
医療の現場で働いているけれど、できればワクチンを拒否したいと考えている方もいるでしょう。
さまざまな理由からワクチンを打ちたくないけれど、「医療従事者がワクチン接種しないなんてありえない」と思われるのではないかと、不安に感じることもあるかもしれません。
この記事では、医療従事者でもワクチンを拒否できるのかや、ワクチンの接種状況などを解説します。
ワクチンを打つかどうか迷っている方はぜひ参考にしてください。
目次
医療従事者でもワクチンの拒否はできる
そもそも医療従事者はワクチン接種の拒否が可能なのでしょうか。
ワクチンを受けないことを理由に職場を解雇されたり、差別を受けることはないのか、不安視されがちな点について解説します。
医療従事者であってもワクチンは「努力義務」
日本では2021年2月から7月にかけて、医療従事者が一般の人よりも優先的に新型コロナウイルスワクチンを接種できる 状況にありました。
そのため、医療従事者は必ずワクチンを接種しなければいけないと思った方もいるかもしれません。
実は、厚生労働省から発表された文書にあるとおり、医療従事者に限らずワクチン接種はあくまでも「努力義務」 であり、強制的なものではありません。
つまり、医療従事者でもワクチンの拒否が認められています。
「解雇」は原則としてできない
医療従事者がワクチンを接種していないと、仕事を続けられないのではないかと心配な方もいるかもしれません。
しかし結論からいうと、ワクチン接種していないことを理由に解雇は原則としてできません。
厚生労働省も新型コロナウイルスに関するQ&Aにて、ワクチン接種の拒否のみを理由とした解雇や雇い止めは許されないと明言 しています。
ワクチンを打たなくても、医療従事者としての仕事を失うことはありませんので安心してください。
ワクチン接種していない人の差別は法律で禁止されている
新型コロナウイルスの流行を機に「新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律」が改正され、ワクチン接種していない人への差別は法律で禁止 されました。
そのため、ワクチンを接種していないことによる差別を心配する必要はありません。
もしも職場の人や身近な人からワクチン接種を強制されそうになったときは、この記事の後半で解説する厚生労働省の相談窓口などへ相談しましょう。
ワクチン接種を拒否する理由は?
ワクチン接種をするのにも、拒否するのにも、人それぞれ事情や理由があります。
いざというときにワクチン接種を拒否する理由をきちんと説明できると、周囲から理解を得やすいでしょう。
ここではワクチン拒否の理由として多いものを3つ紹介しますので、参考にしてください。
副反応・アナフィラキシーショックが怖い
ワクチン接種による副反応が怖い人は少なくありません。
新型コロナウイルスのワクチンでは、発熱や倦怠感、頭痛などの副反応が報告されています。
副反応の程度は人によりますが、身近な人の話や報道で重い副反応があった人もいると知り、ワクチン接種に恐怖心を持っている方もいるでしょう。
また、ワクチンに含まれる卵などの成分でアナフィラキシーが疑われる症状が見られた報告もあります。
そのため、新型コロナウイルスワクチンの成分に対してアナフィラキシーの既往症がある人には厚生労働省も接種をすすめていません。
持病
厚生労働省の新型コロナウイルスワクチンQ&A によれば、アレルギーがある場合以外にも、免疫不全と診断されたことがある人、心臓や腎臓などに基礎疾患がある人は、ワクチン接種に際して配慮が必要とされています。
これらに当てはまる人はワクチン接種ができないわけではありませんが、病状が良くないときなどを避け、体調が良いときのワクチン接種がすすめられています。
このように特定の持病があると、ワクチン接種は慎重に進める必要があります。
そのため、ワクチン接種に不安を感じたり、できればワクチンを拒否したいと考えたりするのもしかたがないでしょう。
明らかなデータが揃っていないから
新型コロナウイルスワクチンの開発は急ピッチで進められました。
その結果、ウイルスが発見されてからたった一年あまりでワクチンが実用化されたのですが、その分、他のワクチンなどと比較するとデータが十分に揃っているとはいえません。
通常、ワクチンは何度も治験を行い、長い目で見て人体に影響がないかを確認するデータが入手できてから市場に投入されます。
しかし、新型コロナウイルスワクチンの場合は開発されてから間もないため、長期にわたるデータはありません。
このように客観的なデータが十分でないこともワクチンを拒否する人がいる理由です。
医療従事者のワクチン接種率は?
ワクチン接種を拒否したいと考えている方にとって、他の医療従事者がワクチンを打ったのかどうかは気になるところでしょう。
医療従事者がワクチンを接種した理由や、もしもワクチン接種を強制されそうになったらどうしたら良いのかも解説します。
医師・看護師の約90%が2回接種済み
厚生労働省のデータ によると、2021年6月末時点で医療従事者のワクチン2回接種率は90%に届いています。
同時点での日本全体の接種率は10%前後 であり、2022年6月15日時点でも全体の76.12%にとどまっていることを考えると、高い割合であると言えるでしょう。
「受けないといけない雰囲気」がある
ワクチンを受けないといけない雰囲気が職場にあるため、「ワクチンを受けない」と言いにくいと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
医療従事者のワクチン接種率の高さを考えると、そう感じるのもやむを得ないかもしれません。
しかし、繰り返しになりますが、ワクチンを打つのは強制ではありません。
ワクチン接種は自分自身の健康に関する問題のため、慎重に判断しましょう。
もしもワクチンの拒否が職場で理解を得られない場合は、次の項目も参考にしてください。
「ワクハラ」厚生労働省には相談窓口があるため活用しよう
ワクチン接種する・しないはあくまでも個人の意思に任されており、誰であってもワクチン接種を強制できません。
もしも職場などでの立場を利用してワクチンを強制した場合、ハラスメントの一種であるワクチン・ハラスメント、いわゆるワクハラに該当することもあります。
ワクチンを拒否したことを起因とする職場のいじめや嫌がらせに対しては、厚生労働省で専用の相談窓口 を設けています。
また、法務省の人権相談窓口でも新型コロナウイルスに関連した差別などに関する相談が可能です 。
ワクチンを拒否したことでワクハラを受けたと感じたときは、上記の相談窓口を活用しましょう。
参考:アメリカでは「仕事を失ってでもワクチンを打たない」と拒否する声も
日本以外にもワクチン接種を拒否する医療従事者がいます。
アメリカ・テキサス州では、ワクチンを拒否して仕事を失った看護師のグループが同州で最大規模の医療機関を相手に訴訟を起こした例 があります。
自分と同じようにワクチンを拒否した医療従事者が世界中にいる事実に勇気付けられる方もいるのではないでしょうか。
ワクチンは強制ではない。医療従事者も自分の気持ちを大切にしよう
ワクチンが強制ではなく、努力義務に過ぎないことは厚生労働省からも発表されています。
医療従事者のワクチン接種率が高い ため、ワクチンを拒否したいと伝えるには勇気がいるかもしれません。
しかし、医療従事者であっても大切なのは自分の気持ちです。
ワクチンを拒否したい理由を伝えても理解が得られない場合は、「ワクハラ」の相談窓口に相談する方法もあります。
自分の気持ちを大切に、悔いの残らない選択をしましょう。