、薬剤師の仕事をしながら自分のペースで進められる点がメリットです。
スマートフォンやタブレットが手元にあれば、スキマ時間を利用してインターネットで情報を集めたり、教材アプリで知識をつけたりなど、手軽に勉強の機会を作れます。
デジタルツールでの自己学習方法には、次のようなものが考えられるでしょう。
- 医療系専門サイトの活用
- 医薬品・医療機器の添付文書を閲覧できるアプリの利用
- 医療系ニュースサイトでの情報収集
- eラーニングプログラムの受講
デジタルツール以外の学習方法であれば、普段の業務で触れた処方箋から薬剤や疾病の知識を、まとめておけば記憶に残りやすくなります。
実務に活かせる知識を自分のペースで学ぶには、専門的な書籍なども活用できます。
自己学習のモチベーションを保つため、研修会や学会に参加するのも一案です。
医療の現場で活躍する専門家から最新の知識を学べるとともに、同業者とのネットワークを築き情報を入手するチャンスにもなるでしょう。
転職
現在の働き方に迷いがあるなら、転職をするのもスキルアップの一つの選択肢です。
薬剤師が活躍できる場所は多く、職場によって求められる役割や身につく知識・技術などに違いがあります。
転職先 | 特徴 |
病院 | ● 医師や看護師と連携しながら、チーム医療の一員となって治療に深く関われる ● 高度な薬学的管理や治療方針の決定に関わる機会が多く、専門的な知識が身につく ● 最新の医療を学ぶことができる |
調剤薬局 | ● 実践を通して調剤技術を磨ける ● 患者さんとの直接的な関わりを通じて、コミュニケーション能力の向上をめざせる ● かかりつけ薬剤師などで患者さんと深く関われる |
ドラッグストア | ● OTC医薬品(処方箋なしに購入できる医薬品)に関する最新情報をアップデートした提案力を身につけられる ● セルフメディケーションの支援など、薬剤師に求められる新たな役割を学べる ● 化粧品や健康食品などの知識も得られる |
製薬会社 | ● 医薬品の研究・開発に携わるなかで、薬学知識をさらに発展させられる ● 研修や学会で最先端の技術に触れると同時に、語学力を高められる ● ビジネスマナー、パソコンのスキルなどが身につく |
転職をきっかけにスキルアップを図る場合、自分自身の求めるキャリアに合わせた職場選びが大切になります。
スキルアップ時は自己分析が大事
薬剤師がスキルアップに取り組む際は、やみくもに知識を詰め込むのではなく、自己にあった効果的な方法を見極めることが重要です。
特に「何のためにスキルアップをするのか」を明確にしておくと、目標やゴールを見失いにくく、適切な方向性を定めやすくなります。
スキルアップの目的が曖昧なままだと、思うような結果を得られないばかりか、モチベーションが維持できず途中で挫折してしまいかねません。
まずは自分が理想とする薬剤師像や希望の働き方、現在の課題を整理することから始めましょう。
長期的なキャリアの構築を目標とする場合には、資格の取得など、専門性を向上させるためのスキルアップが必要です。
昇進や昇給を希望している方は、現職に役立つ資格や技術を獲得するほか、必要に応じて転職も視野に入れましょう。
また、業務品質の向上をめざすのであれば、研修会への参加、専門書を活用した自己学習などが有効です。
薬剤師のスキルアップは目的を明確にして適切な方法を選ぼう
医療ニーズが高まるなか、薬剤師のスキルアップは、自分以外の薬剤師との差別化を図り、長く活躍し続けるためにも必要不可欠です。
資格取得や自己学習によって専門性を高めるほか、場合によっては、転職も選択肢になります。
自己分析を通して、スキルアップの目的と期待する成果を整理し、自分に合った方法を見極めましょう。
目的意識を持ってスキルアップを継続し、自分が理想とする働き方の実現をめざしましょう。