臨床検査技師と診療放射線技師はどちらも、医師の指示のもとで臨床検査を行う仕事です。
しかし、業務内容や求められる役割には違いがあり、入職後のギャップを防ぐためにもそれぞれの特徴を知っておく必要があります。
両者とも国家資格の取得が必須となるため、自分の適性に合わせてキャリアを検討しましょう。
本記事では、臨床検査技師と診療放射線技師の業務内容や就職先、資格の合格率、年収の違いを解説します。
それぞれの適性にも触れているため、今後のキャリアプランにお悩みの方は参考にしてみてください。
目次
臨床検査技師と診療放射線技師(レントゲン技師)の業務内容
臨床検査技師と診療放射線技師は似ているようで、求められる役割が異なります。
例えば、診療放射線技師が対応できるレントゲン撮影やCT撮影といった、X線を用いた検査を臨床検査技師は行えません。
なお、臨床検査技師や診療放射線技師と混同されやすい仕事に臨床工学技士もありますが、こちらは医療機器の操作だけでなくメンテナンスなどを担うのが特徴です。
臨床検査技師は検体検査と生体検査を行う
臨床検査技師の主な仕事は、病気や治療に関わる検体検査と生体検査を医師の監督下で実施することです。
検体検査とは、血液や髄液、尿、便、痰といった検体の検査を指し、そのなかには細胞検査や遺伝子検査なども含まれます。
生体検査とは、心電図・肺機能検査・脳波などで直接患者さんの身体を調べ、機能や状態を把握する検査のことです。
勤務先の例としては病院やクリニック、臨床検査センター、検診センター、製薬会社、治験関連機関などがあります。
診療放射線技師は放射線を用いた検査や治療を行う
診療放射線技師の主な仕事は、医師の指示のもと放射線を利用した画像診断や治療を実施することです。
放射線照射を行える職業は限られており、日本では医師と歯科医師、診療放射線技師のみに放射線を用いた検査が許可されています。
このため、レントゲン撮影やCT撮影、マンモグラフィを扱えるほか、先進的ながん治療である放射線治療を行える点も診療放射線技師の特徴です。
勤務先は病院やクリニック、医療機器メーカーのほか、電力会社、検査職など、放射線を扱う企業で働く場合もあります。
臨床検査技師・診療放射線技師になる難易度
以下3つの観点から、臨床検査技師・診療放射線技師になる難易度を比較してみましょう。
- 学校入学の偏差値
- 国家試験の合格率
- 就職の難易度
順に詳しく解説します。
学校入学の偏差値
学校入学の偏差値に関して、臨床検査技師・診療放射線技師ともに大きな差はありません。
大学は偏差値50以上、専門学校は偏差値40台後半〜50台の学力が求められます。
学校種別ごとの偏差値と学費は、下表のとおりです。
臨床検査技師 | 診療放射線技師 | |||
---|---|---|---|---|
偏差値 | 学費 | 偏差値 | 学費 | |
大学 | 50台〜60台 | 250万~600万円 | 50台〜60台 | 250万~600万円 |
専門学校 | 40台後半〜50台 | 250万〜350万円 | 40台後半〜50台 | 300万〜350万円 |
大学の学費は、両者ともに250万~600万円程度です。
専門学校の場合、臨床検査技師の学費が250~350万円であるのに対し、診療放射線技師は300万~350万円と少し高い相場となっています。
国家試験の合格率
直近5年間の国家試験の平均合格率は、臨床検査技師が約76%、診療放射線技師が約82%と、診療放射線技師のほうが若干合格率が高い状態です。
臨床検査技師 | 診療放射線技師 | |||
---|---|---|---|---|
全体 | 新卒者 | 全体 | 新卒者 | |
2019年 | 75.2% | 86.5% | 79.2% | 89.4% |
2020年 | 71.5% | 83.1% | 82.3% | 92.2% |
2021年 | 80.2% | 91.6% | 74.0% | 83.0% |
2022年 | 75.4% | 86.4% | 86.1% | 93.6% |
2023年 | 77.6% | 89.5% | 87.0% | 94.1% |
なお、国家試験の合格ラインは臨床検査技師、診療放射線技師ともに例年6割となっています。
就職の難易度
医療機器の進歩による自動化の影響から、臨床検査技師の将来性を不安視する声もあります。
しかし、2021年に医療法などを改正する法案が成立したことで、臨床検査技師の業務範囲が拡大されることとなり、チーム医療における役割も大きくなりました。
これから臨床検査技師をめざす方は、さらに活躍の場を広げるため、細胞検査士や超音波検査士などの高度な資格も取得すると、なお良いでしょう。
資格取得によって他職種への転職などの選択肢が増え、キャリアアップをめざせます。
診療放射線技師も臨床検査技師と同様に今後、より高い専門性を求められることが予想されるため、資格を取得し周囲との差別化を図ることが大切です。
診療放射線技師の認定資格には、X線CT認定技師や磁気共鳴(MR)専門技術者などがあります。
ただし、マンモグラフィ撮影においては女性の診療放射線技師のニーズがあるため、病院だけでなく健診センターやクリニックも選択肢に入れることで就職しやすくなるでしょう。
臨床検査技師と診療放射線技師ではどちらの年収が高い?
