
「訪問看護師って何をするの?」
「1日のスケジュールはどのような感じ?」
訪問看護師になることを検討するなかで、このような疑問を抱く人は多いでしょう。
訪問看護師は、病院やクリニックで勤務する看護師とは、仕事内容が大きく異なります。
本記事では、訪問看護師の仕事内容を解説したうえで、一般的な業務のスケジュールを紹介していきます。
訪問看護師に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
訪問看護師の仕事内容
訪問看護師は、医師から発行される「訪問看護指示書」の内容に従って業務を行います。
訪問看護指示書に書かれている内容は、患者さんの傷病名や、看護師への指示事項などです。
訪問看護師の主な仕事内容は以下のとおりです。
- 健康状態の観察
- 日常生活支援
- 医療処置
- ご家族への相談・支援
- リハビリ
- ターミナルケア
それぞれ見ていきましょう。
なお、訪問看護師の役割はこちらの記事で解説していますので、併せてご確認ください。

健康状態の観察
患者さんの健康状態の観察を行います。
具体的には、体温、血圧、脈拍、呼吸速度といったバイタルサインの確認です。
通常時と異なる値が出た場合や、体調の異常がある場合は、医師に報告して指示を仰ぎましょう。
なお、これらの観察事項は、訪問看護終了後に看護記録として残します。
日常生活支援
ご自宅で患者さんが快適に過ごせるよう、患者さんやご家族のニーズに合わせて日常生活支援も行います。
日常生活支援の内容としては、以下のようなものがあります。
清潔ケア
清潔ケアとは、入浴やシャワー浴の介助、清拭などのことです。
皮膚状態の確認や保湿も併せて実施します。
清潔ケアが行われるのは、医療用カテーテルや点滴を使用しているなどの理由から、入浴が難しいケースです。
皮膚を清潔に保つことは、感染症の予防にもつながります。
食事介助
食事介助では、自宅での食事摂取状況や嚥下機能の状態を観察し、患者さんに適した食事方法を指導したり、嚥下機能の低下予防のために口腔ケアを行ったりします。
患者さんの栄養状態によっては、栄養補助食品の提案などを行うこともあるでしょう。
排泄ケア
排泄ケアでは、患者さんの排泄状況、腹部膨満感の有無、腸蠕動音を確認し、適切な排泄を行えるようサポートします。
便秘は患者さんに苦痛を与え、下痢は皮膚状態悪化のリスク要因となるため、訪問看護師の看護ケアが重要です。
具体的なケア内容としては、浣腸や摘便などの医療処置、おむつ交換や食事内容の提案、下剤の調整相談などがあります。
医療処置
厚生労働省の調査によると、訪問介護で行う医療行為は、服薬管理・点眼等の実施が要支援度を問わず多く、要支援度が高くなるにつれて、浣腸・摘便、褥瘡予防の実施割合が多くなっていく傾向にあります。
引用:訪問看護(21ページ)
訪問看護は患者さんの自宅で医療処置を行うため、療養環境が整っている病棟とは異なり、限られた物品や環境のなかで工夫して医療処置を行わなければいけません。
例えば、病棟では点滴投与時に点滴棒を使いますが、自宅では点滴棒がない場合もあるでしょう。
そのようなときは、針金ハンガーやカーテンレールで代用したりします。
浣腸・摘便
ADL(日常生活動作)が低下している患者さんは、ご自身で腹圧をかけられず排便が困難な場合もあります。
食事の調整や内服薬のコントロールをしても、排便できず苦痛を感じている場合は、浣腸や摘便を実施します。
浣腸や摘便実施の際は、血圧低下に注意しながら、安全に留意して行いましょう。
褥瘡の処置・予防
要介護度が高くなればなるほど、寝たきりの時間が長くなり、褥瘡リスクが高くなります。
褥瘡発生前の段階から患者さんのADLや皮膚状態、体位を観察し、褥瘡の発生リスクを評価・分析することも訪問看護師の重要な役割です。
褥瘡リスクが高い場合には、マットレスの変更を提案したり、ご家族に体位変換や保湿の方法を指導したりします。
すでに褥瘡が発生してしまっている場合は、褥瘡を洗浄したのち、薬剤の塗布やドレッシング剤で保護を行いましょう。
人工呼吸器の管理
在宅療養で、人工呼吸器を導入している患者さんもいるでしょう。
訪問看護師は、人工呼吸器の点検やメンテナンスを行い、患者さんが安心して人工呼吸器を利用できる環境を整えます。
また、体位の調整、吸引の実施、呼吸法の指導により、患者さんが呼吸を楽にできるようなサポートも行いましょう。
ご家族への相談・支援
訪問看護師のケア対象には、患者さんだけでなく、そのご家族も含まれます。
