
薬剤師として、専門性を高めてキャリアアップをめざしている人も多いでしょう。
認定薬剤師制度は、特定分野の知識や技能を深めるための絶好の機会となります。
患者さんにより質の高い医療を提供するため、そして自身のスキルアップのためにも、認定薬剤師の取得を検討してみるのもおすすめです。
本記事では、主な認定薬剤師の種類や特徴、取得要件などを詳しく解説します。
自分に合った認定薬剤師資格を見つけ、キャリアの新たな一歩を踏み出しましょう。
目次
認定薬剤師の種類一覧
認定薬剤師にはさまざまな種類があり、それぞれ専門分野に特化した知識や技能が求められます。
申請時に病院や診療所に勤務先が限定されている認定資格もありますが、多くの認定薬剤師は病院・診療所と薬局の双方の現場で活躍することが可能です。
ここでは、主な認定薬剤師を分野別に一覧でご紹介します。
自分の興味がある分野や、キャリアプランに合った認定薬剤師を探してみてください。
分野 | 認定薬剤師名 | 認定機関 |
悪性腫瘍分野 | がん薬物療法認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
外来がん治療認定薬剤師 | 日本臨床腫瘍薬学会 | |
緩和薬物療法認定薬剤師 | 日本緩和医療薬学会 | |
核医学分野 | 核医学認定薬剤師 | 日本核医学会 |
感染症分野 | 感染制御認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
HIV感染症薬物療法認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 | |
抗菌化学療法認定薬剤師 | 日本化学療法学会 | |
外来抗感染症認定薬剤師 | 日本化学療法学会 | |
腎疾患分野 | 腎臓病薬物療法認定薬剤師 | 日本腎臓病薬物療法学会 |
内分泌分野 | 糖尿病薬物療法認定薬剤師 | 日本くすりと糖尿病学会 |
高齢者分野 | 老年薬学認定薬剤師 | 日本老年薬学会 |
認知症研修認定薬剤師 | 日本薬局学会 | |
精神科分野 | 精神科薬物療法認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
産科婦人科分野 | 妊婦・授乳婦薬物療法認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
小児科分野 | 小児薬物療法認定薬剤師 | 日本薬剤師研修センター |
救急・中毒医療分野 | 救急認定薬剤師 | 日本臨床救急医学会 |
災害医療認定薬剤師 | 日本災害医学会 | |
プライマリ・ケア・在宅医療分野 | プライマリ・ケア認定薬剤師 | 日本プライマリ・ケア連合学会 |
在宅療養支援認定薬剤師 | 日本在宅薬学会 | |
臨床薬理学分野 | 日本臨床薬理学会認定薬剤師 | 日本臨床薬理学会 |
実務実習分野 | 日病薬認定指導薬剤師 | 日本病院薬剤師会 |
認定実務実習指導薬剤師 | 薬学教育協議会 | |
総合分野 | 研修認定薬剤師 | 日本薬剤師研修センター |
日病薬病院薬学認定薬剤師 | 日本病院薬剤師会 | |
その他の分野 | 漢方薬・生薬認定薬剤師 | 日本薬剤師研修センター |
公認スポーツファーマシスト | 日本アンチ・ドーピング機構 | |
医薬品情報認定薬剤師 | 日本医薬品情報学会 | |
DLM認定薬剤師 | 医薬品ライフタイムマネジメントセンター | |
健康食品領域研修認定薬剤師 | 神戸薬科大学エクステンションセンター |
主な認定薬剤師の資格の種類
認定薬剤師の資格は多岐にわたりますが、ここでは主な資格について詳しく解説します。
それぞれの資格の特徴や取得要件、難易度などを理解することで、自分に適した資格選びの参考にしてください。
キャリアプランや興味のある分野に合わせて、効果的な資格取得をめざしましょう。
研修認定薬剤師
研修認定薬剤師は、日本薬剤師研修センターが認定する資格です。
この資格は、薬剤師としての基本的な知識や技能を幅広く学び、自己研鑽を続けていることを証明するものです。
特徴として、特定の専門分野に限定せず、幅広い知識を習得できる点が挙げられます。
取得要件は比較的平易で、規定の研修に参加し、単位を取得するだけです。
新規取得の場合、4年間で40単位以上の取得が必要となります。
研修の内容は多岐にわたるため、自分の興味がある分野を中心に学びながら、幅広い知識を身につけることができます。
専門性の高い他の認定薬剤師資格を取得する際の基礎となることも多く、キャリアアップの第一歩として取得を検討する薬剤師も多い資格です。
がん薬物療法認定薬剤師
がん薬物療法認定薬剤師は、がん領域の薬物療法に関する高度な知識や技能、実践能力を身につけた薬剤師であることを証明する資格です。
がん治療の複雑化や個別化が進むなか、この資格を持つ薬剤師の需要は高まっています。
取得要件は厳しく、難易度の高い資格の一つです。
