
介護福祉士として働くうえで、基本給以外の手当は重要な収入源となります。
しかし、手当の種類や金額は事業所によって大きく異なるため、自分が受け取れる手当について正しく理解しておくことが大切です。
本記事では、介護福祉士がもらえる手当の種類や相場、さらに手当を増やす方法について詳しく解説します。
現役の介護福祉士はもちろん、介護の仕事に興味がある方にとっても参考になる情報となるでしょう。
目次
介護福祉士がもらえる手当の種類と相場
介護福祉士には、さまざまな手当が用意されています。
これらの手当は、介護職員の待遇改善や、より専門的なスキルを持つ人材の確保を目的としています。
ここでは、介護福祉士がもらえる主な手当の種類について、詳しく見ていきましょう。
資格手当
介護福祉士の資格手当は、介護職員の専門性と能力を評価し、処遇改善を図るために多くの介護施設や事業所で導入されている制度です。
公益財団法人社会福祉振興・試験センターが実施した「令和2年度社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士就労状況調査結果」によると、介護福祉士の資格手当の相場は9,055円となっています。
ただし、この金額は資格手当がある事業所の平均値であることに注意が必要です。
実際には、資格手当を設けている事業所は全体の62.9%にとどまります。
つまり、約4割の事業所では資格手当が設定されていないのが現状です。
このデータから、介護福祉士の手当は事業所によってかなりのばらつきがあることがわかります。
就職や転職を考える際は、基本給だけでなく、各種手当の内容も含めて総合的に待遇を判断することが大切です。
処遇改善手当
処遇改善手当は、介護職員の待遇改善を目的として設けられた手当です。
この手当に充当される加算額は、事業所単位で厚生労働省より支給される仕組みになっています。
具体的には、介護職員のキャリアパス要件を満たすことで、事業所は処遇改善加算を受け取り、それをもとに職員に手当として支給します。
キャリアパス要件はⅠ~Ⅲまであり、すべての要件を満たすことで、介護士一人あたり最大月額37,000円相当の加算を受給可能です。
働いている事業所が介護職員処遇改善加算の条件に該当する場合は、資格手当以外にもこの手当が受け取れる可能性があります。
自分の勤務先が該当するかどうか、確認してみると良いでしょう。
役職手当
介護施設や事業所では、管理職などの役職に就くと、役職手当がもらえるケースがあります。
役職手当の相場について公的なデータはありませんが、厚生労働省が役職ごとの支給基準の例を公表しています。
職務 | 支給額(円) |
施設長 | 40,000~80,000 |
副施設長、部長 | 25,000〜69,000 |
課長 | 15,000〜30,000 |
係長、主任 | 10,000〜20,000 |
副主任、リーダー | 3,000〜10,000 |
施設長にまで昇りつめれば、最大月8万円もの手当が支給されるケースもあります。
年収にすると100万円近くアップする可能性があるため、キャリアアップをめざすうえで大きな動機付けになるでしょう。
研修手当
介護の現場では、常に最新の知識や技術を学ぶことが求められます。
そのため、従業員の知識や教養を高めるために、書籍購入や研修費用を手当として支給する事業所もあります。
研修手当の上限は企業によって異なりますが、資格取得のための研修費用を出してもらえるのは大変ありがたい制度でしょう。
自己啓発の機会が増えるだけでなく、経済的な負担も軽減されるため、キャリアアップをめざす介護福祉士にとっては魅力的な手当といえます。
また、自治体によっては、研修や資格取得費用の一部を補助してくれるケースもあります。
勤務先だけでなく、地域の支援制度についても調べてみると、より多くの機会を見つけられるかもしれません。
夜勤・休日手当
介護の仕事は24時間365日休みなく求められるものであり、施設によっては夜勤や休日出勤は避けられません。
そのため、多くの事業所では夜勤手当や休日手当が設定されています。
労働基準法により、夜勤の場合は最大で通常賃金の1.5倍、休日出勤の場合は最大で通常賃金の1.6倍の支給が必要です。
これらの手当は、不規則な勤務に対する補償という側面もあります。
より多く稼ぎたい場合は、夜勤や休日出勤が多い職場を選ぶのも一つの方法です。
ただし、健康管理には十分注意を払う必要があります。
住宅手当
介護福祉士に限らないものですが、住宅手当が支給される場合もあります。
住宅手当の支給は、従業員の住居費用の負担を軽減することが目的です。
具体的な金額は事業所によって大きく異なるため、就職や転職の際には事前に確認しておくと良いでしょう。
なかには、自治体が介護職員向けの住宅手当を支給しているケースもあります。
