
看護師には4つの欠格事由が定められています。
看護師や看護師をめざしている人でも、欠格事由を詳しく知らないという人はいるのではないでしょうか。
この記事では、4つの欠格事由と該当した場合の対処法を解説しているため、普段から責任ある行動を意識するようになるでしょう。
看護師の欠格事由を知りたい方は、参考にしてみてください。
目次
看護師の欠格事由とは
欠格事由とは、看護師国家試験に合格した者が免許を与えられない理由のことです。
本来、国家試験に合格すれば看護師免許が交付されますが、何らかの事情によりそれが難しくなるケースがあります。
たとえば、犯罪行為や薬物などの問題が発覚した場合、身体的な事情で看護師業務を行うのが困難と判断された場合などです。
具体的な欠格事由について、次の項で解説します。
看護師の相対的欠格事由4つ
看護師の相対的欠格事由4つは、保健師助産師看護師法(保助看法)第9条に記載されています。
- 罰金以上の刑に処せられた場合
- 看護師業務に関し犯罪または不正の行為があった場合
- 心身の障害により看護師の業務を適正に行うことができない場合
- 麻薬・大麻・あへんの中毒者である場合
罰金以上の刑に処せられた場合
罰金以上の刑に処せられると欠格事由に該当します。
罰金以上の刑とは、罰金刑や禁固刑、懲役刑、死刑です。
罰金刑以上の実刑を受けると免許が与えられない可能性があるため注意が必要です。
交通違反や交通事故で、反則金や賠償金で対応するものは該当しませんが、人身事故等で刑法にかかるものは欠格事由になる可能性があります。
看護師業務に関し犯罪または不正の行為があった場合
看護師業務に関して、犯罪または不正行為があった場合も欠格事由に該当します。
仕事で患者さんの身体に触れる機会もあるため、「性犯罪」ととらえられるわいせつ行為には注意が必要です。
看護師の意図がなくても患者さんに「わいせつ行為」と勘違いされるケースも想定できます。
また、薬の打ち間違いなどの医療過誤は、業務上過失致死傷になり得るため、最善の注意を払わなければなりません。
心身の障害により看護師の業務を適正に行うことができない場合
心身の障害により看護師の業務を適正に行えない場合は、以下のとおりです。
平成13年7月13日発出の医政発第754号/医薬発第765号から引用します。
視覚、聴覚、音声機能若しくは言語機能又は精神の機能の障害により業務を適正に行うにあ
たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
引用:・障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律の施行について
心身の障害の有無は、医師の診断書によって確認が行われます。
麻薬・大麻・あへんの中毒者である場合
麻薬・大麻・あへんの中毒者は、欠格事由に該当します。
業務で麻薬を取り扱うことのある看護師は、その危険性も十分に把握していて然るべき立場です。
にも関わらず不正に使用する行為は、非常に問題のある行為としてとらえられます。
看護師が欠格事由に該当したらそのあとはどうなる?
欠格事由に該当したらどうなるのでしょうか。
看護学生と看護師にわけて解説します。
看護学生の場合
看護学生が欠格事由に該当しても、看護師国家試験を受験することは可能です。
国家試験に合格すると免許申請書の他に、健康診断に基づいた診断書、住民票の写しを提出し、看護師免許の申請を行います。
免許証の交付を判断するのは、厚生労働省です。
事実確認や審議などを経て、看護師免許の交付が決まります。
看護師の場合
看護師が欠格事由に該当すると、いずれかの処分がくだされます。
- 戒告
- 3年以内の業務停止
- 免許取り消し(免許剥奪)
戒告とは、過失や非行に対しての厳重注意です。
業務停止は、看護師として仕事ができなくなり、事犯の程度や悪質性にもよりますが、3ヵ月程度から最長3年となります。
免許取り消し(免許剥奪)は、看護師が受ける行政処分のなかで最も重たい処分です。
上記の処分を受けた場合、再び看護師として働くためには、看護師再教育研修を受けなければなりません。
研修は、都道府県知事の命令に基づき行われます。
再教育研修は、3種類で以下のとおりです。
- 集合研修
- 課題研修
- 個別研修
処分の重さによって研修期間が異なり、再教育に関わる手数料と登録申請手数料は以下表のとおりです。
区分 | 手数料 |
戒告処分を受けた看護師 | 7,850円 |
業務停止処分および免許取り消し処分後に手続きを経て看護師の再免許を受けようとする者 | 15,700円 |
再教育を修了した旨の登録申請 | 3,100円 |
看護師の欠格事由|絶対的と相対的とは
看護師の欠格事由には「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」の2つの言葉がありますが、意味の違いはありません。
以前は2つの言葉が存在していましたが、2001年7月の法改正で、絶対的欠格事由が相対的欠格事由に変更されました。
2001年7月以前まで、「絶対的欠格事由」と「相対的欠格事由」は以下のとおりでした。
第三条 【絶対的欠格事由】 目が見えない者、耳が聞こえない者又は口がきけない者には、免許を与えない。
第四条 【相対的欠格事由】 該当する者には、免許を与えないことがある。 第一号 精神病者
出典:欠格事由に関して
2001年に法改正された背景は、薬剤師国家試験に合格した聴覚障がいを持つ一人が、絶対的欠格事由によって免許の交付を却下されたことが始まりです。
その方が諦めず発言を続けたことによって、2001年7月に「障害者等に係る欠格事由の適正化等を図るための医師法等の一部を改正する法律」が施行され、絶対的から相対的へと変更になりました。
看護師の欠格事由について理解し、責任のある行動を
看護師が欠格事由に該当すると戒告や業務停止、最悪のケースでは免許取り消しとなります。
また、処分がくだされると、再び看護師として働くためには看護師再教育研修を受けなければなりません。
看護師として働き続けるために、4つの欠格事由を正しく理解して、普段から責任ある行動をとりましょう。