申請時に病院または診療所に勤務し、がん薬物療法に3年以上、かつ申請時に引き続いて1年以上継続して従事している必要があります。また日本病院薬剤師会の病院薬学認定薬剤師または日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であることも前提です。
さらに、実技研修や実務経験、症例報告の提出、認定試験の合格が求められます。
がん患者さんの薬物療法に深く関わりたい、より専門的な知識を身につけたいと考える薬剤師にとって、挑戦する価値のある資格といえるでしょう。
緩和薬物療法認定薬剤師
緩和薬物療法認定薬剤師は、緩和医療の精神を理解し、緩和薬物療法に関する専門的な知識を修得した薬剤師であることを証明する資格です。
この資格を持つ薬剤師は、他の医療従事者と連携しながら患者さんの苦痛を軽減し、QOLの向上に貢献します。
取得要件は厳しく、難易度の高い資格です。
まず、日病薬病院薬学認定薬剤師、日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師、日本医療薬学会医療薬学専門薬剤師、薬剤師認定制度認証機構により認証された生涯研修認定制度による認定薬剤師のいずれかの資格を一つ以上持っていることが前提となります。
さらに、一定期間の実務経験や、認定対象となる講習の受講、緩和医療領域に関する学会発表、症例提示、認定試験合格などが求められます。
緩和医療に携わる薬剤師として、より専門的なアプローチを学びたい方におすすめの資格です。
患者さんとそのご家族に寄り添い、より良い緩和ケアを提供したいと考える薬剤師にとって、大きな力となるでしょう。
感染制御認定薬剤師
感染制御認定薬剤師は、感染制御に関する高度な知識や技術、実践能力を身につけた薬剤師であることを証明する資格です。
近年、薬剤耐性菌の問題や新興感染症の流行などにより、感染制御の重要性が高まっており、この資格を持つ薬剤師の需要も増加しています。
取得要件はやや難しいレベルにあります。
申請時に病院または診療所に勤務し、施設内で感染制御活動の一員として3年以上、かつ、申請時に1年以上継続して従事していることが必要です。また日本病院薬剤師会の病院薬学認定薬剤師または日本医療薬学会の専門薬剤師制度により認定された専門薬剤師であることも前提です。
加えて、一定期間の実務経験や症例報告の提出、所定の講習会などを所定単位数受講する必要があります。
感染制御チームの一員として活躍したい、抗菌薬の適正使用に貢献したいと考える薬剤師にとって、価値ある資格といえるでしょう。
病院や地域の感染対策において、重要な役割を果たすことができます。
漢方薬・生薬認定薬剤師
漢方薬・生薬認定薬剤師は、漢方薬や生薬に関する専門的知識を修得し、この分野で高いレベルの能力と適性を持っていることを証明された薬剤師のことです。
近年、西洋医学と東洋医学を組み合わせた統合医療への関心が高まっており、この資格の重要性も増しています。
取得要件はあまり難しくありません。
主に研修の受講と植物園での実習、そして試問(認定試験)の合格が求められます。
漢方や生薬に興味がある薬剤師であれば、比較的チャレンジしやすい資格といえるでしょう。
この資格を取得することで、漢方薬や生薬に関する専門的なアドバイスを患者さんに提供できるようになります。
また、医師との連携を深め、より効果的な漢方治療をサポートすることが可能になります。
プライマリ・ケア認定薬剤師
プライマリ・ケア認定薬剤師は、地域で継続的で包括的、全人的なプライマリ・ケアに関する知識や技能、態度を修得することをめざす薬剤師のための資格です。
超高齢社会を迎え、地域包括ケアシステムの構築が進むなか、この資格の重要性は増しています。
取得要件はあまり難しくありません。
研修会や講座などに出席して単位を取得したうえで、試験に合格する必要があります。
地域医療に興味がある薬剤師であれば、比較的取り組みやすい資格といえるでしょう。
この資格を取得することで、地域のかかりつけ薬剤師として、より高度な役割を果たすことが可能です。
患者さんの生活背景を理解し、多職種と連携しながら、包括的な医療・介護サービスの提供に貢献できるようになるでしょう。
認定薬剤師の種類を知り自分に合う資格の取得でスキルアップしよう
認定薬剤師の資格は、薬剤師としてのキャリアアップと専門性の向上に大きな役割を果たします。
本記事で紹介したさまざまな認定薬剤師の種類や特徴を参考に、自分の興味や目標に合った資格を見つけてください。
資格取得は単なるスキルアップだけでなく、患者さんにより良い医療を提供するための重要なステップとなります。
また、チーム医療のなかで薬剤師の存在感を高め、より専門的な立場で医療に貢献することができるでしょう。
ただし、資格取得には時間と努力が必要です。
自分のペースで着実に学び、実践的な経験を積みながら、目標とする認定薬剤師をめざしましょう。
薬剤師としての可能性を広げ、より充実したキャリアを築くためにも、認定薬剤師の取得を積極的に検討してみてはいかがでしょうか。