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バイタルサインチェックとは?測定方法・基準値のほか注意点も解説

この記事の監修者
川俣貴子
【資格】
看護師

【プロフィール】
東北福祉大学卒業後、看護師として循環器を含む総合病院で働いています。医療系ライターと看護師を励行中です。

バイタルサインチェックは、多くの新人看護師が最初に学ぶ業務です。
看護師が毎日行うバイタルサインチェックは、患者さんの状態変化に気付くためにとても重要です。

ここでは、バイタルサインチェックとは何か、観察する項目の正常値の範囲、そして測定する順番について解説します。
看護業務にまだ慣れていない方は、ここで正しいバイタルサインチェックの方法を学んでおきましょう。

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バイタルサインチェックとは

バイタルサインチェックとは

バイタルサインチェックは、患者さんの生命兆候をチェックする看護業務のことを指します。
患者さんの数値を測定することで、患者さんへのケアの必要性を判断できるのに加え、日々の数値を比較することで状態異常の早期発見ができ、医師によるすみやかな治療や診療につなげることができます。

生命兆候をチェックすること

「バイタル」とは、生命兆候のことであり「意識レベル・呼吸・血圧・脈拍・体温」の5つから成り立ちます。
生命兆候を測定し、患者さんや利用者さんの身体に異常がないかを判断することが、バイタルサインチェックです。

看護師は、毎日のようにバイタルサインチェックを行います。
そのため、手順や注意点をしっかりと理解したうえで、正確かつ安全に行えなければなりません。

なぜ看護師がバイタルサインチェックを行うのか?

保健師助産師看護師法において、看護師の役割は、傷病者やじょく婦(出産後間もない女性)の療養上の世話や、診療の補助を行うことであると定められています。

体調の変化は、呼吸機能や循環機能として現れることが多くあります。
そのため、看護師が、医師の診療や診療の補助を行うためには、バイタルサインチェックによって循環・呼吸機能などを日々チェックし、異常の際、医師へ早期に報告することが求められます。

また、処置やケアを行った後にバイタルサインチェックを行い、数値がどのように変化したかを見ることで、提供したケアは適切であったのか、新たな処置が必要となるのか、といった判断を行うこともできます。

バイタルサインチェックの基準値

バイタルサインチェックを行い患者さんの異常に気付くためには、前提として基準値・正常値を知っている必要があります。
ここで、それぞれのバイタルサインの正常値を理解しましょう。

意識レベル

意識レベルの確認は、JCSやGCSを使用する病院や施設が多いでしょう。

JCSはジャパンコーマスケールのことで、呼びかけや痛み刺激に対する反応で意識レベルを評価します。
短期間で簡便に評価できるため、急性期であるICUや救急外来で使われることが多いのが特徴です。

【JCS】

項目 説明 点数
Ⅰ.刺激しないでも覚醒している状態 意識清明とはいえない 1
見当識障害がある 2
自分の名前、生年月日が言えない 3
Ⅱ.刺激すると覚醒する状態 普通の呼びかけで容易に反応する 10
大きな声または身体を揺さぶることにより開眼する 20
痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すことによりと辛うじて開眼する 30
Ⅲ.刺激しても覚醒しない状態 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする 100
痛み刺激に対しで少し手足を動かしたり、顔をしかめる 200
痛み刺激にまったく反応しない 300

Sはグラスゴー・コーマ・スケールのことです。
「開眼・最良言語反応・最良運動反応」の3項目の総和で評価しますが、項目が細かいためやや複雑な部分があります。

【GCS】

項目 説明 スコア
開眼(E:eye opening) 自発的に開眼 4
呼びかけにより開眼 3
痛み刺激により開眼 2
なし 1
最良言語反応(V:best verbal response) 見当識あり 5
混乱した会話 4
不適当な発語 3
理解不能の音声 2
なし 1
最良運動反応(M:best motor response) 命令に応じて可 6
疼痛部へ 5
逃避反応として 4
異常な屈曲運動 3
伸展反応(除脳姿勢) 2
なし 1

