
国家試験に合格していなくても介護福祉士の養成施設を卒業した方であれば、一定期間介護福祉士と名乗れることをご存知でしょうか。
介護福祉士の資格がなくても介護職には就けますが、介護福祉士の資格があることによって、給与に反映されたり、転職しやすくなったりすることが具体的なメリットです。
今回の記事では、介護福祉士の経過措置の概要や手続き方法、資格有効期限の解除方法を説明します。
介護福祉士の養成施設に通っており、国家試験の受験を迷っている方はぜひ参考にしてみてください。
目次
介護福祉士の経過措置登録とは?
社会福祉士及び介護福祉士法の改正により、2017年度から介護福祉士になるためには、介護福祉士国家試験の合格が必要となりました。
しかし、現時点(2023年度時点)では、法律改正による経過措置が取られており、国家試験に合格していなくても、介護福祉士の養成施設を卒業した方であれば、卒業後5年間は介護福祉士として名乗れます。
介護福祉士国家試験の受験も必須ではなく、未受験の状態であっても同様です。
この経過措置は令和9年3月31日まで継続される予定です。
経過措置による介護福祉士への登録手続き
介護福祉士国家試験を受験せずに、経過措置を利用するためには、社会福祉振興・試験センターへ介護福祉士の登録手続きをしなければいけません。
介護福祉士の登録手続きに必要な「新規登録の手引(経過措置対象者用)」は、それぞれ以下の方法で入手できます。
- 介護福祉士国家試験未受験の場合:養成施設からもらう
- 介護福祉士国家試験不合格の場合:不合格通知後、新規登録の手引きが送付される
ここからは、実際の登録手続きを見ていきましょう。
申請書類を準備する
まずは、登録に必要な申請書類を準備します。
申請に必要な書類は、以下の4点となります。
- 登録申請書(収入印紙をはり付けたもの)
- 貼付用紙(振替払込受付証明書の原本を貼り付けたもの)
- 戸籍の個人事項証明書(戸籍抄本)の原本または住民票(本籍記載済み)の原本
- 介護福祉士養成施設の卒業証明書または委託訓練修了証明書
登録申請書には、氏名や住所、養成施設の名称・卒業年月日など登録に必要な情報を記載するとともに欠格事由を確認してチェックをつけます。
不正な申告によって登録された場合、資格の取り消しにつながるため正しく申告するようにしましょう。
加えて、収入印紙9,000円分を購入し、登録申請書の下部に貼り付けます。
登録に必要な費用を払う
郵便局などの金融機関窓口で5連式払込用紙を用いて登録手数料を支払います。
払い込み者の名前は、登録者本人の名前を記載するようにしましょう。
支払いが完了したら、日附印に金融機関の押印があることを確認のうえ、貼付用紙に振替払込受付証明書の原本を貼り付けます。
振替払込受付証明書のコピーは不可となるため、注意しましょう。
念のためとはなりますが、払込取扱票が紛失した場合でも費用の支払いを証明できるようにするため、原本の貼り付け前にコピーをとっておき、ご自身で保管しておくようにしましょう。
試験センターへ申請書類を発送する
提出書類の準備がすべて完了したら、試験センターへ申請書類を発送します。
発送の際には、簡易書留で発送し、控えをご自身で保管しておくようにしましょう。
また、申請書類を発送する際に使用する封筒の記載例は、「新規登録の手引」を確認して作成してください。
封筒の裏面には、提出前の最終確認を実施する欄があります。
提出漏れや不備がないよう提出前に今一度チェックしましょう。
登録証を受け取る
介護福祉士の登録が完了したら、社会福祉振興・試験センターから登録証が郵送されます。
登録申請を行ってから登録証の郵送までは、約1ヵ月かかります。
申請内容に不備がある場合はさらに時間がかかってしまうため、正しい情報を記載するようにしましょう。
なお、登録申請中であることを証明する書類は存在しません。
職場に登録申請中の旨を伝える際には、以下の書類を用いるようにしましょう。
- 介護福祉士養成施設の卒業証明書
- 登録手数料の振替払込請求書兼受領証
