市販医薬品の専門家として活躍する登録販売者は、毎年多くの人が試験を受ける人気の資格です。
試験内容は医薬品の知識から薬機法まで多岐に渡るため、独学での勉強に不安を感じる人も少なくありません。
しかしポイントを押さえた勉強方法で学べば、独学でも登録販売者試験に合格できます。
今回は、登録販売者試験に独学で合格するための勉強方法やコツ、必要な勉強時間についてくわしく解説します。
目次
登録販売者の資格は独学でも合格できる
登録販売者試験の勉強をする際、独学だとどうしても不安になるのではないでしょうか。
結論からいうと、登録販売者試験は独学でも合格できます。
登録販売者試験が独学しやすい理由と独学の難しさを両面から説明します。
試験の対策をしっかりとすれば合格可能
登録販売者の試験は受験資格がなく、学歴・実務・年齢などの制限もありません。
誰でも試験を受けられ、合格すればドラッグストアや量販店など活躍できる場も多いことが登録販売者の魅力です。
登録販売者の試験問題は都道府県が作成し、「試験問題作成に関する手引き」から出題されます。
試験の出題範囲は以下のとおりです。
- 医薬品に共通する特性と基本的な知識:20問
- 人体の働きと医薬品:20問
- 薬事に関する法規と制度:20問
- 主な医薬品とその作用:40問
- 医薬品の適正使用と安全対策:20問
このように、登録販売者の試験は、医薬品に関する幅広い知識が求められます。
問題数は120問出題され、全体の約7割(84問)以上正解すると合格となります。
ただし都道府県によって「足切り」の基準が異なるため、全体点数で7割をとっても必ず合格できるわけではありません。
仮に全体で88点取っていても、正解率が3割を超えない項目があると不合格になる場合もあります。
以下の記事では、登録販売者の試験の内容や申し込み方法について詳しく紹介していますのでご参照ください。
合格率は4割ほど
登録販売者試験の合格率は毎年40%前半です。
資格試験としての難易度はそれほど高くないので、独学でも合格できます。
しかし、点数だけで見ると84点以上が必要で、しかもどの項目も平均して正解しなければなりません。
いかに苦手分野をなくすことができるかが重要になるでしょう。
以下の記事では、登録販売者の試験の難易度について都道府県別の実際のデータを用いて詳しく紹介していますのでご参照ください。
登録販売者資格を独学で勉強するメリット・デメリット
登録販売者資格は独学でも合格可能なため、仕事や学校の勉強とは別に勉強して受験する人も少なくありません。
毎年多くの受験者が試験に臨んでいますが、独学で学ぶ場合はそのメリットとデメリットを理解しておくことが大切です。
登録販売者資格を独学で勉強するメリットとデメリットを整理すると、次のようになります。
メリット | ・自分のペースで勉強できる ・費用を安く抑えられる ・自分の選んだテキストで学べるので覚えやすい |
デメリット | ・勉強のスケジュールを自分で管理しなければならない ・わからない部分を教えてもらえない ・テキスト選びで迷いやすい |
登録販売者試験に合格するための勉強方法
独学で登録販売者試験に合格するためには、事前に押さえておくべきポイントを知っておくことが大切です。
独学はすべて自分が管理しなければならないので、以下にご紹介する内容を参考にして勉強方法を決めましょう。
独学のスケジュールを立てよう
独学をする場合、最初に行うのは勉強のスケジュールを立てる作業です。
ただテキストを片っ端から学んでも、効率よく覚えることはできません。
最初に試験までの日数を序盤・中盤・終盤の3段階に分け、学習内容の目安を立てるのが良いでしょう。
下記を参考にしてスケジュールを考えてみましょう。
序盤 | 勉強に使うテキストを1冊選び、最後まで進めて全体像をつかむ。大まかな流れをとらえることで勉強する内容を把握する。一度最後までやり遂げたことが自信につながる。 |
中盤 | 理解と知識を深めて練習問題を繰り返し、ひたすら暗記する。登録販売者試験は暗記がメインになるので、正答できなかった問題を何度も解いて覚えることが大切。 |
終盤 | 苦手な項目をチェックして、満遍なく覚えるよう暗記していく。過去問を数多く解き、本番と同じような緊張感を持って勉強するのがベスト。本番の試験は60問を120分で解いていくので、タイマーを使ってどんどん問題を解いていく。 |
テキストは最新版かつ自分に合うものを選ぶ
登録販売者のテキストは、できるだけ最新版で過去問が多いものを選びます。
