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専門看護師の種類や役割は?仕事内容や認定看護師との違いも紹介

この記事の監修者
ゆみさと
ゆみさと
【資格】
看護師

【プロフィール】
岩手県立大学看護学部を卒業後、血液内科・乳腺外科混合病棟にて勤務し、その後、透析クリニックに転職。
現在、看護師として働きながら、医療関係を中心にライターとしても活動中。

看護師としてスキルアップした先の選択肢に、「専門看護師」という働き方があります。
専門看護師になることで、院外の医療スタッフと関わりながら患者さんをケアしたり、地域全体の看護の質を向上させたりと、より幅広い業務に携わることが可能です。

また、看護師の資格としては、専門看護師のほかに認定看護師もあります。
両者の違いを知り、自分の興味がある分野で活躍をめざしましょう。

本記事では、専門看護師の役割や種類、仕事内容、認定看護師との違いを解説します。

参考:専門看護師 | 看護職の皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会

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専門看護師とは?

専門看護師とは?

専門看護師(CNS:Certified Nurse Specialist)とは、特定の分野の知識・スキルに優れており、複雑な看護問題の解決や水準の高い看護ケアを実践できる看護師のことです。
日本看護協会が認定審査を行っており、2022年時点で3,155人の専門看護師が活躍しています。

専門看護師になるには、まず看護師として実績を積まなければなりません。
看護師の働き方について知りたい方は、以下の記事をご参照ください。

専門看護師の6つの役割

専門看護師は以下6つの役割を担い、地域や施設における看護の質の向上に貢献します。

■専門看護師の6つの役割

役割 内容
実践 患者さんやご家族、集団に対する優れた看護の実践
相談 患者さん・ご家族などのケア対象者や看護師に対する相談支援
調整 患者さんへ円滑にケアを提供するため、介護士やケアマネジャーなど 保健医療福祉に携わる職員との調整
倫理調整 患者さん本人・ご家族・集団の権利を守るため、倫理的問題や葛藤を解決
教育 看護者のケア向上をめざした教育
研究 専門知識・技術の向上や開発のため、現場で研究活動 の実施

これらの役割をふまえ、専門看護師は具体的に以下のような活動を行います。

  • 医療と介護の連携を図るべく相談窓口で対応を行うほか、ケアプランの作成やケアマネジャーの支援を行う
  • 治療方針決定の場に立ち合い、患者さんとご家族が納得して治療を進められるようカンファレンスや情報共有を通して他医療スタッフへ働きかける
  • 日々の看護を実践していくなかで見つけた課題を研究するとともに、その結果を現場へ還元することで看護の質を向上させる

専門看護師の種類一覧・特徴

日本看護協会が認定している専門看護分野は、全部で14分野です。

専門分野名 特徴
がん看護 がん患者やご家族が自分らしく生活できるよう、高水準の看護を実施する。
精神看護 精神疾患患者に対して高水準の看護を実施する。
一般病院では、リエゾンナースとして心のケアも行う。
地域看護 地域における保健医療福祉の発展へ貢献する。
老人看護 高齢者が利用する施設において、複雑な健康問題を抱える高齢者のQOL向上を目的として高水準の看護を実施する。
小児看護 子どもたちが健やかに成長できるように、他の医療スタッフと連携して療養生活をサポートしながら高水準の看護を実施する。
母性看護 周産期の母子・ご家族への支援、女性のライフステージに適したサポートを他職種と連携して行い、高水準のケアを実施する。
慢性疾患看護 患者さんが慢性疾患にうまく付き合いながら療養できるよう、疾患管理、健康増進、療養支援を通して高水準の看護を行う。
急性・重症患者看護 緊急度や重症度の高い患者さんに集中的な看護を実践しつつ、患者さん本人とご家族の支援、医療スタッフの調整も行う。
感染症看護 施設や地域における感染症予防と、発生時の適切な対策を行う。
感染症の患者さんに対して高水準の看護を実践する。
家族支援 患者さんやご家族を対象として、本来持つセルフケア機能を向上させ自分自身で問題解決ができるよう支援する。
在宅看護 在宅で療養する患者さんやご家族が安心して在宅療養を続けられるよう支援するとともに、在宅看護のケアシステム構築・既存ケアサービスとの連携促進を図る。
遺伝看護 患者さんの診断・予防・治療にともなう意思決定支援、QOL向上をめざした生涯にわたる療養生活支援を行う。
あらゆる世代が必要な医療・ケアを受けられる環境をめざすとともに、ゲノム医療の発展に貢献する。
災害看護 災害時に限られた人的・物的資源のなかでメンタルケアを含む看護を提供する。
減災・防災体制を確立させ、災害看護の発展に貢献する。
放射線看護 放射線がもたらす影響の特性をふまえ、放射線事故・災害体制を整えるとともに、健康課題を持つ対象者へ長期的な看護を行う。職業被ばく対策など施設における体制を構築する。