患者さんのご家族は、24時間体制でケアを行っているため、患者さんの容態によっては、介護を負担に感じてしまったり、ケア方法に不安を感じてしまうことも多々あるでしょう。
ご家族の不安を傾聴し精神的にサポートしたり、日常生活やケア方法の相談・提案も訪問看護師の重要な業務内容です。
リハビリ
訪問看護でのリハビリは、主に理学療法士(PT)や作業療法士(OT)といったリハビリ専門職によって実施されますが、訪問看護師もリハビリに関与する機会があります。
日常生活支援を通して、患者さんご自身でできる部分を判断し、動き方を指導しながらサポートすることもリハビリの一環です。
PTやOTがリハビリのために訪問する際には、日常生活の様子やADLに関する情報提供を看護師から受けることで、より効果的なリハビリにつながるでしょう。
ターミナルケア
ターミナルケアとは、医師から余命宣告され、延命治療を行わないことを決めた患者さんに対して、人生の最後の時間を穏やかに過ごせるようサポートすることです。
患者さんの価値観に寄り添いながら、痛みや苦痛などの症状を和らげるとともに、精神的なケアも行っていきます。
また、ご家族に対してのケアも重要です。
丁寧な説明や声かけ、死後のエンゼルケアなどを通して、大切な人が亡くなってしまう事実を受け入れつつ、患者さんとの間に残された時間を大切にできるよう支援します。
訪問看護師の業務スケジュール
訪問看護師の業務スケジュールはある程度決まっています。
訪問件数や1日のスケジュールを見ていきましょう。
訪問件数
訪問看護師の1日の訪問件数は、4〜6件程度とイメージしましょう。
訪問先までの移動時間などによって訪問件数は変わってきますが、午前中に2〜3件、午後に午前中に2〜3件回るイメージです。
また、訪問看護の1回あたりの時間は、基本的に30〜90分以内と決められており、厚生労働省の調査によると、約60分の訪問時間が多い傾向です。
1日のスケジュール
訪問看護師の1日スケジュール例を紹介します。
職場によって異なるため、あくまで参考としてとらえてください。
時間 | 実施事項 |
9:00 | 【出勤】 ・朝のミーティング ・電話やメールの確認 ・申し送り ・訪問予定の患者さんの情報収集 ・訪問の準備 |
10:00~12:00 | 【患者さんの自宅へ訪問(2〜3件)】 |
12:00~13:00 | お昼休憩 |
13:00~16:00 | 【患者さんの自宅へ訪問(2〜3件)】 |
16:00~17:00 | 【訪問看護ステーションへ戻る】 ・実践した看護内容の記録 ・他看護師への申し送り、情報共有 ・カンファレンス ※訪問先によっては、ステーションに戻らずに直帰するケースもあります。 |
17:30 | 【退勤】 |
訪問先での流れ
患者さんのご自宅に訪問したら、以下のような流れで訪問看護を実施します。
- 手洗い・物品の準備:
ご自宅に訪問したら、手洗いなどの感染予防対策を行い、ケアに使用する物品を準備します。
タオルやオムツなどご自宅にある物品を使用する際には、ご家族に用意をお願いすることもあるでしょう。 - 健康状態の観察:
バイタルサイン測定や体調を伺い、健康状態を観察します。 - 医療処置・日常生活ケア:
患者さんに必要な看護ケアを実施していきます。
ケア中に患者さんやご家族ともコミュニケーションを取りつつ、必要に応じて相談・指導も行います。 - 連絡ノートの記入:
ヘルパーなど他職種に共有したい情報があれば、連絡ノートに記入します。 - 片付け
精神科訪問看護師の仕事内容・特徴
精神科の訪問看護師は、医療処置は少ない傾向にあるものの、患者さんとのコミュニケーションがより重要になります。
日常生活ケアを一方向的に実施するのではなく、セルフケア能力の獲得をめざして実施方法を相談するなど、患者さんと方向性や目標を共有しながら関わっていくことが重要です。
また、社会復帰をめざしている患者さんの場合は、就労移行支援事業所を紹介したり、活動状況を把握し、他職種と連携を図りながら患者さんをサポートすることもあるでしょう。
訪問看護師の仕事内容を知り働く姿をイメージしよう
訪問看護師は、患者さんの自宅を訪ねて、日常生活支援や医療行為などを行います。
設備の整った病棟とは異なり、患者さんの状態や住環境によって、看護の仕方を工夫しなければいけない場面もあるでしょう。
また、一人ひとりの患者さんと向き合う時間を作ることができる点も、訪問看護師の特徴です。
より患者さんと深く関わっていきたいと考えている人にとって、訪問看護師は向いているといえるでしょう。