働く場所と住む場所を慎重に選ぶことで、より生活を楽にできる可能性があります。
特に、都市部など家賃の高い地域で働く場合は、住宅手当の有無が生活に大きな影響を与えるでしょう。
通勤手当
多くの事業所では、通勤手当が支給されます。
ただし、通勤手当は法律で義務付けられているわけではありません。
そのため、上限が設定されているケースや、交通手段が指定されているケースもあり得ます。
通勤手当の詳細は、各事業所の規定によって異なるため、採用時や転職時にしっかりと確認しておくことが大切です。
扶養手当
家族を扶養している介護福祉士に対して、扶養手当が支給されるケースもあります。
この手当は、家族を養う従業員の経済的負担を軽減することが目的です。
例えば、静岡県内のある社会福祉法人では、以下のような支給基準を定めています。
支給区分 | 支給月額(円) |
配偶者 | 10,000〜16,000 |
配偶者がいない場合の18歳未満の子の1人 | 10,000〜11,000 |
18歳未満の子の2人まで | 5,000〜6,500 |
その他の扶養親族 | 1,000〜5,500 |
所帯持ちの方にとっては、扶養手当の有無は重要な待遇の一つといえるでしょう。
家族構成や生活状況に応じて、この手当の有無を考慮に入れることをおすすめします。
介護福祉士の手当を増やす方法
介護福祉士として働きながら、より高い収入をめざしたい方も多いでしょう。
ここでは、介護福祉士の手当を増やすための具体的な方法をいくつか紹介します。
これらの方法を参考に、自分のキャリアプランを考えてみてください。
介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を得る
介護福祉士の手当を増やす有効な方法の一つに、さらに上位である介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を取得する方法があります。
介護支援専門員は、介護サービス全体のコーディネートを行う重要な役割を担っています。
介護支援専門員の資格手当に関する公的な統計はありませんが、令和4年の月の平均給与額は以下のとおりでした。
- 介護福祉士:33万1,690円
- 介護支援専門員:37万6,240円
この数字を見ると、月額で4万円以上もの差があることがわかります。
給与に大きな差があることから、手当にも相応の差があると推測できるでしょう。
介護支援専門員の資格を取得することで、より高度な専門性を身につけられるだけでなく、収入面でもメリットが期待できます。
キャリアアップをめざす介護福祉士にとって、検討する価値のある選択肢といえるでしょう。
手当の厚い事業所に転職する
介護福祉士の手当の種類や金額は、事業所によって大きく異なります。
そのため、より手厚い手当を提供している事業所に転職するのも、収入を増やす一つの方法です。
転職を考える際は、基本給だけでなく、各種手当の内容も含めて総合的に待遇を比較することが重要です。
なかには、市や県などの自治体から独自の手当が支給されるケースもあります。
転職を検討する際は、現在の居住地にこだわらず、他の地域の求人情報も調べてみると良いでしょう。
場合によっては、引越しも視野に入れて、より多くの手当が受け取れる環境を探すことも検討の価値があります。
スキルアップして役職に就く
介護の現場でキャリアを積み、スキルアップを図ることで、役職に就くチャンスが広がります。
役職に就けば、それに応じた役職手当が付き、収入を高められる可能性があります。
管理職になるための要件は事業所や施設の種類ごとに決まっているため、自分のキャリアプランを考えるうえで、勤務先のルールや昇進の基準をよく確認しておくことが大切です。
また、管理職に就くためには、介護の専門知識だけでなく、マネジメントスキルも求められます。
日頃から、リーダーシップを発揮する機会を積極的に求めたり、管理に関する研修に参加したりすることで、将来の昇進に向けて準備をしておくと良いでしょう。
介護福祉士の手当の種類・金額は事業所で大きく異なる
介護福祉士の手当は、種類も金額も事業所によって大きく異なります。
処遇改善手当、役職手当、研修手当、夜勤・休日手当、住宅手当、通勤手当、扶養手当など、さまざまな種類の手当が存在しますが、すべての事業所でこれらの手当が用意されているわけではありません。
介護福祉士の資格手当の相場は月額約9,000円ですが、そもそも資格手当を設けている事業所は全体の6割程度にとどまります。
手当を増やすには、介護支援専門員の資格取得や、手当の厚い事業所への転職、スキルアップして役職に就くなどの方法があります。
自分のキャリアプランや生活状況に合わせて、最適な職場環境を選ぶことが大切です。
手当の内容をしっかりと確認し、総合的に待遇を判断することで、介護福祉士としてより充実したキャリアを築くことができるでしょう。