
一般用医療品の販売に従事する登録販売者は、外部研修を年2回受けなければなりません。
消費者に正しく医薬品を使ってもらうためにも、これまでの知識を確認し、新たな知識を獲得できる研修を受講することは不可欠です。
では、研修を受けない場合、罰則や資格の剥奪があるのでしょうか。
この記事では、登録販売者の外部研修の種類や内容、おすすめの研修実施機関などについてわかりやすく説明していきます。
目次
登録販売者の外部研修とは?
厚生労働省は、平成24年3月26日付の「登録販売者に対する研修の実施について」において、以下のように外部研修の必要性を通知しています。
「研修の専門性、客観性、公正性等の確保の観点より、一般用医薬品販売業者等が自ら登録販売者に対し研修を適切に行うことに加え、外部の研修実施機関が行う研修(以下「外部研修」という。)を受講させることが適当です。」
登録販売者を雇用している会社・店舗には、社内の登録販売者に外部研修を受けさせる義務があると理解するのが適当でしょう。
外部研修には集合研修とeラーニング研修がある
厚生労働省は外部研修の「ガイドライン」を作成しており、それに基づいて外部研修が実施されています。
まず、外部研修はガイドラインの条件を満たした実施機関が実施します。
方法は、研修会場に集まって対面で行う集合研修とインターネットで受講するeラーニング研修の2種類です。
研修は年間12時間以上受講しますが、そのうち6時間以上は必ず集合研修でなければなりません。
外部研修の受講法は2種類
外部研修の受講方法は2種類あります。
集合研修を2回受ける方法と、eラーニング研修を併用する方法です。
- 集合研修6時間 + 集合研修6時間
- 集合研修6時間 + eラーニング研修6時間
集合研修は、各講義終了後に確認テストが行われ、6時間の研修後に受講証明書が交付されます。
2回12時間の研修を修了すると、修了証明書が発行されます。
集合研修の概要と費用
eラーニング研修を併用する場合でも、年に1回(6時間)は集合研修を受講しなければなりません。
参加費用は研修実施機関により異なりますが、集合研修1回につき2,000円前後です。
「ガイドライン」で示された7項目を動画とテキストを用いて学びます。
1日の研修時間は10時~18時頃までです。
研修の最後に認定テストが実施されます。
この研修を年2回受講して確認テストに合格すれば、修了証明書が発行されます。
集合研修のスケジュール
1.事前準備
集合研修は拘束時間が8時間以上になる1日がかりの研修です。
昼食は自分で用意しなければならないので、研修会場の周辺に飲食店やコンビニなどがあるか、事前に確認しておきましょう。
服装に特別なルールはなく、社会人としての常識的な服装であれば問題ありません。
2.受付
受講者の本人確認のため運転免許証などの証明証提示を求められますので、受付開始時間には余裕をもって来場しましょう。
早めに受付を済ませて、指定された座席で講義が始まるのを待ちましょう。
3.講義受講
座席にはカリキュラムの内容と教材が配布されています。
講義は講師によるものとあらかじめ作成された動画を織り交ぜて行われます。
重要なポイントは聞き逃さないよう集中して受講するようにしましょう。
4.講義終了
講義終了後、確認テストで理解度を確認します。
修了証明書の発行を受けて研修は終了です。
研修は不得意分野を克服し新しい知識を学ぶ絶好の機会となります。
eラーニングの概要と費用
eラーニング研修は、自宅や職場でインターネットを利用して研修を受講するスタイルです。
学習内容は毎月更新されるので、常に最新の情報に基づく教材で学べることが大きな特徴です。
前述の「ガイドライン」で示された7つの項目を含む6時間相当の教材を1年で閲覧します。
年4回実施される受講証明テストで満点を獲得すると、eラーニング研修修了になります。
受講費用は1,500円前後です。
ただし、eラーニングの6時間だけでは外部研修修了とはなりません。
集合研修1日(6時間)の受講と合わせて、はじめて外部研修「ガイドライン」を満たします。
ただし、2021年は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、集合研修の代替措置としてリモート講義6時間を実施した研修機関もありました。
リモート講義の詳細は後述します。
登録販売者外部研修の講習内容は?
外部研修は厚生労働省が「ガイドライン」で示した7つの事項に沿った内容で実施されます。
集合研修の講習内容
「ガイドライン」の7つの事項とは次のようなものです。
- 医薬品に共通する特性と基本的な知識
- 人体の働きと医薬品との関係
- 主な一般用医薬品とその作用
- 薬事に関する法規と制度
- 一般用医薬品の適正使用と安全対策
- リスク区分等の変更があつた医薬品
- 店舗及び区域の管理に関する事項(店舗販売業及び配置販売業の場合)
eラーニング研修の講習内容
eラーニング研修では以上に加えて、「新規製剤の適正使用」などをWeb上で学習していきます。
毎年4月から順次公開され、年度末(3月末)まで1年間かけて学ぶカリキュラムになっています。
登録販売者外部研修はリモートで受けられる
今までは最低1回(6時間)以上の集合研修の受講を義務付けられていましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2021年度集合研修はリモート(オンライン)講義で代替できることになりました。
令和2年7月13日付の厚生労働省医薬・生活衛生局総務課の事務連絡で、以下のように連絡しています。
「新型コロナウイルス感染症の感染が収束するまでの間、感染予防の観点から、講義(集合研修)に代えて遠隔講座・通信講座による研修等を実施することにより、遠隔講座・通信講座による研修等の時間数が講義(集合研修)の時間数を超えても差し支えないこと。」
引用元:新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえた登録販売者に対する研修及び既存配置販売業者の配置員の資質の向上に関する講習、研修等の実施方法について
この場合、修了証の発行要件は、eラーニング研修(6時間)+リモート講義(6時間)の計12時間分の通信研修修了です。
来年以降の研修方式やスケジュールなどは実施機関で異なりますので、事前にホームページなどで確認してください。
登録販売者外部研修を受けなかったらどうなる?
厚生労働省の「ガイドライン」により、実務に携わっている登録販売者の外部研修の受講は義務化されています。
しかし、あくまで「ガイドライン」によるものであり、法的拘束力はありません。
研修を受講しないからといって、ペナルティや罰則、資格の剥奪などはありません。
とはいえ、登録販売者は日々消費者と接しており、常に医薬品に関する最新の知識に基づいた接客・相談業務を行う必要があります。
法律や医薬品の情報を最新のものにしておくことが消費者の利益につながります。
そういった観点からも研修受講は必須であると考えるべきでしょう。
外部研修を実施しているおすすめの機関
医薬品関係の会社に勤務している場合は、会社がまとめて申し込むのが一般的です。
しかし、医薬品業界で働いていない場合や、職場の規模が小さい場合などは、自ら研修実施機関を探す必要があります。
研修機関として届け出された団体などは全国に多数あるので、自宅に近い機関を検索しましょう。
例えば次のような団体・法人があります。
● 日本医薬品登録販売者協会
● 各都道府県の医薬品登録販売者協会(東京都医薬品登録販売者協会)
● 日本ドラックチェーン会
● ネットパイロティング株式会社
外部研修でさらなるスキルアップをめざそう
登録販売者として店舗に立つ以上、国が定めた外部研修を受講する義務があります。
医薬品購入者の健康や安全に深く関わることだからです。
外部研修は、医薬品の安全性を正確に伝えていくための最新の知識を学ぶ重要な機会です。消費者の疑問に適切に答えられるよう、毎年新しい知識を吸収し、常に自分の専門的知識をアップデートしていきましょう。