
糖尿病や高血圧をはじめとした、長期にわたる治療が必要な疾患を総称して「慢性疾患」と呼びます。
慢性疾患には多くの疾患が含まれているため、必要とされるケアが異なり、患者さんによって臨機応変な対応が求められます。
高齢化が進む日本では、多くの患者さんが慢性疾患を抱えながら生活しており、慢性疾患に対応できる看護師のニーズは高いといえるでしょう。
今回の記事では、慢性疾患看護専門看護師の役割や実際の活動内容について紹介していきます。
看護師のキャリアアップとして「慢性疾患看護専門看護師」の資格取得を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
慢性疾患看護専門看護師とは?
専門看護師には、全部で14の分野があります。
がん看護分野など具体的な疾患を対象とする分野とは異なり、慢性疾患看護分野では具体的な疾患が定められていないため、専門看護師の具体的な役割や活動内容をイメージできない方もいるのではないでしょうか。
2023年12月時点では、276名の慢性疾患看護専門看護師が登録されています。
まずは、慢性疾患看護専門看護師の役割や活動領域から解説していきます。
慢性疾患看護専門看護師の役割
慢性疾患看護専門看護師には、慢性疾患を患っている患者さんやそのご家族に対し、専門的な知識を使って必要なケアを総合的に判断し、質の高い看護を提供することで、症状に対する自己管理や在宅療養を支援する役割があります。
また、他にも以下のような役割を担っています。
- 他の看護師らから相談を受けてアドバイスをするなどのコンサルテーション活動
- 他スタッフへの教育活動
- 看護の質の向上をめざした研究活動
- 途切れない支援を継続するための他部門との連携や調整
活動領域
慢性疾患看護分野は対象とする疾患が幅広いことから、それぞれの慢性疾患看護専門看護師は、特に得意としている領域を「サブスペシャリティ」として持っています。
「サブスペシャリティ」には、循環器疾患、呼吸器疾患、糖尿病、腎臓病、神経難病などの領域があり、複数の「サブスペシャリティ」を持っている専門看護師もいます。
慢性疾患看護専門看護師の活動内容
慢性疾患看護専門看護師の主な活躍場所は、病院や訪問看護ステーションとなっているのが現状です。
8~9割の慢性疾患訪問看護師が病院や訪問看護ステーションに勤務しており、約1割が大学などの教育機関で勤務しています。
具体的な慢性疾患看護専門看護師の活動内容を見ていきましょう。
看護実践
慢性疾患看護専門看護師は外来や病棟で働きながら、患者さんに対して直接的に看護を実践します。
診療科や患者さんの背景によって必要な看護は異なりますが、以下のような事例があります。
- 患者さんへ食事や薬剤などの自己管理方法の指導
- 今後の治療方針に対する支援
- 退院する患者さんが自宅でも安心して生活できるよう自宅環境を調整するなど退院調整の実施
慢性疾患看護専門看護師について調査した研究では、慢性疾患看護専門看護師の活動内容の約半分が看護実践であったと報告されています。
慢性疾患看護専門看護師の多くが看護実践を行っていることがわかるでしょう。
院内・院外のケアシステムの構築
慢性疾患看護専門看護師は、院内や院外のケアシステムの構築にも関わります。
多くの患者さんは同じ病院に常に入院しているわけではなく、容態が安定したら自宅での生活に戻ったり、他の病院に転院したりと、その時々に異なる必要な療養環境へと移行します。
患者さんに対して切れ目のない支援を行うためには、医療従事者による情報共有やケアシステムの構築が必要です。
慢性疾患看護専門看護師は、退院支援システムの構築や運営支援、保健指導システムの導入、チーム医療の推進など、院内外のケアシステムの構築を行います。
看護職員に対する教育やサポート
慢性疾患看護専門看護師は、他の看護師に対する教育やサポートを行います。
看護師のカンファレンスに参加して、患者さんに対するケアの方向性をアドバイスしたり、専門知識をもとにして院内研修を実施したりする機会もあるでしょう。
慢性疾患看護専門看護師の活躍場所は、院内だけにはとどまりません。
大学の講師として学生を教育したり、実習を指導したりするなど、他の医療機関や教育機関と連携して看護師を育成するとともに、看護師のサポートを行います。
研究
慢性疾患看護専門看護師は、看護現場での活躍だけでなく研究活動も行います。
日々の看護実践のなかで生じた疑問を研究したり、大学との共同研究を行ったりすることもあるでしょう。
研究内容は論文として学会で発表するといった機会もあり、自分の功績として残せたり、看護の発展に貢献できたりします。
慢性疾患看護専門看護師は、今回紹介した活動内容を通して、患者さんへの質の高い看護の提供に関わります。
慢性疾患看護専門看護師になるには?
慢性疾患看護専門看護師になるには、公益社団法人日本看護協会が実施している認定審査に合格しなければいけません。
認定審査の受験資格として、以下の条件を満たすことが必要です。
- 看護系大学院に入学し、専門看護師の教育課程として必要な単位数を取得していること
- 看護師として実務研修を5年以上受けており、そのうち通算3年以上は慢性疾患の看護分野であること
看護系大学院であればどこでも良いわけではありません。
それぞれの大学院によって開講している教育課程が異なります。
めざす分野の教育課程がある看護系大学院を見つけることが重要です。
慢性疾患看護専門看護師の教育課程を開講している大学院は、全国に26カ所(2023年時点)しかありません。
慢性疾患看護専門看護師の資格取得を検討している場合は、早めに通える大学院を探しておきましょう。
専門看護師については、こちらの記事で紹介していますので、一緒に確認しておきましょう。

慢性疾患看護専門看護師へのキャリアアップを検討しよう
慢性疾患看護専門看護師は、慢性疾患を持ち病院や在宅で療養している幅広い患者さんを対象として、質の高い看護を提供します。
直接的なケアによる看護の提供だけではなく、看護師の育成や研究活動などを通して、看護の発展に貢献できるポジションです。
看護師のキャリアアップとして、慢性疾患看護専門看護師の資格を検討してみると良いでしょう。