
理学療法士の離職率は、医療分野と介護福祉分野で異なります。
理学療法士をめざす場合、分野別の離職率を知ることで、どのような分野で働くかの参考になります。
本記事では理学療法士の離職率を分野別に紹介するとともに、看護師や介護士など医療福祉分野の職種との比較もするので、理学療法士の離職率に関して理解を深めて、就職活動の参考にしましょう。
目次
【分野別】理学療法士の離職率
理学療法士の離職率は医療分野と介護分野で異なります。
ここでは医療分野と介護福祉分野に分けて、具体的な離職率を紹介します。
医療分野の離職率
厚生労働省の調査(公益社団法人日本理学療法士協会の「2016年(平成28年)医療従事者の需給に関する検討会」)によると、理学療法士の医療分野における離職率は10.2%です。
医療分野でも、より詳細な病期別の離職率を以下に示します。
病期 | 離職率 |
高度急性期 | 6.8% |
急性期 | 9.4% |
回復期 | 10.7% |
慢性期 | 12.6% |
医療全体平均 | 10.2% |
病期が長い施設になるほど、離職率は高くなる傾向があります。
病期が短い高度急性期は6.8%と低い離職率なのに対して、病期が長い慢性期は倍の12.6%です。
理学療法士の会員数が多い急性期や回復期は、10%前後と全体の離職率とほとんど同じ値になっています。
介護福祉分野の離職率
前出の調査(公益社団法人日本理学療法士協会の「2016年(平成28年)医療従事者の需給に関する検討会」)を参考にすると、理学療法士の介護福祉分野における離職率は18.8%です。
さらに介護福祉分野のサービス種別ごとの離職率を以下に示します。
サービス種別 | 離職率 |
介護老人保健施設 | 20.5% |
訪問リハ | 37.4% |
訪問看護 | 17.3% |
通所リハ | 19% |
通所介護 | 19.6% |
特別養護老人ホーム | 9% |
その他 | 20% |
介護全体平均 | 18.8% |
介護福祉分野は特別養護老人ホームを除き、どのサービスも医療分野より高い離職率となっています。
訪問リハビリテーションは非常に高い数値になっていますが、調査人数が少ないため参考程度に留めてください。
訪問リハビリテーション以外はどのサービスも17%以上で、訪問看護が若干低いものの、他のサービスは20%前後の離職率です。
理学療法士と他産業の離職率を比較
理学療法士の離職率について理解を深めるため、令和4年雇用動向調査を参考に他産業の離職率と比較します。
看護師や介護職など、他の医療・福祉分野の職種とも比較するので参考にしてください。
理学療法士の離職率は他産業と比較して高くも低くもない
厚生労働省の令和4年雇用動向調査によると産業全体の離職率は15.0%です。
理学療法士の離職率は医療分野で10.2%、介護福祉分野で18.8%なので、医療分野の離職率は産業全体の離職率に比べて低く、介護分野では産業全体の離職率より高くなっています。
理学療法士の離職率と産業ごとの離職率を比較するために、産業別の離職率を以下に示しました。
産業の種類 | 離職率 |
鉱業、採石業、砂利採取業 | 6.3% |
建設業 | 10.5% |
製造業 | 10.2% |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 10.7% |
情報通信業 | 11.9% |
運輸業、郵便業 | 12.3% |
卸売業、小売業 | 14.6% |
金融業、保険業 | 8.3% |
不動産業、物品賃貸業 | 13.8% |
学術研究、専門・技術サービス業 | 10.0% |
宿泊業、飲食サービス業 | 26.8% |
生活関連サービス業、娯楽業 | 18.7% |
教育、学習支援業 | 15.2% |
医療、福祉 | 15.3% |
複合サービス事業 | 11.0% |
宿泊業・飲食業の離職率は26.8%と介護分野より高いですが、他産業は低くなっています。
医療分野と比較すると、離職率が10%以下である「鉱業、採石業、砂利採取業」「金融業、保険業」「学術研究、専門・技術サービス業」以外の職種よりも離職率が低いです。
以上から理学療法士の離職率は一概に高いとはいえませんが、介護福祉分野では他産業よりも離職率が高いことがわかります。
理学療法士と医療・福祉分野の比較
厚生労働省による令和4年雇用動向調査結果の概況によると、医療・福祉分野全体の離職率は15.3%です。
理学療法士の離職率と比較すると、医療分野は医療・福祉分野全体より離職率が低く、介護福祉分野は離職率が高くなっています。
下表は、医療・福祉分野の理学療法士以外の職種の離職率です。
職種 | 離職率 |
看護職員 | 11.6% |
訪問介護員 | 13.3% |
介護職員 (訪問介護以外の事業所で働く介護職員) |
14.9% |
参考:令和4年度「介護労働実態調査」結果の概要について|公益財団法人介護労働安定センター
看護師や介護職員と比較すると、介護福祉分野で働く理学療法士の離職率は高いことがわかります。
反対に医療分野の理学療法士はどの職種よりも離職率が低いです。
理学療法士の離職率は医療分野と介護福祉分野で異なる
理学療法士の離職率は医療分野と介護福祉分野で差があります。
医療分野は他職種より離職率が低く、介護福祉分野は他職種よりも離職率が高いです。
理学療法士の離職率を職場別に調べたデータもあり、医療分野では病期別、介護福祉分野ではサービス種別によって離職率が違うことがわかります。
本記事で示したデータを参考にしながら、理学療法士として働く場所を検討してみてはいかがでしょうか。