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臨床心理士の仕事がないというのは本当?稼ぎ続けるポイントも解説

この記事の監修者
野口亜美梨様_プロフィール
野口亜美梨
【資格】
臨床心理士・公認心理師

【プロフィール文】
教育・医療分野に長年従事し児童から高齢者まで幅広く経験
心理面接、心理検査、プレイセラピー、治験業務等で活躍中
仲間と支えあって働くことがモットー

臨床心理士は、人々が抱える心の問題にアプローチする専門家です。
臨床心理学を深く学んだうえで資格試験に合格する必要があり、高い専門性を活かして働ける一方で、「臨床心理士には仕事がない」という声を耳にすることもあるでしょう。

本記事では、臨床心理士の仕事事情や将来性とともに、臨床心理士として長く活躍し続けるポイントなどを解説します。
将来の可能性を広げるため、臨床心理士をめざしている方や就職活動中の方はぜひ参考にしてみてください。

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臨床心理士は仕事がないのか?

臨床心理士は仕事がないのか?

臨床心理士は仕事がないといわれることもありますが、その背景には次のような要因があります。

  • 求人が少なく、就職先を見つけにくい
  • 待遇面が良くないケースがある

臨床心理士の将来性を考えるにあたって、まずは就職市場や待遇面の現状を知っておきましょう。

求人が少なく、就職先が見つけにくい

臨床心理士は、高い専門性を発揮して人々の心の健康を支える専門家であり、社会的にもニーズがあります。
しかし、臨床心理士の求人数は限られているのが現状です。

臨床心理士の求人は、関連する心理系学会や協会のホームページ内に、会員専用の非公開求人情報として掲載されています。
専門職であることから、大学院を通しての求人や、教授陣のネットワークからの紹介などもあるため、求人情報が一般の方の目に触れにくいことが、求人が少ないと言われる要因の一つとなっています。
求人数が豊富とはいえない主な理由に、臨床心理士の活躍できる場が医療機関や福祉機関、教育機関などに限定されていることが挙げられます。
こうした場所で働く正規職員の臨床心理士のポジションが、頻繁に入れ替わることはあまりなく、人員補充の機会もそこまで多くありません。

一方で、日本臨床心理士資格認定協会が行う資格試験には、過去5回の試験でそれぞれ1,100~1,300人程度が合格しています。
求人数に対し、供給過多の状態に陥っていることが、臨床心理士の就職を難しくしている一つの要因です。

待遇面が良くないケースがある

臨床心理士の就職先は、待遇面で課題を抱えているケースも少なくありません。
なかでも行政が運営する児童相談所などは、給与水準の低さが指摘されており、待遇改善が図られてきました
2020年には、国の施策により会計年度任用職員制度がはじまり、非常勤職員の待遇改善もなされました。

しかし、こうした行政が運営する施設の人件費は、公定価格に影響を受けるため、地域や働き方によっては十分な給与を得られないということもありえます。公的機関に限らず、医療機関や福祉施設でも月給や時給が低い場合があり、大学院を修了した身に釣り合わない待遇の職場もあるかもしれません。

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臨床心理士の仕事はなくなるのか

臨床心理士の現状をふまえて、将来性に不安を感じる声もあります。
AI技術の発展により、さまざまな仕事が代替される可能性も指摘されるなか、臨床心理士の今後はどうなるのでしょうか。
ここからは、社会の変化が臨床心理士の働き方や需要にどのような影響を与えるのか探っていきます。

現状、AIには臨床心理士の仕事はできない

臨床心理士の仕事は、現時点でAIに代替されるリスクは低いと考えられています。
AIによるカウンセリング自体は存在し、蓄積されたデータに基づいて迅速な回答ができる利点もありますが、言語化された相談内容以上のことは理解できません。
うまく言葉にできない相手の感情を推察して共感したり、一人ひとりの状況に合わせて返答を変えたりといった対応には、人間特有のアセスメント能力が必要なためです。一般的な健康相談や情報提供が24時間可能という点で見れば、AIは優秀といえるでしょう。