呼吸

呼吸数の基準値・正常値は12〜20回/分です。
呼吸状態をみるときは回数のほか、「頑張って呼吸をしていないか」や「肩を上下させるような苦しい呼吸をしていないか」など呼吸状態が整っているかを観察することが重要です。

また、呼吸回数のほかに、聴診器を用いて副雑音も聴取します。
副雑音にはいくつかの種類もあるため、下記の表を確認して覚えましょう。

【副雑音の種類】

種類   主な原因疾患
連続性副雑音 高音性(weeze) ヒューヒュー ・気管支喘息
・気道狭窄
・心不全
  低音性(rhonchi) グーグー ・痰貯留
・肺炎
・気道閉塞
断続性副雑音 捻髪音(fine crackles) パチパチ ・肺水腫
・肺線維症
・間質性肺炎
  水泡音(coare crackles) ブツブツ ・気管支拡張症
・肺水腫
その他 胸膜摩擦音 ギューギュー
バリバリ
・皮下気腫
・胸膜炎

脈拍

脈拍の基準値・正常値は60〜100回/分です。

50回/分以下が徐脈、100回/分以上が頻脈と呼ばれます。
患者さんが一定のリズムで脈拍を刻む人であれば、血圧測定時の値を参考にすることもできます。
しかし、心房細動など不整脈がある患者さんは、きちんと測定できていない可能性もあるため、直接脈拍を測りましょう。

脈拍を測定するときは回数だけではなく、脈が一定のリズムで打っているのか、脈が飛んだり早くなったり遅くなったりなど、リズムが狂っていないかを確認することも大切です。
普段は一定のリズムを刻んでいる患者さんの脈拍測定時に不整脈となることがあれば、早期にリーダーや先輩へ相談しましょう。

血圧

血圧の基準値・正常値は、収縮期血圧が135未満、拡張期血圧が85未満といわれています。

高血圧が継続すると、脳・血管疾患や心臓病を引き起こす原因となります。
また、患者さんが脱水傾向なのか溢水傾向なのかなどを判断できる指標にもなるため、一般病棟でも集中治療室でも重要な数値の一つとして扱われています。

体温

体温は個人の筋肉量や活動量などによって多少の個人差がありますが、基準値・正常値は36〜37度です。

主に測定する体温は表面温、口腔・膝窩温、深部体温の3種類がありますが、一般病棟では腋窩や額で測定することが多いでしょう。
体温を測定する際は、シバリング(小刻みに身体が震えている)や発汗をともなっていないかなどを同時に観察して測定することが重要です。

採血で炎症反応が上がっていたり、食事摂取時むせ込みがある患者さんなどは、体温が上昇しやすいためしっかり観察しましょう。

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看護師が行うバイタルサインチェックの手順

一般病棟など患者数が多い病棟は特に、バイタルサインチェックの手際の良さが大切です。
ただ闇雲に測定しても効率が悪く、正常に測定できていない場合もあるため、ここで効率良く正しく測定できる方法を学びましょう。

患者さんにバイタルサインチェックを行うことを説明する

患者さんの部屋に行き、突然バイタルサインチェックを始めてしまうと、患者さんは驚いてしまい、何をされるのか不安になってしまいます。
事前にこれから何を行うのかを説明し、同意を得てからバイタルサインチェックを始めましょう。

なかには、バイタルサイン測定に拒否的な患者さんもいるかもしれません。
その場合、業務がスケジュールどおりにいかないからといって、無理やりバイタルサインチェックを行っても正しい値を得ることはできません。
時間をおいてから再度訪室したり、なぜ拒否的なのかを考えて対応したりすることで、不安や苦痛を最小限に抑えられるように関わることが必要です。

また、意識レベルを確認するときは、会話をするなかで「今日が何日か覚えていますか」や「お名前と生年月日を教えてください」などと声をかけて行いましょう。

脈拍・呼吸を測定する

次に、脈拍と呼吸を測定します。

脈拍は示指・中指・環指の3本指の腹を、橈骨動脈に軽く当てて、1分間脈拍を触知します。
このときに、脈が不整ではないかも合わせて確認しましょう。

そのまま次の1分で、胸部・腹部の上下運動を確認し呼吸回数を測定します。
呼吸音は聴診器を用いて、肺の上・中・下部に分けて、それぞれの部位で呼気と吸気を1セットとして聞きましょう。
普通の呼吸ではわかりづらいこともあるため、深呼吸ができる人であれば促すと聞きやすいです。

