
「ケアマネジャーの受け持ち人数が知りたい」
「ケアマネジャーの担当件数の上限は?」
ケアマネジャーをめざす人や、実際にケアマネジャーとして働いている人のなかには、このような疑問を持つ人もいるのではないでしょうか。
ケアマネジャーの担当件数は事業所によって違うため、「できるだけ無理のない働き方をしたい」と考えている方にとっては、気になるポイントかもしれません。
この記事では、ケアマネジャー一人あたりの担当件数と、今後の展望について解説します。
目次
ケアマネジャー一人あたりの担当件数は?
ケアマネジャー一人あたりの担当件数は、勤務先の事業所によって異なります。
特に居宅介護支援事業所に勤務する場合は、情報通信機器(ICT)の活用や事務職員の配置によって担当できる件数が異なるため、勤務前にあらかじめ確認しておきましょう。
居宅ケアマネの場合
居宅介護支援事業所で働くケアマネジャー(居宅ケアマネ)の一人あたりの担当件数は、35件が基準と定められています。
36件以上担当する場合もありますが、業務負担を考えると担当件数は35件以内が望ましいでしょう。
居宅ケアマネの担当件数が定められている理由は、居宅ケアマネ一人に課される業務量が多いからです。
居宅ケアマネは、利用者宅や役所、病院、地域包括支援センターなどを訪問する機会が多いです。
さらに、書類作成にも膨大な時間を割くため、ケアマネジャー一人あたりの担当件数の基準が定められています。
担当件数が40件以上の場合
居宅ケアマネには、担当件数が40件以上になると介護報酬が減っていく「逓減制(ていげんせい)」が導入されています。
報酬減算を避けるため、居宅ケアマネ一人あたりの担当件数は、多くとも40件未満でしょう。
逓減制のイメージは以下のとおりです。
出典:厚生労働省 居宅介護支援・介護予防支援 p5 「居宅介護支援費(Ⅰ)」の図
上図のように、ケアマネジャー一人あたりの担当件数が40件を超えた場合、超えた部分が居宅介護支援費の逓減制による単位減算の適用範囲です。
つまり、1〜39件目まではより高い「居宅介護支援費Ⅰ」が適用されるものの、40件目からはより低い「居宅介護支援費Ⅱ」が適用される仕組みとなっています。
ICT活用・事務職員の配置をしている事業所の場合
介護支援事業所が一定の情報通信機器(AIを含む)を活用したり、事務職員を配置したりしている場合、逓減制が緩和されます。
その場合、下図のように報酬減算となるのは45件以上の部分です。
出典:厚生労働省 居宅介護支援・介護予防支援 p5 「居宅介護支援費(Ⅱ)」の図
居宅介護支援費の逓減制は、2021年の介護報酬改定で見直されています。
その理由は、全国的なケアマネジャー不足です。2018年からの受験資格の厳格化によって、資格取得者が減少し、ケアマネジャー不足に拍車をかけました。
また、厚生労働省は介護現場におけるICTの活用を薦めています。
介護職員が書類作成にかかる時間を短縮し、利用者さんやご家族の対応に集中できる環境をつくるのが目的です。
逓減制の緩和策は、ケアマネジャーの人材不足とICTの利用促進をきっかけに施行されました。
施設ケアマネの場合
特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、介護施設には常勤のケアマネジャー(施設ケアマネ)配置が定められており、利用者100名ごとにケアマネジャー一人を増員することが望ましいとされています。
逆に、小規模な施設は利用者さんの数も少なくなるため、担当件数もおのずと少なくなるでしょう。
施設ケアマネは、施設に入居する利用者さんや入居する予定の方のケアプランを作成します。
利用者さんに提供する介護サービスがほぼ施設内で完結するため、業務範囲は限定的で、居宅ケアマネと比較して担当件数は多めです。
一方で、ケアマネジャーの仕事に余裕がある場合は介護職員や生活相談員などの役割を兼任するため、介護に関する幅広い知識・技術が求められるでしょう。
ケアマネジャーの平均担当件数・人数は?
