将来の進路として管理栄養士を検討している方のなかには、本格的にめざす前に、合格率や養成校の詳細を知りたいという方も多いのではないでしょうか。
本記事では、管理栄養士の資格取得の難易度を解説していきます。
目次
管理栄養士の資格取得は難しい?
管理栄養士は、資格の取得が難しいといわれることの多い資格です。
管理栄養士の資格は、医療系の国家資格のなかでも国家試験の合格率が低い水準です。
さらに、国家試験の受験資格を満たすためには昼間の学校に通う必要があり、仕事と学習を両立させることが困難であることも、「管理栄養士は難しい」といわれる要因となっています。
管理栄養士の資格取得が難しいといわれる理由
ここでは、管理栄養士の資格取得が難しい理由をまとめています。
それぞれ見ていきましょう。
国家試験の合格率が低い
管理栄養士が難しいといわれる理由の一つが、合格率の低さです。
管理栄養士の国家試験の合格率は、下記のとおり例年60%前後で推移しています。
開催年 | 合格率 |
第35回(令和3年) | 64.2% |
第36回(令和4年) | 65.1% |
第37回(令和5年) | 56.6% |
参考:【厚生労働省】第35回管理栄養士国家試験の合格発表について|公益社団法人 日本栄養士会
第36回管理栄養士国家試験の合格発表|厚生労働省
第37回管理栄養士国家試験の合格発表|厚生労働省
合格率60%前後というのは、他の医療職と比べると低めです。
たとえば、厚生労働省による令和5年度の国家試験合格発表によると、医師の試験の合格率は91.6%(新卒者は94.9%)、看護師は90.8%(新卒者は95.5%)と高い水準です。
しかし、医師や看護師の国家試験が90%以上と高い合格率を誇るのは、受験資格や合格基準の違いなどがあります。
また、当然ながら医師と管理栄養士では大学の偏差値も異なり、入学の難易度も変わってきます。
他の医療系の国家試験と比べて合格率が低いため「管理栄養士の試験は難易度が高い」と捉えられがちですが、合格率だけでは単純比較できない点は理解しておきましょう。
既卒と新卒で合格率に差がある
管理栄養士国家試験の新卒・既卒ごとの合格率は、以下のとおりです。
【令和4年度 管理栄養士国家試験の合格者内訳】
新卒者 | 92.9% |
既卒者 | 20.5% |
新卒者は、管理栄養士の学校を卒業見込みの人です。
一方で既卒者とは、すでに管理栄養士の学校を卒業している人に加え、栄養士から実務経験を積み、国家資格を受験している人なども含みます。
上表を見ると、既卒者の合格率がかなり低いことがわかります。
令和4年度以前も同様で、去年と一昨年の国家試験も、新卒者と既卒者の合格率は70%以上もの開きがありました。
既卒者の多くは働きながら試験勉強をせざるを得ないため、新卒者よりも資格取得の難易度が高い傾向にあります。
栄養知識だけでなく医療知識も必要
管理栄養士は栄養士とは異なり、高齢者や療養者などの栄養に関して支援が必要な人たちの栄養管理が目的です。
したがって、通常の栄養知識は前提として、看護師や医師に近い医療知識も求められます。
食事の効能や働きだけでも専門的な内容になりますが、加えて人体構造や疾病知識も求められるため、難易度が上がるのです。
通信講座での資格取得は不可能
管理栄養士の資格取得が難しいといわれる理由には、資格取得までのルートも関係しています。
現在、管理栄養士の国家試験を受けるには、厚生労働省が定めた管理栄養士養成学校で必要な履修科目を修了させること、または栄養士の免許を取得したのち実務経験を積むことが義務付けられています。
実務経験も栄養士学校の修業年数に基づき定められており、栄養士から管理栄養士をめざす場合は、最低でも5年以上の年月が必要です。
すでに社会人として働いている人のなかには「通信で資格を取得できないか」と考える方もいると思いますが、通信教育はありません。
すべての養成学校で通学が必要です。
また、栄養士としてすでに働いている方は、日々の業務をこなしながら管理栄養士の試験対策をするため、勉強時間の確保に苦慮するケースも少なくありません。
養成学校はすべて昼のみ
前述のとおり、管理栄養士になるには管理栄養士養成所、または栄養士の学校に通うことが必須です。
それに加えて、現在ある栄養士関係の養成所はすべて昼間部の学校となります。
栄養士の資格を取るには座学だけではなく、実習や実験も多く行わなければなりません。
したがって、夜間のみでは必要な知識・技術を習得できないのです。
まだ小さな子どもがいる方や仕事をしている方の場合、昼間の学校に通うことは難しいことから、管理栄養士をめざす難易度は高いといえるでしょう。
管理栄養士の資格取得のハードルは高いが、しっかり勉強すれば大丈夫
管理栄養士は国家試験も合格率が低く、かつ国家試験の受験資格を得るまでの道も時間がかかります。
しかし、新卒者の国家試験合格率は90%を超えているため、確実な合格をめざすのであれば、管理栄養士養成学校を経るルートを選ぶと良いでしょう。
既卒者は働きながら勉強する必要があるため合格率が大きく落ちますが、適切な勉強方法を選べば合格率を高めることができます。
自分に合った勉強法を探しながら、管理栄養士の道を検討してみましょう。