登録販売者試験の問題は、毎年厚生労働省の「試験問題作成に関する手引き」をもとに作成されますが、規定の改正などがあると古いテキストでは対応できません。
テキストを選ぶ前に内容に改正があったかも確認し、その年で一番新しいテキストを選ぶようにしてください。
また、テキストが自分にとって見やすいかどうかも、試験勉強の効率を上げるうえで重要です。
テキストの見やすさの基準には個人差がありますが、図表が多く視覚的に覚えやすいものや、カラーのものがおすすめです。
もし白黒のテキストを使用するのであれば、マーカーを引いたり色ペンで書き込みをしたりと、重要なポイントがわかるように強弱をつけると良いでしょう。
また、登録販売者の試験勉強では、テキストだけでなく自分専用のノートもうまく活用すると内容の理解度が深まります。
以下の記事では、ノートを活用した登録販売者の試験勉強方法を詳しく紹介していますのでご参照ください。
過去問を繰り返し学習する
過去問を繰り返し解くことで、出題傾向がわかるだけでなく、勉強した知識の定着につながります。
過去問は最低でも直近3年分は解くようにしましょう。
過去問を解いていて間違えた箇所やわからなかった箇所は、もう一度テキストに戻って復習することが大切です。
また、間違えた問題に印をつけておくことで、試験直前の見直し作業にも効果的です。
章ごとの勉強法
登録販売者の試験は5つの項目に別れており、それぞれの内容に特徴があります。
さらに項目ごとのつながりに着目すると、勉強しやすい効率的な順番が見えてきますので、下記のような順で勉強してみましょう。
1.【第2章】人体の働きと医薬品 | 人体の各器官の働きなどを詳細に覚えなければならない。第4章と連動するので最初に勉強する。 |
2.【第4章】主な医薬品とその作用 | もっとも暗記力が必要となる項目。医薬品の成分と人体の働きがメインとなる。出題数も多いので、早めに取りかかる。 |
3.【第3章】薬事に関する法規と制度 | 薬事関係法規がメインとなる項目。難しいので問題を飛ばしがちだが、最低限の得点がないと足切りにあうので要注意。 |
4.【第5章】医薬品の適正使用と安全対策 | 医薬品を安全に使用するための知識を確認する項目。他の項目と連動しているので、終盤で勉強すると復習にもなる。 |
5.【第1章】医薬品に共通する特性と基本的な知識 | もっとも基礎となる項目。一般知識があれば答えられるので、終盤に確認する形で勉強する。 |
【2章】絵図を描いて覚える
「第2章 人体の働きと医薬品」は、絵や図を書いて覚えるとより理解しやすくなります。
第2章では体の内部の仕組みや薬の作用の仕方といった内容がメインです。
臓器を絵や図に書いてまとめたり、薬の副作用、症状、特徴、発生頻度などを表にまとめたりすると、視覚的にも覚えやすくなります。
【4章】ひっかけの傾向をつかむ
「第4章 主な医薬品とその作用」では、一般用医薬品における効果・効能などの問題が出題されます。
また、第4章の問題では、「製造販売業者」「製造業者」「都道府県知事」「厚生労働大臣」などが文章で用いられており、ひっかけ問題に気付けるかも重要となります。
毎年似たような問題が出題される傾向にあり、過去問をしっかりと解くことで試験対策が可能です。
【3章】順番を入れ替えて理解する
「第3章 薬事に関する法規と制度」では、薬事関係法規がメインとなります。
専門用語が多く、誰もが難しいと感じる分野です。
総合感冒薬の問題が出題される傾向にあります。
総合感冒薬を覚えるときには、順番を入れ替えて「解熱鎮痛薬」「鎮咳去痰」「鼻炎用内服薬」から覚えると内容が理解しやすくなります。
難しい漢字が並び名前も覚えにくい漢方、生薬は過去問などで出題のまとをしぼって覚えると効率的です。
【5章・1章】他の章と合わせて覚える
「第5章 医薬品の適正使用と安全対策」「第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識」は、他の章と組み合わせて覚えると理解しやすくなります。
具体的には、第5章の問題は第3章の問題と類似しているケースが多く、出題内容も毎年似ている傾向にあります。
第1章の内容は基礎知識のためウォーミングアップとしてはじめに勉強するのも良いですが、一通りの内容を勉強してから最後におさらいするのも手です。
以下の記事では、登録販売者試験の第5章の覚え方にまとを絞って詳しく紹介していますのでご参照ください。
独学で登録販売者試験に受かるコツ
独学で登録販売試験を受けるときは、コツを押さえて勉強すると合格しやすくなります。