厚生労働省の「令和5年度介護事業経営概況調査結果」によると、令和4年度の居宅ケアマネの平均担当件数は44.0人でした。
ケアマネジャー一人あたりの担当件数は、以下の表のように年々増加しています。
年度 | 平均担当件数 | 備考 |
---|---|---|
平成30年度(2018年度) | 36.3/人 | |
令和元年度(2019年度) | 39.4/人 | |
令和3年度(2021年度) | 42.7/人 | ICT活用による逓減制導入 |
令和4年度(2022年度) | 44.0/人 |
出典:令和5年度介護事業経営実態調査結果 p18 第13表 居宅介護支援 1施設・事業所当たり収支額,収支等の科目
ケアマネジャーの担当件数は今後も増える?
ケアマネジャーの担当件数は今後も増えるでしょう。
その根拠は以下の3つです。
- 高齢化により介護サービス利用者数が増える
- 2024年報酬改定で逓減制の緩和がなされる
- ICT機器の導入が進む
高齢化により介護サービス利用者が増える
高齢化は今後も加速すると予想され、介護サービスを利用する方も増えるでしょう。
特に第2次ベビーブーム期(1971〜1974年)に生まれた世代が65歳以上となる2040年には、人口に対する高齢者の割合は34.8%、2045年には36.3%になると見込まれています。
出典:統計トピックス No.138 統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-p4 図2 高齢者人口及び割合の推移(1950年~2045年)
高齢者が増加すると介護保険制度を利用する方が増えるため、ケアマネジャーのニーズも高まるでしょう。
先述したとおり、ケアマネジャーは慢性的に人手が不足しており、今後ケアマネジャーの数が増えない限りは、一人あたりの担当件数も増え続けることが予想されます。
2024年度報酬改定で逓減制が緩和される
「2024年度(令和6年度)介護報酬改定」において、居宅介護支援費の逓減制の緩和がなされることにより、ケアマネジャーの担当件数も増えるでしょう。
現行では「40件以上60件未満」で逓減制の対象となっていますが、改定後は「45件以上60件未満」が対象です。
上記にあわせて、ICT活用や事務職員配置を実施している事業所では「45件以上60件未満」から「50件以上60件未満」に変更される予定です。
「担当件数を増やして給与を上げる」との見方もできるため、改定後は業務負担とケアの質のバランスが問われるでしょう。
ICTの導入が進む
ICTの導入が進むとケアマネジャーの業務負担が軽減され、より多くのケースを担当できるでしょう。
「令和3年度ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ」によると、80%以上の事業所が「情報共有がしやすくなった」「文書作成の時間が短くなった」と回答しています。
また、令和4年度の「ICT機器等の整備・利用状況」の調査によると、約8割の事業所においてパソコンやタブレットなどのICT機器を一人1台利用していると判明しました。
ICTの導入が進むと業務の効率化を図れるようになり、より多くのケースを担当できるようになるでしょう。
ケアマネジャーの担当件数は事業所によって異なる
ケアマネジャーの担当件数は、勤務先の介護サービス事業所によって異なります。
居宅ケアマネの場合、ケアマネジャー一人あたりの担当件数は35件が基準と定められています。
36件以上担当する場合もありますが、業務負担を考えると35件以内が望ましいでしょう。
また、居宅ケアマネの担当件数が40件以上になると、「逓減制」により、介護報酬が減算されます。
一方で、ICTを活用したり、事務職員を配置したりすると逓減制の緩和がなされます。
介護施設で働く施設ケアマネの場合、一人あたりの担当件数は100件までです。
しかし、施設ケアマネの担当件数は利用者さんの数によって異なります。
高齢化や逓減制の緩和、介護現場のICT導入が進むにつれて、ケアマネジャーの担当件数は今後も増えるでしょう。