
「管理栄養士は離職率が高い」という噂を聞き、不安に感じている方もいるかもしれません。
一概にはいえませんが、管理栄養士の離職率は高い傾向にあり、どの分野でも人手不足にあります。
本記事では、管理栄養士の離職率を推測するのに役立つデータと、管理栄養士が離職を選択しがちな理由、そして辞めたいと思ったときの対処法について解説します。
管理栄養士として働きたい方は、キャリアプランの参考にしてみてください。
目次
管理栄養士の離職率は高い?
管理栄養士の具体的な離職率を示すデータはありませんが、管理栄養士・栄養士の主な就職先である「宿泊業・飲食サービス業」「医療・福祉」の離職率を見ると、それぞれ26.8%、15.3%でした。
出典:-令和4年雇用動向調査結果の概況-
管理栄養士の離職率とは直結しないものの、「宿泊業・飲食サービス業」の分類で見ると他職種よりもかなり高い傾向が見られます。
管理栄養士養成課程卒業者の就業動向では、栄養士職の離職率は高く、とくに3年目の在職率が低いと述べています。
また、厚生労働省が発表する令和4年度の管理栄養士の有効求人倍率は2.47倍でした。
令和5年厚生労働省「労働経済動向調査」では、栄養士が働くことの多い職場の医療福祉、飲食サービス業で正社員、パート・アルバイトともに労働者が不足しているなど、全体として人手不足の傾向にあることもわかります。
こうした状況から、管理栄養士は離職率が比較的高く、かつ人手不足の傾向にあると考えられます。
なお、上記の結果をみると「そもそも管理栄養士が減っているのでは?」と思うかもしれません。
しかし、管理栄養士国家試験の合格者は第37回(令和5年)で9,254人であり、前年は10,692人、その前は10,292人です。
今年度に限っては減少傾向ですが、年々減少しているというわけではなく、例年一定の合格者が出ています。
つまり、管理栄養士の資格取得者は、増加していると考えられます。
管理栄養士の主な離職の理由
管理栄養士の主な退職理由は以下のとおりです。
- 仕事量が多く責任がある
- 労働環境が厳しい
- 人間関係に不満がある
- 休日出勤がある
順を追って、詳しく理由を解説します。
仕事量が多く責任がある
管理栄養士の仕事は、栄養バランスに配慮した献立作成や調理業務、栄養管理です。
そのほか、配膳や盛り付けも行います。
管理栄養士が働く病院や保育所・学校などの給食サービス業では、人手不足の職場が多いため、栄養士以外の業務も担当しなければいけません。
仕事の幅が広いだけではなく、その仕事量も多い傾向です。
また、幼児や学生、患者さんなどが食事を摂れているのか、食中毒などの観点は大丈夫かなど、注意を払う必要があります。
調理や盛り付け、配膳などの身体的な負担と、栄養管理や衛生管理の責任を負う精神的な負担が伴います。
よって管理栄養士の仕事は、仕事量が多く、大きな責任があるのです。
労働環境が厳しい
上記でも触れたとおり、管理栄養士が働く職場は人手が不足しているため、それを補うために残業をするなど労働環境が厳しいことも離職理由の一つです。
管理栄養士が調理を担当している病院や高齢者施設、保育園では、朝6時頃から出勤して調理をするケースもあります。
早朝に出勤しても、夜勤と扱いが異なり、早朝手当はほとんど出ません。
またスポーツクラブでは早番の6時30分ごろから勤務し、最終退勤時間の23時ごろまで働きます。
日勤帯で働く一般企業では1日1〜3時間残業しても、残業手当が不十分な職場もあります。
このように、人手不足により早朝勤務や過重労働で、労働環境が厳しい現状です。
人間関係に不満がある
管理栄養士は、調理を監督する立場やチームをまとめる役を担い、個人ではなくチームで協力しあって業務をこなす必要があります。
そのなかで自分より年上の人に指示をする場面や、好まれない業務も割り振りしなくてはいけない場合もあるでしょう。
プライドが高い人や、自分のやり方を曲げない人、周囲の輪を乱してしまう人もいます。
そこで人間関係が悪化したり、いじめやハラスメントに発展してしまったりなど、少なからずトラブルが起きる可能性もあります。
人間関係やいじめ、ハラスメントで精神的に病んでしまい、離職する原因になるのです。
休日出勤がある
職場によっては、管理栄養士は土日祝日の出勤があります。
病院や介護施設では、患者や利用者に1日3食365日食事を提供しなければいけないため、土日祝日関係なく働きます。
そのため、連休をとりづらかったりと、しっかりと休む時間を確保することが難しい場合があるのです。
なお、保育園はお盆や年末年始が長期休暇に設定されていることが多く、一般企業は土日祝日が休みであり、有給休暇や長期休暇も確保できます。
土日祝日やまとまった休みを家族と過ごしたい方は、保育園や一般企業で働くのも選択肢の一つです。
働き続けられる環境で管理栄養士を続けよう
管理栄養士は離職率が高いと聞き、「過酷な環境なのでは」と不安に感じる方もいるかもしれません。
実際に大変な仕事ではあるものの、本記事で紹介したとおり、離職の理由はさまざまであり、自分に合った職場を見つけられれば働き続けることが可能です。
管理栄養士として長く働き続けるためには、自分のスキルやライフスタイルにマッチする職場を選ぶことが重要です。
環境や条件をしっかりと見極め、長く働ける職場を見つけていきましょう。