また、呼吸の測定前に患者さんに対して「今から呼吸をみます」と断言してしまうと、見られているという意識から緊張してしまい、正確な値がとれない場合があります。
そのため、患者さんには告げずに、そのまま呼吸を測定することがポイントです。

体温測定を行う

脈拍・呼吸の測定が終わったら、体温を測ります。

腋窩温を測定する場合は、その部位が発汗や水などで濡れていないかを確認し、濡れている場合はふき取ってから測定をします。
表面が濡れていると正しい値が出ない場合があるためです。

体温計の先端が密着するように下から上に向けて、腋窩にはさんでから、すき間ができないよう、腕を抱えてもらうことでより密着します。
首元がしまっている服を着ている場合は、無理やり襟元を伸ばさずに、下から体温計をいれましょう。

額で体温を測定する場合は、離しすぎると正しく測定できないため、きちんと近づけて測定しましょう。

血圧測定を行う

体温を測ったら血圧測定を行います。

長袖を着ている場合、きちんと正しい値を測定できるよう腕まくりをしてもらいましょう。
冬場など厚手の服を着ている場合、腕まくりをすることで上腕が圧迫されてしまう可能性があるときは、厚手の服だけ脱いでもらいます。

ゴム嚢(マンシェット)の中心が上腕動脈の上、端が肘の中心より2cm〜3cm上になるようにして当てて、指2本分ほどが入る強さでゴム嚢(マンシェット)を巻きます。

加圧するときは橈骨動脈を触知し、脈が触れなくなったところから30mmHgほど加圧して、ゆっくりと減圧していきましょう。
うまく測定できない場合は、マンシェットの大きさが患者さんに合っているのかを確認したり、聴診法を用いてみるなど別の方法を考えることが大切です。

終了したことを告げ、周りを整える

一通り測定を終えたら、バイタルサインチェックが終了したことを患者さんに告げ、患者さんの寝衣や布団、周囲を整えて退室します。
使用した物品はアルコール消毒をして、次の人との接触感染などを避けるように気を付けましょう。

バイタルサインチェックの物品のほか、アルコール消毒なども一緒に持ち歩くと、ナースステーションに戻らずに効率良く患者さんのバイタルサインチェックを行うことができるのでおすすめです。

バイタルサインチェック時の注意点

バイタルサインチェックを行うとき、値が正常値とずれていないか、いつもの患者さんのデータと相違がないかなどを考えることはとても重要ですが、数値に表れていない部分も評価の一つであるということを忘れてはいけません。

バイタルサインの値は問題がないが「皮膚がなんだかじっとりしている」、「尿量が少なくて、むくみもでている」など、見て聞いて触って感じて得ることができる情報も、とても重要です。

数値が基準値に近いから大丈夫とは思わずに、「いつもと違う」という看護師の目線でのケアやアセスメント力も必要になります。

もし、観察をしていて上記のような不安や疑問が浮かんだ場合、リーダーや先輩に報告し一緒に診てもらうことで、患者さんの状態変化に早期に気付ける可能性もあります。
気になることがあるときは、迷わずに相談しましょう。

バイタルサインチェックを適切に行い、異常の早期発見をしよう

バイタルサインチェックは、患者さんの生命兆候を知るために重要な看護業務の一つです。
基準値・正常値を知っておくことは、患者さんの状態が正常なのか、基準値より逸脱しているのかに早期に気付くことができるため、とても重要ですが、一緒に観察する数値に表れない部分のアセスメントも大切です。

新人看護師はすべてが初めてで、慣れないことも多いですが、「いつもと違うな」と思った場合は、リーダーや先輩に報告・相談することが患者さんの異常早期発見につながります。意識して日々の看護にあたりましょう。

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執筆者について

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