日本看護協会は、医療体制や将来的な社会のニーズに応えるため、認定看護師の制度を2019年に改正しました。
現時点(2023年時点)において、認定看護師の養成課程には、以下の2つが存在しています。
- A課程(旧課程)
- B課程(新課程)
これから認定看護師の資格取得を検討している方は、これらの課程の違いを知り、どちらの課程で資格を取得するか決めておきましょう。
今回の記事では認定看護師のA課程とB課程の違い、課程の移行方法について紹介していきます。
認定看護師について知りたい方は、こちらの記事を見ておきましょう。
目次
認定看護師:A課程・B課程の違い
認定看護分野のA課程とB課程の違いは以下の3つです。
- 認定看護分野
- カリキュラム内容・時間数
- 受講可能な教育機関
認定看護師とは、それぞれの認定看護分野において、「実践・指導・相談」の3つの役割を果たし、看護の質の向上を担うと認められた看護師です。
今回の改定によって、認定看護師の役割や対象範囲が広がり、それにともない認定看護師に必要な教育カリキュラムも増加しました。
認定看護分野
B課程では、A課程の認定看護分野が再編されています。
分野によっては、他の分野と統合されていたり、名称が変更となったりしているので、それぞれどちらの課程での分野なのか把握しておきましょう。
■認定看護分野(A課程・B課程)
A課程(旧課程):21分野 | B課程(新課程):19分野 |
救急看護 | クリティカルケア |
集中ケア | |
緩和ケア | 緩和ケア |
がん性疼痛看護 | |
がん化学療法看護 | がん薬物療法看護 |
訪問看護 | 在宅ケア |
不妊症看護 | 生殖看護 |
透析看護 | 腎不全看護 |
摂食・嚥下障害看護 | 摂食嚥下障害看護 |
小児救急看護 | 小児プライマリケア |
脳卒中リハビリテーション看護 | 脳卒中看護 |
慢性呼吸器疾患看護 | 呼吸器疾患看護 |
慢性心不全看護 | 心不全看護 |
皮膚・排泄ケア | 皮膚・排泄ケア |
感染管理 | 感染管理 |
糖尿病看護 | 糖尿病看護 |
新生児集中ケア | 新生児集中ケア |
手術看護 | 手術看護 |
乳がん看護 | 乳がん看護 |
認知症看護 | 認知症看護 |
がん放射線療法看護 | がん放射線療法看護 |
認定看護師の制度改正については、こちらの記事でも紹介しています。
カリキュラム内容・時間数
B課程には従来のA課程にはなかった特定行為研修が追加されており、その結果、カリキュラムの時間数も増えています。
A課程は600時間以上の教育カリキュラムが必要とされていましたが、B課程では800時間程度の教育カリキュラムが必要です。
特定行為とは、必要な研修を受講し専門的な知識や判断力を持った看護師が、手順書をもとに行う診療の補助のことです。
2023年時点で、気管カニューレの交換や胸腔ドレーンの抜去など、38の特定行為が規定されています。
この点は今までの認定看護師とは大きく異なった部分であり、新しい知識として理解しておくことが重要です。
特定行為を習得しておけば、医師の事前の指示により看護師の判断のもとでケアを行うことができるため、よりタイムリーな医療を提供できるようになるでしょう。
受講可能な教育機関
教育機関によって対応カリキュラムが異なります。
同じ認定分野でも、すでにB課程のみの対応でA課程には対応していない教育機関もあるため、ご自身が受講を予定するカリキュラムの対応可否を事前に確認しておきましょう。
なお、2023年4月時点での課程別のカリキュラム開講数は、A課程での16に対し、B課程では52です。
新課程であるB課程のカリキュラムのほうが、すでに主流になりつつあることがわかるでしょう。
A課程の教育実施期間は2026年までであり、今後もA課程でのカリキュラムの開講数は減少していくことが考えられます。
認定看護師:A課程からB課程への移行方法
A課程からB課程の移行は、以下のスケジュールで実施されています。
2023年時点では、A課程・B課程のどちらの課程でも認定看護師の資格を取得できます。
A課程で認定看護師の資格を取得した場合は、特定行為研修を受講し、移行手続きを行うことで、B課程の認定看護師に移行することも可能です。
なお、A課程における認定看護師の更新審査は継続される予定であり、A課程の認定看護師資格のままでいても、特に問題ありません。
以下で具体的な課程の移行方法を見ていきましょう。
なお、認定看護師の更新方法については、こちらの記事で解説しています。
特定行為研修を受講する
A課程からB課程に移行したい場合は、まず特定行為研修を受講しましょう。
受講する特定行為研修の区分や、研修の受講機関に指定はありません。
まずは、ご自身が興味のある特定行為研修や、その受講が可能な教育機関を選びます。
教育機関によって一般公募や選考試験の有無が異なりますので、事前に確認しておきましょう。
なお、救急看護や集中ケアなど、今回の改定により統合された分野であっても、新たな認定看護分野内容に合わせた追加の研修受講は不要です。
移行手続きを行う
特定行為研修を終了したら、移行手続きを行いましょう。
移行手続きは、『資格認定制度 審査・申請システム』にて実施できます。
移行手続きの流れは以下のとおりです。
- 特定行為研修指定研修機関の修了証を画像化する
- 『資格認定制度 審査・申請システム』にて移行申請を行う
- 手続き料を振り込む
- 手続き完了の確認、情報公開の設定を行う
- 認定証を受領する
移行手続きの詳細は、日本看護協会が発行している『移行手続きの手引き』に記載されています。
定められた申請期間以外は移行手続きを実施できないため、日程を先に把握しておきましょう。
A課程・B課程の違いを知って認定看護師として活躍しよう
2023年時点では、認定看護師のA課程(旧課程)からB課程(新課程)への移行時期であり、2種類の養成課程が混在しています。
これから認定看護師の資格取得を検討している方は、それぞれの課程の違いを知って、受講課程を選びましょう。