
看護師の仕事は、患者さんの治療や療養生活を支援することです。
そのためには、専門的な知識や技術を身につける必要があります。
新人看護師の教育には、さまざまな制度が存在しますが、そのなかでも特に注目されているのがプリセプターシップです。
プリセプターシップとは、先輩看護師が新人看護師に対して、マンツーマンで指導を行う制度のことを指します。
新人看護師の成長を支援し、早期の看護知識・技術定着促進や、早期離職を防止することなどが目的です。
本記事では、プリセプターシップについて詳しく解説します。
目次
プリセプターシップとは
プリセプターシップ(Preceptorship)とは、新人看護師の教育システムの一つです。
経験豊富な先輩看護師が、新人看護師に対して、マンツーマンで指導を行います。
一般的には医療分野で使われる用語ですが、他の分野でも同様の概念です。
プリセプターシップの指導プロセスには、他にもいくつかの特徴があります。
以下で詳しく見ていきましょう。
先輩とマンツーマンで行う教育システム
プリセプターシップとは、新人看護師に、看護師としての動き方やアセスメントの仕方などを教えるシステムのことです。
一定の期間、新人看護師一人に対して、一人の先輩看護師がつき、マンツーマンで行われます。
新人看護師は、学生時代に考えていた自分の理想と、現実との違いにリアリティショックを体験しやすく、それが離職につながる危険性もあります。
そのため、先輩看護師がしっかりと向き合い、業務の相談やメンタル面の支援などを行うことが大切です。
プリセプターシップを導入することで、新人看護師に寄り添いながら、きめの細かい教育を行うことができるでしょう。
メンターやアソシエートがつく場合もある
プリセプターシップは、上記のように先輩看護師と新人看護師がペアで行う方法だけとは限りません。
他にも、メンターやアソシエートと呼ばれる先輩看護師がつく場合もあります。
メンターやアソシエートが、それぞれどのような役割を担っているのかを以下で確認しましょう。
シニアやアソシエートがつく
シニアプリセプターやアソシエートは、新人教育の全体的な監督として、複数の新人看護師とプリセプターの指揮をとる役割を担います。
シニアプリセプターやアソシエートは、プリセプター(先輩看護師)に補佐役としてつく場合もあります。
また、日々の業務はプリセプターが指導し、具体的なアセスメントはシニアプリセプターやアソシエートが担当することも可能です。
このように、施設や病院によって役割分担の方法は異なります。
メンターがつく
メンターとは「指導者」「助言者」という意味があり、経験が豊富な先輩看護師がその役割を担います。
メンターは、技術取得に向けた指導はせず、プリセプティの相談役としてサポートをします。
アドバイスをしながら、中長期的なキャリア形成を支援し、人間的に成長できるよう援助する重要な役割です。
新人看護師は、新しい環境でストレスを多く感じる場合があるため、その不安やストレスを傾聴し、緩和してあげましょう。
ほかにも「エルダーナース」を導入している施設もあるため、必要な方は下記の記事を参照してください。

プリセプターシップ制度で使う用語の意味
プリセプターシップ制度では、専門的な用語がよく使われます。
新人看護師のことを「プリセプティ」、教育をする看護師のことを「プリセプター」と呼びます。
それぞれの意味や、特徴について詳しく見ていきましょう。
プリセプティ(新人看護師)
プリセプティとは、教育を受ける立場の新人看護師のことです。
新人看護師は、主に以下のような人のことを指します。
- 大学や専門学校を卒業したばかりの看護師
- ほかの病院や施設で働いたあと、自施設に新人として入職する看護師
上記にあたる新人看護師は、プリセプティとして教育を受けます。
マンツーマンで指導を受けられるため、ブランクのある看護師や看護技術に不安のある看護師も、安心して教育を受けやすいのが特徴です。
プリセプター(教育をする看護師)
プリセプティに対して、プリセプターは教育を行う看護師のことです。
プリセプターは、以下のような条件を満たす人が担当しやすいとされています。
- 新人の気持ちを理解しやすい
- 一通りの業務経験を積み独り立ちをしている
- 卒後3年目以上の看護師
上記に加え、師長や主任が、コミュニケーション能力や人間性などを考慮し、プリセプターを選任する場合もあります。
プリセプターシップ制度の目的
プリセプターシップの制度の目的として、主に下記3点が挙げられます。
- 早期の看護知識・技術定着促進
- 早期離職の防止
- 新人看護師のフォロー体制を明確化
それぞれの目的について、詳しく見ていきましょう。
早期の看護技術・知識定着促進