また、それぞれの専門分野における登録者数は以下のとおりです。

専門看護師の種類一覧・特徴

参照:専門看護師 | 看護職の皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会

がん看護に登録する専門看護師が1,036人と圧倒的に多く、次いで精神看護、急性・重症患者介護の登録者数が400人前後いるという状況です。

専門看護師の仕事内容

専門看護師の具体的な仕事内容は、専門分野によって異なります。
ここでは、専門看護分野のなかでも登録者数の多い「がん専門看護師」「精神看護専門看護師」「急性・重症患者看護専門看護師」の3分野の仕事内容を見てみましょう。

がん専門看護師

がんに罹患した患者さんは、治療方針を決断したり、がんによる症状や治療中の副作用に悩んだりと、精神的・身体的苦痛を感じる機会がしばしばあります。
がん専門看護師の役割は、がん看護に関する豊富な知識・スキルを活かして、患者さんやご家族が自分らしく生活できるよう看護を提供することです。

がん専門看護師の活動内容には、以下のようなものが挙げられます。

  • 疼痛や呼吸困難などがんによって出現する症状の緩和ケア
  • 吐き気や嘔吐、倦怠感など抗がん剤によって現れる副作用症状の緩和
  • ご家族に対するサポート
  • 今後の治療方針を決定するための情報提供、意思決定支援
  • 精神的苦痛に対する相談対応
  • 病棟カンファレンスへの参加
  • 看護研究の指導

精神看護専門看護師

リエゾンナースとも呼ばれる精神看護専門看護師は、複雑で心理社会的な問題や精神的問題を抱えた患者さんに対し、専門的な看護を提供します。
具体的な活動内容は以下のとおりです。

  • 精神的な不安を抱える患者さんやご家族の療養相談・生活環境調整
  • 不眠やせん妄、抑うつなどの精神的な症状が強い患者さんへの直接的ケア
  • 他医療スタッフへの連絡・調整
  • 看護職員など医療スタッフに対する精神的なサポート
  • 精神看護分野の研究活動サポート、院内教育の実施

急性・重症患者看護専門看護師

急性・重症患者看護専門看護師は、最善の医療を提供するべく他職種と協力体制を整えたり、直接的なケアを通して、緊急度や重症度の高い患者さんが早期に回復できるようサポートします。
具体的な活動内容の例は以下のとおりです。

  • 全身状態の安定化、苦痛緩和を目標とした看護ケア
  • 安全な早期離床や人工呼吸器離脱など、患者さんの早期回復をめざした看護計画の立案と実践
  • 患者さんやご家族に対する情報提供や相談に乗るなどの意思決定支援
  • 急性・重症患者のケア方法に関して他医療スタッフへアドバイス・提案
  • 呼吸ケアサポートチーム、せん妄チームといったチーム医療の促進

