介護福祉士と看護師は、超高齢社会に拍車がかかる現代では、今後ますます活躍が期待されている職業です。
ともに国家資格ですが、両者は仕事内容が異なる別の職種です。
今回は、それぞれの職種の違いや、介護福祉士から看護師をめざすための方法を解説します。
介護福祉士や看護師の人はもちろんのこと、介護福祉士から看護師へのキャリアアップを検討している人も、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
目次
介護福祉士と看護師の違い
介護福祉士と看護師はともに国家資格ですが、両者は資格や仕事内容などがまったく異なる職種です。
それぞれの特徴を解説します。
資格の違い
介護福祉士は、社会福祉士及び介護福祉士法によって定められた国家資格であり、介護施設などで、介護を必要とする人たちを介助する福祉職です。
介護職として現場で3年以上の実務経験を積むか、養成学校などを修了することにより、国家試験の受験資格が得られます。
一方看護師は、保健師助産師看護師法によって定められた国家資格で、患者さんや利用者さんの疾病の回復や健康の維持増進を目的として働く医療職です。
文部科学大臣および厚生労働大臣が指定した大学や専門学校などを卒業することで、国家試験の受験資格が得られます。
仕事内容の違い
介護福祉士と看護師は、仕事内容も異なります。
介護福祉士は、介護を必要とする人に対し、食事や排泄、更衣、入浴などをはじめとする日常生活援助をします。
それぞれの利用者が自分らしく快適に生活できるよう、生活全般のサポートが求められる職種です。
一方、看護師の仕事内容は、診療の補助と療養上の世話です。
患者さんへ日常生活援助はもちろん行いますが、それに加え医師の指示のもとで医療行為も日常的に行います。
バイタルサインの測定や観察、服薬管理、点滴や注射など、さまざまな医療的役割を担う必要があります。
給料の違い
介護福祉士と看護師では、給料にも差があります。
厚生労働省の令和3年賃金構造基本統計調査によると、看護師の平均年収が498.6万円であるのに対し、介護士を含む施設介護員の平均年収は352.8万円と、100万円以上もの差があることがわかります。
介護福祉士も看護師も、24時間体制で患者さんや利用者さんをサポートする点では同じです。
しかし、看護師は診療の補助という専門的な業務が求められるため、この給料の差が生じているのでしょう。
介護福祉士から看護師になるには
介護福祉士として介護施設で働いている人のなかには、医療に関する知識や技術を身につけるために看護師をめざしたくなる人もいることでしょう。
介護福祉士から看護師をめざすことは可能です。
その具体的な方法を解説します。
受験資格を得るルート
介護福祉士としてすでに社会に出ている人が、あらためて正看護師の国家試験を受験するためには、以下3つのルートがあります。
- 文部科学省指定の看護系4年制大学を卒業する
- 都道府県知事の指定する看護師養成学校を卒業する
- 准看護師の免許を取得後3年間の実務経験を積み、指定の学校で2年以上修業する
共通基礎課程について
今後、介護福祉士から看護師をめざす際に注目したいのが、現在導入が検討されている共通基礎課程です。
医療福祉系のそれぞれの資格取得のために組まれているカリキュラムの一部を共通にすることで、受講が免除される制度です。
この制度が導入されれば、介護福祉士から看護師になるために現在は最短で3年間かかるところ、2年間への短縮が可能となります。
現在までに検討されている共通基礎課程の対象となる資格には、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、診療放射線技師、臨床検査技師、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士などです。
共通基礎課程は厚生労働省により検討されている最中であり、明確な開始時期は2022年9月時点では発表されていません。
今後、介護福祉士から看護師をめざす可能性のある人は、共通基礎課程制度のゆくえを見守っていきましょう。
介護福祉士から看護師をめざすメリット・デメリット
介護福祉士から看護師をめざす場合には、メリットとデメリットがともないます。
メリット・デメリットそれぞれを解説します。
メリット
介護福祉士から看護師をめざす際の主なメリットは、以下のとおりです。
- 給料の増加
- 職場の選択肢の拡大
- 業務内容の拡大
給料は勤務先や業務内容によっても異なりますが、先述のとおり、看護師と介護士を含む施設介護員では平均年収に100万円以上もの差があります。
多くのケースで看護師のほうが収入が高いため、収入増加を叶えられるでしょう。
また、介護福祉士として培ってきた知識や技術を活かしながら、さらに看護師として医療行為も行えるようになるため、やりがいや達成感にもつながるはずです。
職場についても、介護施設のみならず病院やクリニックなどの医療機関はもちろんのこと、保育園や幼稚園、美容クリニックや企業など選択の幅がぐっと広がり、より自分らしく楽しく働ける可能性が大きくなります。
デメリット
介護福祉士から看護師をめざす際のデメリットは、以下のとおりです。
- 時間・費用がかかる
- 責任がより重くなる
介護福祉士から看護師をめざすなら、現在の制度では最低でも3年間を要します。
看護師養成学校のカリキュラムはタイトなため、その間に介護福祉士として勤務することは難しいと考えられます。
学費がかかることに加え、通学中に収入が途絶える点でも負担となるでしょう。
また、看護師として働いた際には、単に医療行為をするだけでなく、介護施設と比較すると急性期にある重症な患者さんを対象とする場合もあるため、より一層責任が重くなります。
しかし、その分やりがいや達成感、充実感が得られる可能性も高まります。
介護と看護の両面についての知識や技術がある看護師は、今後も現場の第一線で活躍し続けることができるため、介護福祉士から看護師をめざす価値は十分にあるといえるでしょう。
介護福祉士と看護師はまったく違う仕事!自分に合ったキャリアを選ぼう
今回は、介護福祉士と看護師の資格や仕事内容の違い、介護福祉士から看護師をめざすための方法と、メリット・デメリットを解説しました。
介護福祉士として働くなかで「看護師をめざしたい」と思うこともあるでしょう。
介護福祉士と看護師はそれぞれ福祉職、医療職であり、資格も仕事内容も異なる仕事です。
介護福祉士から看護師をめざすのは簡単なことではないかもしれませんが、けっして不可能ではありません。
自分自身のキャリアについてしっかりと考え、今後の計画を立てていきましょう。