令和4年賃金構造基本統計調査によると、臨床検査技師の年収は5,089,200円、診療放射線技師は5,437,400円で、診療放射線技師のほうが収入は高いです。
診療放射線技師は臨床検査技師に比べて男性が多く、定年まで勤務する傾向にあるからだと考えられます。
勤務先によっては、残業が多く発生することもあるでしょう。
検査数が多い日や病院が混んでいる日などは残業が発生し、そのぶん残業代や夜勤手当を受け取ることが可能です。
臨床検査技師と診療放射線技師の適性
臨床検査技師も診療放射線技師も、正確性が求められる仕事です。
一方で、業務内容が異なることから、適性を見極めるポイントにも違いがあります。
臨床検査技師と診療放射線技師それぞれの適性と、両職種に共通する適性をチェックしてみましょう。
臨床検査技師
臨床検査技師は、手先が器用な方に向いている仕事です。
医療の現場では機械化が進んでいるものの、すべてを機械に頼るわけではなく、細かな作業などは技師の技術が必要になります。
例としては、病理標本や血液標本の作製、ピペットを使った業務などです。
また、採血では患者さんの腕などの細い血管へ適切に針を刺さなければなりません。
こうした細かな作業にも丁寧に向き合える、手先の器用さに自信がある方は、臨床検査技師の適性があるといえます。
診療放射線技師
診療放射線技師は、コミュニケーションスキルがある方に向いています。
患者さんは放射線を身体に当てることや、病気・けがに対する不安を抱いているケースも少なくありません。
検査や治療をする際には、患者さんの不安を取り除く声がけを行うとともに、相手の気持ちに寄り添って丁寧に説明をすることが大切です。
患者さんが少しでも前向きな気持ちになれるよう、思いやりを持ったコミュニケーションを心がけましょう。
臨床検査技師・診療放射線技師に共通する適性
臨床検査技師と診療放射線技師に共通して求められるのは、以下のスキルです。
- 学ぶことが好き
- チームプレーができる
医療業界は日々進歩しているため、臨床検査技師も診療放射線技師も、新しい知識や技術を習得するための継続的な勉強が必要です。
また、患者さんに対して最善の医療を提供するべく、医療現場では医師や看護師、その他の医療スタッフでチーム医療を行っています。
臨床検査技師や診療放射線技師もチームの一員であるため、それぞれの専門的な視点から情報共有をし、積極的にチームプレーに携わる力が求められるでしょう。
臨床検査技師と診療放射線技師の違いを理解して自分に合ったキャリア選択をしよう
臨床検査技師と診療放射線技師は、医師の指示のもと医療機器を用いて検査を行うという点では共通した職業です。
しかし、検体検査や生体検査を行う臨床検査技師に対し、診療放射線技師は放射線による検査や治療を主に担うため、実際には役割が異なります。
就職の難易度に大きな差はありませんが、より専門的な資格を追加取得しておくことで、活躍の幅が広がるでしょう。
両者の違いを理解したうえで、どのような形で医療に携わりたいかを今一度考え、自分に合ったキャリアを選択してください。