臨床心理士は、心の問題を抱えるクライエントの考え方や心情に寄り添い、個々の状況に応じて適切なサポートを提供します。
この過程では、複雑で総合的な判断や柔軟な対応が求められ、現在のAI技術が完全に取って代わることは困難です。
したがって、AIが臨床心理士の将来性にマイナスな影響を与えることはないでしょう。

メンタルケアを必要とする人は増加傾向

精神疾患を抱える方は増加傾向にあり、メンタルケアの重要性が増すとともに、臨床心理士の需要も高まっていくと予想されています。
厚生労働省の資料によると、外来の精神疾患患者数は2002年の258万人から、2022年に614.8万人まで増加しました。
10年間で患者数は倍以上に増えており、多くの方が心のケアを必要としていることがわかります。
2011年には日本の5大疾病に精神疾患が加わり、厚生労働省は各都道府県に対して重点的に対策をとっていくよう指示しています。
こうした社会のニーズから、臨床心理士は需要が高まっていくと同時に、活躍の場も広がっていくでしょう。
従来の医療機関や福祉施設、教育機関だけでなく、産業分野や司法分野なども就職先の選択肢に加えやすくなります。

仕事がない臨床心理士にならないために

臨床心理士の職自体がなくなる可能性は低いものの、安定した仕事を確保してキャリアを築いていくためには、次のような戦略的なアプローチが必要です。

  • 資格を取得して専門性を高める
  • 独立開業する

他にも、いくつかの非常勤をかけ持ちするという働き方もあります。
例えば教育機関と医療機関の両方で働くことで、どちらの知識も習得できるだけでなく、2つの領域のキャリア経験を積むことができるため、臨床心理士としての強みへとつながります。
自分のキャリアプランに合わせて知識とスキルを磨き、将来の選択肢を広げましょう。

資格を取得して専門性を高める

臨床心理士の仕事を見つけられない状況を防ぐには、資格取得を通じて専門性を高めるのがおすすめです。
臨床心理士のスキルアップ・キャリアアップに役立つ資格には、公認心理師が挙げられます。

公認心理師は、2017年に誕生した比較的新しい資格ですが、国内唯一の心理系国家資格である信頼性から、さまざまな場所で活躍が可能です。
臨床心理士と公認心理師の資格をあわせて取得していれば、高い専門性を証明でき、就職・転職活動時のアドバンテージとなるでしょう。

さらに、積極的にセミナーや研修会へ参加するなど、常に最新の知識とスキルを身につけることも大切です。
継続的な学びが、臨床心理士としての質の向上につながります。

独立開業する

十分な経験やスキルが蓄積された段階の臨床心理士であれば、独立開業も考えられます。
独立開業の第一のメリットは、自由な働き方を選択できる点です。
自分の理想とする臨床心理サービスを提供するなかで、日々の仕事にもやりがいを感じられるでしょう。

また、カウンセリング料金も自分自身で決められるため、努力次第ではより高い年収を得られる可能性があります。
経営者の視点でやりたいことを実践しながら、定年を決めずに働き続けられ、就業先の規則などに縛られることもありません。

ただし、独立開業をめざすうえでは、臨床心理士のスキルだけでなく経営者としてのスキルも必要になります。
カウンセリングスキルやコミュニケーションスキルはもちろんのこと、営業、マーケティング、お金に関する知識も不可欠です。
着実にスキルアップしながら、独立開業に向けて計画的に準備を進めましょう。

臨床心理士の仕事自体はなくならない

臨床心理士の仕事がないといわれる要因には、求人数があまり多くないことや待遇面での課題が関係しています。
しかし、メンタルヘルスの重要性が高まる現代社会において、臨床心理士の需要は今後さらに増加していくでしょう。
AIでは代替できない人間的な判断力や共感力、個々のクライアントに寄り添うきめ細やかなサポートは、臨床心理士ならではの強みです。

一方で、臨床心理士の就職活動や就労継続にはには、専門性を高めながらキャリアを戦略的に構築していく姿勢が求められます。
公認心理師をはじめとした資格の取得や継続的な学習、兼業や独立開業など、社会のニーズを把握したうえでさまざまな選択肢を検討し、自分に合ったキャリアプランを見つけましょう。

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執筆者について

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