- 登録申請書類送付時に郵便局から発行された簡易書留の控え
経過措置延長の背景
当初、介護福祉士の経過措置は2022年度で終了する予定でしたが、期間が延長されており、2027年まで継続することが決まっています。
その背景理由として、介護福祉士養成施設に入学する留学生の増加があります。
留学生にとって、日本語で受けなければいけない国家試験の合格は難しい面もあるでしょう。
将来の介護福祉士の数を確保するためには、留学生の存在が欠かせません。
国家試験の義務化に対して経過措置を行うことで、留学生の方でも介護福祉士として活躍できるような状況を確保することが目的です。
介護福祉士の経過措置登録者:資格有効期間の解除方法
経過措置を利用している方は、介護福祉士の資格の有効期間が5年と限定されています。
しかし、以下の2つの方法によって資格の有効期間を解除できます。
- 介護福祉士国家試験に登録する
- 資格登録有効期限まで介護福祉士として勤務する
それぞれ詳細を見ていきましょう。
介護福祉士国家試験に合格する
資格登録有効期限までに介護福祉士国家試験に合格すれば、資格登録有効期限を解除できます。
介護福祉士養成施設を卒業した方であれば、誰でも介護福祉士国家試験の受験が可能です。
筆記試験は例年1月下旬に実施され、受験申し込みは8月〜9月となります。
受験を検討している場合は、早めにスケジュールを確認しておきましょう。
なお、介護福祉士国家試験に合格した際には、介護福祉士の登録申請は不要です。
国家試験の合格通知書とともに「資格登録有効期限解除通知書」が郵送されます。
資格登録有効期限まで介護職として勤務する
介護福祉士養成施設を卒業した年の翌年度の4月1日から資格登録有効期限まで、通算5年間介護職として勤務した場合も、介護福祉士資格の有効期限が解除できます。
具体的な介護福祉士の資格登録有効期限解除の条件は、以下のとおりです。
- 介護福祉士養成施設を卒業した年の翌年度の4月1日から介護施設にて介護職としての在職期間が1,825日以上である
- 介護福祉士養成施設を卒業した年の翌年度の4月1日から介護施設にて介護職としての勤務日数が900日以上である
介護福祉士国家試験を受けずに有効期限の解除を検討している場合は、他の職種には転職せずに介護職として勤務し続けるようにしましょう。
有効期間解除の手続き方法
資格登録有効期限を解除する場合は、介護福祉士資格の有効期限から14日以内に書類を社会福祉振興・試験センターに郵送しなければいけません。
必要書類は、以下の3点です。
- 「5年間の介護等業務従事届」
- 「介護等業務従事証明書」
- 「従事日数内訳証明書」(同一期間に複数の勤務先で働いた場合)
「介護等業務従事証明書」と「従事日数内訳証明書」の作成者は就業先となるうえ、5年間の間に就業したすべての勤務先における証明書が必要となります。
転職をする場合は、退職前に証明書の作成を依頼し、保管しておくようにしましょう。
休業理由によっては有効期限の延長が可能
資格登録有効期間中に、産休や育休、介護休業などやむを得ない事情により、休職される方もいるでしょう。
以下に当てはまる場合は、有効期限の延長が5年まで可能です。
- 産前産後休業すること
- 育児休業・育児休業に後続する休業
- 介護休業・介護休業に後続する休業
- 業務災害による休業
- 通勤災害による休業
- 激甚災害・災害救助法適用災害による休業
- 倒産・解雇等による休業
- その他やむを得ない理由による休業
また、休業の際には、届出が必要です。
「産前・産後休業」「育児休業」「介護休業」などは、休業に入る前に書類の提出が求められるため、注意しましょう。
介護福祉士の経過措置内容を正しく理解しよう
介護福祉士の経過措置内容を理解して手続きを実施することにより、国家試験に合格していなくても介護福祉士として活躍できます。
介護福祉士国家試験受験に対して迷っている場合は、今回の内容を参考にしつつ、経過措置の利用を検討してみてはいかがでしょうか。