勉強の取り組み方から便利なアプリまで、独学に活かしたいツールをご紹介しましょう。
効率的に勉強に取り組む
独学による試験勉強は、効率的に取り組む工夫が大切です。
例えば次のような工夫を取り入れてみると、無駄がなくなりスムーズに勉強できます。
- スケジュールを作成する際には勉強内容まで決める
- 自分が覚えやすいテキストを1冊選んで何度も繰り返し読み込む
- 最低でも過去3年分の問題を解いて覚える
すべて簡単な勉強方法ですが、やることが単純で決まっていると続けやすくなります。
まずはやるべきことをピックアップし、効率よく勉強に取り組みましょう。
知識を定着させるためには3ヵ月以上の勉強する
登録販売者試験の勉強は幅広い試験範囲から満遍なく知識を蓄える必要があるので、最低でも3ヵ月以上の勉強時間が必要になります。
薬に関して深い知識を問われることもあるため、知識が定着するまで勉強しなければなりません。
集中して勉強する時間が取れる人は3ヵ月で間に合う可能性がありますが、仕事や家事と両立しながらだともう少し時間が必要になるでしょう。
以下の表に大まかな勉強時間の目安をまとめたので、自分の状況に当てはめて確認してみましょう。
半年~1年 | 働きながら勉強したり、家事や育児の隙間時間に勉強したりする場合の目安。暗記が得意ならもう少し短くできるが、苦手な場合はこれ以上時間がかかることもある。 |
3ヵ月以上 | 知識を定着させてしっかり準備したい場合は、3ヵ月以上勉強するのがおすすめ。広範囲から出題されるので、過去問までしっかりチェック。 |
1~2ヵ月 | 最短での合格を目指し、短期集中で時間が取れるなら1~2ヵ月が目安。ただし試験日程までの期間が短くなるため難易度が高い。 |
以下の記事では、登録販売者の試験勉強の期間についてより詳しく紹介していますのでご参照ください。
おすすめの暗記法を実践する
実際に合格した人の暗記方法を実践するのも良い方法です。
登録販売者試験はとにかく暗記する項目が多いので、効率良い覚え方を知るだけでも勉強がはかどることでしょう。
おすすめの暗記方法は以下のようなものです。
- 他のテキストに目移りせず、1冊のテキストを覚えるまで繰り返し読み込む
- 同じ問題を何度も繰り返して暗記する
- 例えば、ドラッグストアに寄ったついでに成分表を確認するなど工夫をする
試験の勉強サイトや独学ブログ・アプリを活用する
実際に独学で合格した人のサイトやブログは参考になります。
アプリも勉強に活用できるでしょう。
独学での勉強に少し疲れてきたとき、サイトやブログ・アプリなどで少し情報を収集するだけで、行き詰まりが解消したりヒントを得られたりします。
独学での試験勉強はどうしても一人で抱え込みがちなので、うまく一息つけるタイミングも必要です。
サイトやブログ・アプリを活用して、独学にメリハリをつけてみましょう。
以下の記事では、登録販売者のアプリを活用した試験勉強方法についてより詳しく紹介していますのでご参照ください。
国の給付制度を利用する
費用を考えて独学を選んだ際、どうしても金額的に不安があるときは、国の教育訓練給付金制度 を利用してみましょう。
必要経費の20%が支給されます。
上限10万円までという制限はありますが、母子家庭・父子家庭の人にはうれしい制度です。
詳細を知りたいときは最寄りのハローワークに 問い合わせてください。
通信講座を活用する
ここまで独学のコツや具体的な方法をご紹介してきましたが、自分一人だけで勉強を進めることに不安がある場合は通信講座を活用してみましょう。
通信講座はテキストから問題集まで揃っているので、自分に合うテキストがわからないという人にはおすすめです。
また、独学に自信がなくても、通信教育ならわからないときに質問できます。
定期的にチェックしてもらえるので、進み具合を気にする必要はありません。
独学でも合格できる試験とはいえ、誰かに相談できる環境を整えることも大切です。
すべて一人で管理する自信がない人は、通信講座を活用しましょう。
以下の記事では、登録販売者の通信講座についてより詳しく紹介していますのでご参照ください。
登録販売者はきちんと勉強すれば独学でも合格できる
登録販売者試験は、計画を立ててきちんと勉強すれば独学でも合格できます。
スケジュールを立てたりテキストを選んだりといった準備は一人でしなければなりませんが、勉強のコツがわかれば心配する必要はありません。
それでも不安な場合は、通信講座を利用して勉強する環境を整えるのも良い方法です。
実際に独学で合格した人の意見を参考にしつつ、自分なりの独学方法を模索してみましょう。