新人看護師は、多岐にわたる看護技術や患者さんを適切にアセスメントするための知識など、多くのことを学ぶ必要があります。
プリセプティにとって、プリセプターとマンツーマンで学びを進められる環境は、自分に適切なレベルで、密な指導を受けられやすいです。
そのため、早期に看護技術や知識を学ぶことができます。
早期離職の防止
新人看護師は、学生の頃にイメージしていた理想の自分と、実際に働き始めた自分の姿にギャップを感じやすいです。
その結果、「看護師に向いていない」などと思ってしまい、新人看護師のうちに退職をしてしまう可能性があります。
しかし、プリセプターシップで新人看護師の思いに寄り添い、精神面のフォローを行うことで、早期離職の防止につながるのです。
新人看護師のフォロー体制を明確化
新人看護師の指導には、以下のようなフォロー体制があります。
- チューターシップ制(プリセプティそれぞれに相談相手を決めて、精神面のフォローを行う)
- チーム支援型(チームで新人看護師をフォローする)
このように、それぞれの役割が明確化され、フォロー体制がわかりやすいという点は、プリセプター制度の特徴のひとつです。
プリセプターシップの指導内容
プリセプターがプリセプティに対して指導する内容は、多岐にわたります。
例えば、以下のような内容が挙げられます。
- 日々の業務内容の指導
- 看護技術の習得支援・評価
- 看護知識の学習サポート
- メンタル面のフォロー
それぞれの指導内容を、以下で詳しく見ていきましょう。
日々の業務内容の指導・教育
日々のルーティン業務や、日勤と夜勤とで異なる業務などの指導・教育もプリセプターの役割です。
日々のルーティン業務の例としては、以下の項目が挙げられます。
- 電子カルテの入力状況
- 清拭や体位変換
- 検温のやり方
まずは、上記のような日々の業務ができているかを、指導・教育しましょう。
新人看護師に対し3ヵ月・6ヵ月・12ヵ月のタイミングで、看護技術とともに評価するなどの評価基準を設けている施設もあります。
看護技術習得の支援・評価
看護技術習得の支援や評価は、各施設や医療施設で設けている技術チェックを用いて行います。
そのチェックにより、プリセプティがどのくらい看護技術を習得できているかを判断するのです。
習得できていない技術に関しては、どのように支援するかを検討し、習得できるよう支援しましょう。
必要に応じて、アソシエートやチームリーダーに相談し、適切な方法を見つけ出すことも大切です。
看護知識の学習サポート
プリセプターシップでは、プリセプティが正しく看護知識を身につけるために、看護知識定着のための学習サポートを行います。
サポートする学習のサイクルとして、以下のような例が挙げられます。
新人看護師が履修する研修を受講 ⇒ レポートをプリセプターに提出 ⇒ レポートが評価され、次の学習へとつなげる
メンタル面のフォロー
プリセプティは、新しい環境にうまくなじめなかったり、人間関係に悩んだりと多くのことで壁にぶつかりやすいです。
もし、プリセプティから悩んでいる様子がうかがえたときは、プリセプターとしてメンタル面のフォローを行いましょう。
まずは側に寄り添い、一緒に看護師として働くために、優しく声をかけてあげることがプリセプターの大切な役割です。
プリセプターシップで看護師に求められるスキル
プリセプターシップで看護師に求められるスキルは、新人看護師の個人差を理解し、それぞれのペースに合わせた支援を行うことです。
「どうしてできないの」や「他の同期はできている」のような言葉は、新人看護師を焦らせるきっかけになります。
新人にはそれぞれの理解の仕方や納得するまでにかかるペースがあり、その成長スピードは個人差があることを理解することが大切です。
焦らせないよう、個人のペースに合わせた支援を行うことを意識しましょう。
またプリセプティと一緒に学んでいこうという気持ちでいることで、プリセプター自身の成長にもつながるため、モチベーションを高くもつことも重要です。
プリセプターの役割を理解しプリセプターシップを有効に機能させよう
プリセプターシップは、新人看護師の教育システムとして注目されています。
先輩看護師が新人看護師に対して、マンツーマンで指導を行うことで、早期の看護知識・技術定着促進、早期離職の防止などが目的です。
プリセプターは、日々の業務内容の指導・教育だけでなく、メンタル面のフォローなど幅広い指導内容を担います。
そのため、新人看護師の個人差を理解し、それぞれのペースに合わせた支援を行うためのスキルが求められます。
プリセプターの役割を理解し、プリセプターシップを有効に機能させることで、新人看護師の成長を支援し、看護の質の向上につなげていきましょう。