看護師として勤務している方のなかには、救急医療分野での認定看護師をめざしている方もいるのではないでしょうか。
救急分野で認定看護師を取得するには、看護師として5年以上の実践経験と600時間以上の看護認定教育が必要です。
この記事では、救急領域の認定看護師になる方法や、必要な期間・費用を解説しています。
救急で勤務している看護師や認定看護師をめざしている看護師の方に向けて、詳しく解説するので、参考にしてみてください。
目次
救急領域の認定看護師の役割
救急領域での認定看護師の役割は、患者さんやご家族により良い看護を提供するために、救急医療において「実践・指導・相談」を果たすことです。
実践では、救急領域で専門的な治療や看護を必要としている患者さんやご家族に対して、知識や経験から判断して最適な看護を自ら提供します。
指導と相談では、他の看護師へ質の高い看護を提供できるように指導したり、現場で直面する問題や悩みの相談にのったり、解決策を導き出せるように支援したりします。
救急を受診する患者さんは、命の危機に面していたり、病状が刻一刻と変化したりするため、実践・指導・相談のすべての過程において瞬時に判断しなければなりません。
救急領域の認定看護師になるには?
救急領域の認定看護師になるためには、定められた条件をクリアし、救急領域に必要な研修を受けなければなりません。
条件と必要な研修を解説します。
認定看護師になるための条件
認定看護師になるための条件は、以下のとおりです。
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審査合格後は、認定看護師として実践と自己研鑽を重ねることが求められ、5年ごとの更新が必要です。
救急領域の認定看護師に必要な研修
認定看護師になるために必要な研修は、2種類から選択しますが、2023年12月現在は、制度の移行期となります。
名称 | 期間 | 分野名 |
A課程認定看護教育機関 | 2026年度に教育終了 | 救急看護
集中ケア |
B課程認定看護教育機関 | 2020年度から教育開始 | クリティカルケア |
今まで救急領域の認定看護分野には、「救急看護認定看護」「集中ケア認定看護」の2分野がありましたが、統合されて「クリティカルケア認定看護」1分野となります。
救急看護・集中ケア:A課程認定看護師
従来の制度による認定看護師資格が、救急看護認定看護師と集中ケア認定看護師です。
いずれもA課程として認定を受けた教育機関を修了することで、認定資格を得られます。
A課程認定看護教育機関での教育は2026年度に終了し、教育修了者に対する認定審査も2029年度には終了となります。
救急看護認定看護師・集中ケア認定看護師から、新しい教育制度により規定されるクリティカルケア認定看護師への移行は可能です。
ただし、A課程認定看護教育機関における研修には、厚生労働省が定める38の特定行為研修が含まれていないため、特定行為研修を受講してから移行手続きをする必要があります。
A課程の認定看護師教育機関一覧(2023年3月現在)は以下の日本看護協会のリンクをご確認ください。
救急看護分野 | 集中ケア分野 |
クリティカルケア:B課程認定看護師
従来の救急看護分野と集中ケア分野を統合したのが、クリティカルケア分野です。
この分野で認定看護師資格を取得するためには、B課程として認定を受けた教育機関を修了する必要があります。
B課程認定看護師教育機関では、2020年度から教育がスタートし、修了者への認定審査は2021年度から行われています。
B課程認定看護師教育機関には、特定行為研修が含まれており、これから救急領域での認定看護師をめざす方ではB課程の選択が一般的になるでしょう。
B課程の認定看護師教育機関一覧(2023年3月現在)は以下の日本看護協会のリンクをご確認ください。
クリティカルケア |
救急領域の認定看護師になるための時間・費用
救急領域の認定看護師になるために、時間や費用はどの程度必要なのでしょうか。
A課程・B課程の時間と費用を紹介します。
必要な時間
必要な時間は、認定看護師教育基準カリキュラムによると以下のとおりです。
課程 | 分野 | 総時間 |
A課程認定看護師教育機関 | 救急看護分野 | 630 |
集中ケア分野 | 615 | |
B課程認定看護師教育機関 | クリティカルケア分野 | 824 |
それぞれの課程の科目は以下のとおりです。
A課程認定看護師教育機関 | B課程認定看護師教育機関 |
共通科目
専門基礎科目 専門科目 学内演習・臨地実習 |
共通科目
専門科目(認定看護分野専門科目・特定行為研修区分別科目) 演習・実習 |
必要な費用
認定看護師の資格を取得するためには、分野や教育機関によっても異なりますが、100〜140万円の費用が必要となります。
内訳は以下のとおりです。
内訳 | 金額 |
入学検定費用 | 約5万円 |
入学金 | 約5万円 |
授業料 | 約70万〜110万円 |
実習費用 | 約10万円〜 |
審査費用 | 51,700円(税込) |
認定費用 | 51,700円(税込) |
あくまでも目安であり、費用はある程度余裕をもって準備しておく必要があります。
救急領域の認定看護師に役立つ資格
救急領域の認定看護師に役立つ資格を3つ紹介します。
- BLS
- ICLS
- JPTEC
BLS
BLS(Basic Life Support)とは、心肺停止状態の患者さんに救急隊員が到着するまでに行う一次救命処置です。
心配蘇生(CPR:Cardio Pulmonary Resuscitation)や、自動体外式除細動器(AED:Automated External Defibrillator)を用いる処置が該当します。
傷病者へ一次救命処置を行うことによって、生存率や社会復帰率が処置しない場合と比べて高まることが報告されているため、患者さんの予後を左右する大事な処置です。
ICLS
ICLS(Immediate Cardiac Life Support)は、突然の心停止に対しての蘇生です。
心停止はどの医療機関でも起こり得るもので、発生すると蘇生を開始するまでに猶予はありません。
心停止直後は、あらゆる医療従事者がチームメンバーとして参加し、速やかに蘇生を行うことが求められます。
ICLSは、救急領域の認定看護師に役立つ資格の一つです。
JPTEC
JPTEC(Japan Prehospital Trauma Evaluation and Care)とは、病院前救護に関わるすべての人が習得するべき知識と体得するべき技能が盛り込まれている教育コースです。
病院前救護とは、病院外での救急活動であり、救急現場や病院へ搬送中に行うことを指します。
また、JNTEC(Japan Nursing for Trauma Evaluation and Care)と呼ばれる、救急医療機関へ搬送された外傷患者さんに対する教育コースもあり、外傷初期看護に自信を持つためにも役立つでしょう。
救急医療分野の認定看護師になる方法を理解して、キャリアアップをめざそう
認定看護師になるためには、看護師として5年以上の実践経験と600時間以上の看護認定教育を修了しなければなりません。
それほど多くの経験と教育を受けることで、認定看護師の役割である専門分野において「実践・指導・相談」を果たすことができるようになります。
救急領域の患者さんやご家族へ最適な看護を提供するために、認定看護師になる方法を理解して、キャリアアップをめざしましょう。