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介護福祉士の倫理綱領の内容は?具体例も紹介

「介護福祉士の倫理綱領は、どのようなときに役に立つのだろうか」と疑問に思っていませんか。

介護福祉士の倫理綱領は介護福祉士の倫理基準を示しており、利用者さん・ご家族とのコミュニケーションやプライバシーの保護、権利の尊重など、さまざまな倫理的な問題が起きた際に行動の指針となるものです。

本記事では、介護福祉士の倫理綱領の内容を解説します。
また、介護福祉士に倫理綱領が必要な理由や、倫理綱領が活きる具体例も紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

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介護福祉士の倫理綱領とは?

介護福祉士の倫理綱領とは、介護福祉士の専門職としての社会責任や職業倫理を書き記したもので、行動の指針となるものです。
介護福祉士の倫理綱領は日本介護福祉士会によって作られ、1995年11月17日に宣言されました。

介護福祉士に倫理綱領が必要な理由

介護福祉士に倫理綱領が必要な理由は、「介護福祉士として業務に従事する際に取るべき行動を考えるため」です。

介護福祉士は、利用者が病気や障害があってもその人らしい生活を実現し、個人としての尊厳を保てるように配慮しなければなりません。
したがって、高い職業倫理・人間性が問われるでしょう。

介護福祉士の倫理綱領は、提供している介護サービスの善し悪しや、職員間でケアの方針に関して話し合うときにも役に立ちます。
介護の現場で働くのであれば、倫理基準を把握し、日頃から意識して行動するようにしましょう。

介護福祉士の倫理要綱はどのような内容?

介護福祉士の倫理綱領は、以下の行動規範から成り立っています。

  • 利用者本位、自立支援
  • 専門的サービスの提供
  • プライバシーの保護
  • 総合的サービスの提供と積極的な連携、協力
  • 利用者ニーズの代弁
  • 地域福祉の推進
  • 後継者の育成

本項では、それぞれの行動規範を具体例を挙げながら解説します。

利用者本位、自立支援

(利用者本位、自立支援)
介護福祉士は、すべての人々の基本的人権を擁護し、一人ひとりの住民が心豊かな暮らしと老後が送れるよう利用者本位の立場から自己決定を最大限尊重し、自立に向けた介護福祉サービスを提供していきます。

引用:倫理綱領 | 日本介護福祉士会

「利用者本位、自立支援」とは、介護福祉士は利用者さんの自立・自己決定をできる限り尊重するべきであることを示すものです。
利用者本位とは、介護サービスは利用者さん自身の判断によって選択・決定されなければならないという考え方を指します。
自立支援とは、利用者さんの意思に基づいた日常生活を送るための支援です。

複数の利用者さんに同じ疾病があり、同じサービスを利用していたとしても、個人が望む人生・生活スタイルは異なります。
一人ひとりの生活課題を丁寧に調べ、それぞれに合った介護計画や個別サービス計画を提案、選択してもらうようにしましょう。

専門的サービスの提供

(専門的サービスの提供)
介護福祉士は、常に専門的知識・技術の研鑽に励むとともに、豊かな感性と的確な判断力を培い、深い洞察力をもって専門的サービスの提供に努めます。
また、介護福祉士は、介護福祉サービスの質的向上に努め、自己の実施した介護福祉サービスについては、常に専門職としての責任を負います。

引用:倫理綱領 | 日本介護福祉士会

日本介護福祉士会では、介護福祉士の専門性を以下の3項目にまとめています。

専門的サービスの提供

介護過程とは、利用者さんが望む生活を実現するために必要な介護サービスを考え、実践する道筋のことです。
介護福祉士が介護過程を展開する際には、利用者さんに提供したサービス内容を記録し「なぜそのサービスを提供したのか」「本当に必要なのか」を考える必要があります。

介護福祉士の専門性は、根拠に基づいた介護の実践を行うだけではありません。
整理整頓や衛生面の管理、多職種連携、他の職員への指導・助言といった幅広い業務を同時に実施することを通し、専門性を発揮することが求められるのです。

プライバシーの保護

(プライバシーの保護)
介護福祉士は、プライバシーを保護するため、職務上知り得た個人の情報を守ります。

引用:倫理綱領 | 日本介護福祉士会

介護福祉士は、利用者さんの個人情報を外部に漏らさないように心がけなければなりません。
社会福祉士及び介護福祉士法では「秘密保持義務」が定められており、違反した場合は罰則が課せられます。

(秘密保持義務)
第四十六条 社会福祉士又は介護福祉士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た人の秘密を漏らしてはならない。社会福祉士又は介護福祉士でなくなつた後においても、同様とする。

第五十条 第四十六条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

引用:・社会福祉士及び介護福祉士法(◆昭和62年05月26日法律第30号)

介護現場でプライバシーの侵害にあたるのは、以下のケースです。

  • 利用者さんの個人情報を漏らすこと
  • 利用者さんの私物を勝手に見ること
  • 介護福祉士個人の感情による自宅訪問
  • 利用者さんの悪口・愚痴をいうこと

