
精神科訪問看護師と聞いて、パッと仕事内容や役割がわかる人は少ないかもしれません。
昨今の日本では、精神疾患の患者数が年々増加しており、入院よりも通院での生活をしている患者さんが多いのが実状です。
そのようななか、精神科訪問看護師がいるおかげで、入院することなく社会生活を継続できている患者さんも少なくありません。
ここでは精神科訪問看護師とはどのような仕事なのか、働くことのメリットは何なのかについて解説します。
目次
精神科訪問看護師とは
精神科訪問看護師とは、精神疾患を抱えた在宅の患者さんのケアや援助を行う看護師のことをいいます。
近年の日本では、精神疾患の患者さんは入院患者よりも通院患者のほうが多く、在宅でどのように症状を管理して生活していくことができるのか、とても重要になっています。
精神疾患を抱えた在宅の患者さんを支援する看護師
訪問看護師は、病院ではなく住み慣れている自宅で過ごす患者さんに対し、その人らしく過ごすことができるよう、訪問し看護を提供する役割があります。
精神科訪問看護師は、精神疾患を抱えながらすべてを一人でこなして生活することが難しい患者さんや、精神状態の変化が著しく生活に困難を抱える患者さんに対し、援助を行う看護師のことです。
精神疾患は疾患の種類だけではなく、個々の性格や特性も合わさり、さまざまな症状を見出すことがあるため、看護力が試される場面でもあります。
以下には、訪問看護師について具体的に示してある記事を掲載しているため、興味のある方はぜひ参照してください。

近年の日本では需要が年々増加している
近年の日本では、精神疾患を抱える患者さんが年々増加しています。
厚生労働省のホームページによると、平成29年時点で精神疾患を有する総患者数は約419万人です。
入院患者数は平成14年から平成29年までの過去15年間で減少傾向(約34万人から約30万人へ)ですが、外来患者数は(約223万人から約389万人へ)増加傾向にあります。
外来患者のなかでは、認知症(アルツハイマー型認知症)が15年前と比べ約7.3倍、気分障害は約1.8倍、神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害が約1.7倍と増加割合が顕著です。
このような状況を見ると、精神疾患医療は病院から在宅へと移行しており、それに合わせて精神科訪問看護師の必要性も上昇傾向にあることがわかります。
精神科訪問看護師の役割
精神科訪問看護師は、患者さん自身が自立して生活を送ることができるようサポートします。
また、社会復帰のための支援をするだけではなく、精神症状の悪化を防ぐ手助けも行います。
もちろん、患者さんのご家族に対しても援助を行うなど、包括的なケアが必要です。
患者さん自身が自立できるようサポートする
精神科訪問看護師は、患者さん自身が自立できるようサポートする役割を担っています。
その自立には金銭的な自立もあれば精神的な自立もあり、目標設定は個々の患者さんやそのご家族とともに決定します。
例えば、通院できなかった患者さんには通院手段を一緒に考えたり、カレンダーを用いて次回受診日を確認し通院を促したりなどの支援も精神科訪問看護師の役割です。
社会復帰のための支援を行う
精神的な疾患を抱えている患者さんは、社会復帰が難しいことが多々あります。
社会復帰には就労だけでなく、近所にコミュニティを持つことや、仲間・友人作りをすることも含まれます。
「会社に就職すること」が目標ではなく、「近所の人と挨拶をする」なども目標になるわけです。
社会復帰できるよう、ソーシャルワーカー(社会福祉士)やケアマネジャーと相談しながら、本人やそのご家族にとって何が必要なサービスなのか、どのようなサービスを入れることが社会復帰につながるのかなどを相談していく役割も担っています。
症状の悪化を防ぐ手助けをする
精神疾患は飲まなくてはいけない薬があっても、そのときの環境やストレス、気持ちの変化で症状が著しく変化し、薬の服用が困難になる場合があります。
薬を飲まないままでは症状はさらに悪化し、重篤な危険に陥ってしまうこともあるでしょう。
精神科訪問看護師は、自己判断で服薬を止めないよう飲むタイミングや副作用を考慮しながら、サポートを行う役割も担っています。
ほかにも、症状が悪化してくる前兆としてイライラしてしまうという患者さんの場合、イライラしたときの状態を5段階に分け、4のときは気分転換に外に出る、5のときは精神科訪問看護師に連絡する、など事前に決めておき、症状出現時に対応できるようにすると良いでしょう。
本人だけではなくご家族もサポートする
精神疾患を抱えている患者さんのなかには、ご家族と同居している方もいれば、一人暮らしをしている方もいます。
同居の有無に関わらず、ご家族はどの程度サポートしてくれているのかなど、本人だけではなく、ご家族のサポート体制も重要です。
ご家族の勤務状況や生活スタイル、サポート力も含めて、どのような制度やサービスが必要かを検討し提供することも精神科看護師の役割です。
また、同居しているご家族は日々の生活に疲れを感じている場合もあるため、頼る先があることで安心感を得られるでしょう。
精神科訪問看護師として働くメリット
精神科訪問看護師として働くことで、コミュニケーションスキルが培われ、精神科に特化した専門性を磨くことができます。
また、病棟勤務とは違い夜勤などはないため、規則正しい生活を送ることができます。
コミュニケーション能力が成長する
精神科訪問看護師は、さまざまな心の病気を抱えた人と関わるため、傾聴のスキルや声かけの方法が鍛えられ、コミュニケーション能力の向上につながります。
看護業務のなかでバイタルサイン測定などはもちろん行いますが、時間に追われてしまうことが少なく、一人ひとりと向き合いながら看護ができるため、コミュニケーション能力が培われていくでしょう。
精神科の患者さんと一緒に外へ散歩をしたり、お茶休憩をしながら心の声に耳を傾けるなど、病棟勤務のなかでは関わることが少ない方法で看護をすることができます。
専門性を磨くことができる
上記でも示したとおり、在宅へと移行しつつある精神疾患の患者さんへの看護は、精神科分野において高い専門性を磨くことができます。
精神疾患は心と関わる疾患のため、外科や内科病棟などとは違った難しさがあります。
精神疾患特有の内服薬やケアなどの知識や技術は、訪問のたびに触れる部分であるため、自ずと身についていくでしょう。
もちろん、しっかりと勉強しながら関わることで、より多くの知識や技術を習得することができます。
ほかにも、患者さんたちと相談し合うなかで、社会福祉制度に詳しくなったり、どのような社会資源があるのかなどに関しても知識が身につくため、看護師の枠を超えさまざまな知識を学ぶことができるでしょう。
規則正しい生活を送ることができる
精神科訪問看護師は、患者さんが起きている時間に働くため、平日の勤務であることが多いです。
ただし、緊急時のオンコールなどの対応が必要な施設もあるため、希望する就職先があれば、事前に確認しておくことが必要でしょう。
夜勤がないことで規則正しい生活を送れるため、病院勤務のときとは違った方法でプライベートを充実させることができます。
患者さんファーストでも、自分自身の健康もとても重要なため、一度自分自身の勤務体制を振り返るのも大切です。
精神科訪問看護師の仕事や役割を正しく知ってめざしてみよう
精神科訪問看護師は、精神疾患の患者さんが増えてきているため、非常に重要な存在です。
精神科訪問看護師は、患者さん自身の自立を促したり、社会復帰のための支援や症状の悪化を防ぐためにサポートします。
また、患者さん本人だけではなくご家族に対しても相談対応を行うため、包括的な看護を行うことができます。
こちらの記事を参考に、精神科訪問看護師の仕事や役割を正しく理解しましょう。