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専門看護師の勤務状況

専門看護師として働く場合、勤務条件はどのように変わる可能性があるのでしょうか。
専門看護師の勤務先や給与、管理職の割合を解説します。

勤務先割合

勤務先割合

参照:専門看護師 | 看護職の皆さまへ | 公益社団法人日本看護協会

公益社団法人日本看護協会によると、2022年の専門看護師の勤務先として最も多いのは病院で、77%の専門看護師が病院に勤めています。
なかでも、病床数が500以上の規模が大きい病院で働いている専門看護師が、6割を占めていました。

病院の次に多い勤務先は看護系教育機関で、専門看護師の10.9%が働いています。
「研究」や「教育」といった専門看護師の役割を果たすため、大学をはじめとした看護系教育研究機関で活躍する専門看護師も一定数いることがわかるでしょう。

給与

公益社団法人日本看護協会の報告書によると、専門看護師の給与は基本給月額331,456円、残業や手当なども含めた給与総月額が435,291円です。
2022年度の看護師の平均給与は、基本給月額が318,000円、給与総月額が351,600円であることから、専門看護師のほうが給与は高い傾向にあることがわかります。

一方で、専門看護師資格取得による昇給などの処遇評価を実施していない勤務先は87.3%と、大多数を占めていました。
後述しますが、専門看護師は管理職割合が多いことから、専門看護師の資格取得によって給与が上がったわけではなく、管理職に昇格したことで給与が上がったと考えられます。

管理職の割合

専門看護師の5割以上が、管理職として活躍しています。
なかでも看護主任や看護師長などの中間管理職をしている専門看護師の割合が43.1%、看護部長や副院長などの管理職をしている割合は8.1%でした。

看護師の管理職では、スタッフへの指導や他部署との調整業務、マネジメント業務を行う必要があります。
専門看護師のスキルを活かすことで、管理職として活躍できる可能性があるでしょう。

専門看護師になるメリット

専門看護師になるメリットには、大きく以下2つが挙げられます。

  • 質の高い看護の提供に貢献できる
    専門看護師になることで、患者さんに対して質の高い看護を直接提供できます。
    同時に、他スタッフへの教育や他職種との連携・調整を積極的に進める役割も担うため、医療チーム全体に対して水準の高い医療の提供を働きかけることも可能です。

結果として、患者さんに対してより良い医療が提供できるようになるでしょう。

  • 院内外へ活動の幅を広げられる
    専門看護師は、人脈を広げられる機会が多くあります。
    所属している部署だけでなく他部署にも働きかけたり、退院支援を通して院外の医療関係者とコミュニケーションを取ったりする場面があるためです。

ときには専門分野のセミナーや講演会に呼ばれるなど、院外にも活躍の場を広げられます。

専門看護師と認定看護師の違い

日本看護協会で認定されている資格には、専門看護師のほか認定看護師もあります。
専門看護師と認定看護師のどちらを取得しようか、迷う方もいるのではないでしょうか。

専門看護師と認定看護師は、「専門分野」と「求められる役割」の2点で違いがあります。
両者の違いを理解したうえで、自分のめざしたい道を見極めましょう。

認定看護師について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

専門分野が異なる

認定看護師と専門看護師では、以下のように専門分野が異なります。

専門看護師 認定看護師
がん看護
精神看護
地域看護
老人看護
小児看護
母性看護
慢性疾患看護
急性・重症患者看護
感染症看護
家族支援
在宅看護
遺伝看護
災害看護
放射線看護
クリティカルケア
緩和ケア
がん薬物療法看護
在宅ケア
生殖看護
腎不全看護
摂食嚥下障害看護
小児プライマリケア
脳卒中看護
呼吸器疾患看護
心不全看護
皮膚・排泄ケア
感染管理
糖尿病看護
新生児集中ケア
手術看護
乳がん看護
認知症看護
がん放射線療法看護