介護現場では、個人情報の扱いのみならず、利用者さんの尊厳に関わることもプライバシーに含まれます。
特に排泄・入浴介助や衣類の着脱では利用者さんの身体を直接見ることになるので、プライドや尊厳を傷つけないように注意しましょう。

また、秘密保持義務は、介護福祉士としての業務から離れた場合にも適用されます。
退職後も秘密保持義務を守り、必要以上に情報を外部に漏らさないようにしましょう。

総合的サービスの提供と積極的な連携、協力

(総合的サービスの提供と積極的な連携、協力)
介護福祉士は、利用者に最適なサービスを総合的に提供していくため、福祉、医療、保健その他関連する業務に従事する者と積極的な連携を図り、協力して行動します。

引用:倫理綱領 | 日本介護福祉士会

介護サービスは、介護福祉士だけでなく、医師や看護師、社会福祉士などの職種によっても提供されます。
各職種の専門性・考え方が異なる一方で、ケアの方向性や専門職一人ひとりの意識が統一されていなければ、一貫性のある介護は不可能でしょう。
介護計画やサービス利用計画を立案する際には「誰が〇回△△をする」のように具体的に実施内容を定め、各職種が誤解や混乱を生まないようにする必要があります。

また、多職種連携では、情報共有や明確な役割分担が重要です。
情報共有すると、各職種がそれぞれの専門性を活かしたケア内容を考えられるからです。
利用者さんに総合的なサービスを提供するには、介護福祉士だけでなく他の職種にも「報告・連絡・相談」を怠らないようにしましょう。

利用者ニーズの代弁

(利用者ニーズの代弁)
介護福祉士は、暮らしを支える視点から利用者の真のニーズを受けとめ、それを代弁していくことも重要な役割であると確認したうえで、考え、行動します。

引用:倫理綱領 | 日本介護福祉士会

「利用者ニーズの代弁」とは、利用者さん自身の実現したいことや困っていること(ニーズ)を引き出し、それを本人に代わって主張することを指します。
介護の現場では、自分の意思・意見をうまく伝えられない方が多く、介護福祉士は利用者さんの意思・意見を聞き取り、本人の代理として伝えることも必要です。

利用者さんのニーズを引き出すには、徐々に心理的距離を縮めていくことが求められます。
仮に利用者さんに明確なニーズがあったとしても、職員との関係性が構築されてなければ、遠慮したりして本心を打ち明けられない場合も多いでしょう。
利用者さん自ら相談してもらうようにするには、日頃から利用者さんを受容し、信頼関係を築くことが大切です。

地域福祉の推進

(地域福祉の推進)
介護福祉士は、地域において生じる介護問題を解決していくために、専門職として常に積極的な態度で住民と接し、介護問題に対する深い理解が得られるよう努めるとともに、その介護力の強化に協力していきます。

引用:倫理綱領 | 日本介護福祉士会

「地域福祉の推進」とは、地域で発生している介護問題に向き合い、解決するための行動をとることを指します。

総務省の2022年の統計によると、日本の総人口のうち29.1%が65歳以上の高齢者であり、高齢者の割合が21%以上の「超高齢社会」です。
超高齢社会で起こる問題は、高齢者が高齢者を介護する「老老介護」や「一人暮らしの高齢者の介護・看取り」などさまざまです。

介護福祉士には上記の問題を解決させるための実践が求められるでしょう。
例えば、地域の高齢者とボランティアが企画・運営するサロン活動は、地域福祉の実践といえます。
介護問題を地域課題として啓発するには、地域住民の協力が必須です。

後継者の育成

(後継者の育成)
介護福祉士は、すべての人々が将来にわたり安心して質の高い介護を受ける権利を享受できるよう、介護福祉士に関する教育水準の向上と後継者の育成に力を注ぎます。

引用:倫理綱領 | 日本介護福祉士会

介護福祉士は自身の介護スキルのみならず、後輩職員の介護スキルも向上させなければなりません。
先述したとおり日本は超高齢社会であり、介護福祉士のニーズは年々上がっていくことが予想されています。
したがって、介護に関する知識・技能の伝承が求められているのです。

介護福祉士の人材育成を目的とした取り組みには、先輩職員が後輩職員に直接サポートをする「メンター制度」や、職場での実践を通して知識を学ぶ「OJT研修」があります。
上記の研修以外にも、法人内研修や勉強会では職員全員のスキルアップを図れます。

忙しい日々のなかで、人材育成のためにどれだけ時間を捻出できるかがカギです。

介護福祉士は倫理綱領を意識して介護業務に従事しよう

介護福祉士の倫理綱領とは、介護福祉士の専門職としての社会責任や職業倫理を書き記したもので、介護業務を行ううえでの行動指針です。
介護福祉士の倫理綱領は、以下の行動規範から成り立っています。

  • 利用者本位、自立支援
  • 専門的サービスの提供
  • プライバシーの保護
  • 総合的サービスの提供と積極的な連携、協力
  • 利用者ニーズの代弁
  • 地域福祉の推進
  • 後継者の育成

介護福祉士に倫理綱領が必要な理由は「介護福祉士として業務に従事する際に取るべき行動を考えるため」です。
介護の現場で働くのであれば、倫理基準を把握し、日頃から意識して行動しましょう。

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