がん看護を例に挙げて比較してみましょう。
専門看護師の専門分野は「がん看護」のみであるのに対し、認定看護師は「がん薬物療法看護」「乳がん看護」「がん放射線療法看護」の3分野があります。
傾向として、認定看護師の分野のほうが細かく分かれているといえるでしょう。

自分自身がどの分野に興味があるのかをふまえて、取得する資格を検討してみてください。

求められる役割が異なる

専門看護師と認定看護師は、求められる役割や支援対象が異なります。
認定看護師に求められる役割は、「実践」「指導」「相談」の3つです。
これに対して、専門看護師は先述したとおり「実践」「相談」「調整」「倫理調整」「教育」「研究」の6つの役割が求められます。

現場での実践に重きを置く認定看護師と比較すると、専門看護師は研究や調整など医療チーム全体への働きかけをはじめ、看護学分野の進歩への貢献も期待されるのが特徴です。

専門看護師になる方法

専門看護師になるまでのルートは、下図のようになります。

専門看護師になる方法

専門看護師になるためには、一定期間の実務研修とともに大学院での教育課程を修了し、日本看護協会が実施している認定審査を受けて合格する必要があります。
専門看護師認定審査の受験資格と試験の概要をチェックしてみましょう。

認定審査の受験資格

認定審査を受けるには、受験資格を満たしていなければいけません。

<認定審査の受験資格>

  • 日本の看護師資格を持っている
  • 実務研修が5年以上あり、そのうち3年間が専門看護分野の研修であること
  • 日本看護系大学協議会が定めている専門看護師教育課程基準の単位を(総計26単位または38単位)有しており、看護系大学院修士課程を修了していること

受験資格からもわかるように、専門看護師の資格は思い立ってすぐに取得できるわけではなく、一定の経験とスキルが必要になります。
専門看護師の資格取得を検討している場合は、実務研修を積むことから始めなければいけません。
まずは日本看護協会のサイトから、取得したい分野での実務研修の内容を確認しましょう。

また、専門看護師用の教育コースを用意している大学院は、2023年度時点で107校ありますが、大学院によって用意しているコースはさまざまです。
そのなかから、自身がめざしたい専門分野のコースを開講している大学院を探す必要があります。

専門看護師の認定審査

専門看護師の認定試験は、書類審査と筆記試験の2つの項目があります。
書類審査では、「認定審査審査書類確認用紙」「履修単位自己申告書」「修士課程修了証書の写し」など、受験資格を満たした人物であることを証明する書類が必要です。
提出書類は複数あるため、漏れのないよう入念に確認しましょう。

筆記試験の試験時間は120分となっており、事例問題と総合問題で構成されています。

出題方式 点数
事例問題 100点
総合問題 100点

全部で200点満点で、結果は「A」「B」「C」の3段階評価です。
「A」「B」の評価である7割以上の点数が取れれば合格となります。

5年ごとに更新が必要

専門看護師となったあとも、高い水準の看護を提供するにあたって一定のレベルを保持した状態であることが求められます。
このため一度取得すれば永久に有効な看護師資格とは異なり、専門看護師の資格は5年ごとに更新しなければいけません。

更新審査では、直近の過去5年間において、日本看護協会が定めている看護実績や研究の業績などを証明する必要があります。

<更新審査条件>

  • 日本の看護師資格を持っていること
  • 看護師として働いた時間が2,000時間以上であること
  • 学会の発表・参加や大学での講師経験など、研修実績・研究業績を合わせて100点以上取得していること

専門看護師は特定領域で活躍できる

専門看護師の資格を取得することで、他医療スタッフと関わりながら患者さんに質の高い医療を提供できるようになります。
専門看護のなかにもがん看護や精神看護、地域看護など14の分野があり、いずれも高い専門性を活かして活躍が可能です。

看護師として働くなかで「一つの分野を深めていきたい」「専門的なスキルが欲しい」と感じている方は、専門看護師の資格取得を前向きに考えてみると良いでしょう。

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執筆者について

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