仕事とプライベートのどちらもを大切にし、双方に良い影響を与え合うことを「ワークライフバランス」といいます。
働き方改革を推進する企業の増加とともに、ワークライフバランスは広く認知されるようになりました。
この考え方を実現するべく転職する人がいる一方で、個々のワークライフバランスの目標は多岐にわたります。
自分に最適な働き方を見つけるためには、企業の見つけ方や転職時の注意点を把握しておくことが重要です。
本記事では、ワークライフバランス重視の転職における企業の見つけ方や注意点、おすすめの仕事などを紹介します。
目次
ワークライフバランスが取れる転職先企業の見つけ方
ワークライフバランスが取れる転職先を探す際には、以下の4点を念頭に置いておきましょう。
- 認定マーク取得企業かどうかをチェックする
- 企業の評価を調査する
- 福利厚生や勤務形態を確認する
- 転職サイトやエージェントを活用する
それぞれのポイントを詳しく解説します。
認定マーク取得企業かどうかをチェックする
ワークライフバランスを大切にできる転職先を見つけるには、認定マーク取得企業かどうかをチェックしましょう。
ワークライフバランスに関する優れた取り組みを行っている企業には、各省庁が認定マークを授与しています。
主な認定制度は、次のとおりです。
- 安全衛生優良企業認定(ホワイトマーク)
- 健康経営優良法人認定 (ホワイト500・ブライト500)
- ユースエール認定
- くるみん・プラチナくるみん・トライくるみん認定
- えるぼし認定
例えば「くるみん認定」は、従業員の子育てサポートを行っている企業を認定する制度です。
くるみん・トライくるみん認定企業のなかで、高水準の支援が評価されると「プラチナくるみん」を取得できる場合があるため、あわせて確認してみると良いでしょう。
企業の評価を調査する
転職先を選ぶ指標として、候補企業の評価を口コミやSNSで確認する方法もあります。
現在勤めている従業員や過去にその企業を辞めた人の意見は、ワークライフバランスが実現できるかどうかの重要な判断材料になるでしょう。
ただし、口コミサイトの内容には偏りがある場合があります。
各サイトに記載されている残業時間や有給消化率、福利厚生の詳細などをチェックしつつ、総合的な観点から判断することが重要です。
福利厚生や勤務形態を確認する
ワークライフバランスを実現できる企業を見極めるためには、福利厚生や勤務形態の確認も必要になります。
育児休暇・産前産後休暇・介護休暇などの休業制度が整っていれば、育児や介護とのバランスが保ちやすいでしょう。
ワークライフバランスを重視する企業が実施している制度として、ほかにも以下のようなものがあります。
- フレックスタイム制
- 時短勤務
- リモートワーク
- リフレッシュ休暇
- 企業内の保育施設設置
これらの制度が導入されている企業であれば、出産やご家族の介護で生活スタイルが変化しても、ワークライフバランスを取りながら働きやすいでしょう。
転職サイトやエージェントを活用する
転職サイトや転職エージェントの活用もおすすめです。
これらを使うことで企業の情報収集がスムーズにでき、転職活動を一人で進めるより負担が軽減されます。
また、転職サイトやエージェントには、さまざまな企業・業界の内部事情に詳しいアドバイザーが在籍しているのが特徴です。
アドバイザーの豊富な情報をもとに、ワークライフバランスが保ちやすい企業を客観的に判断し、アドバイスをもらえるでしょう。
転職サイトやエージェントは非公開求人も保有しており、自分に最適な企業を紹介してもらえる可能性もあります。
ワークライフバランスを重視した転職のメリット
ワークライフバランスを重視した転職の大きなメリットは、以下の3つです。
- 仕事の生産性が向上する
- ご家族との時間や趣味の時間が増える
- スキルアップやの時間が作れる
ワークライフバランスが整うと、仕事と休日のメリハリがつき、生活水準が向上します。
その結果、健康的な生活ができるため、仕事の効率化につながって生産性アップが期待できるでしょう。
仕事の質が向上すると、残業が減少し、定時に帰りやすくなる点もメリットです。
ご家族との時間や趣味の時間が増やせるため、心に余裕が生まれやすくなります。
さらに、隙間時間を読書や資格取得のための学習などにあてられるようになり、スキルアップもめざせるでしょう。
ワークライフバランス重視で転職する際におすすめの仕事
ワークライフバランス実現のため転職する際に、おすすめの業界・職種を紹介します。
未経験の仕事にチャレンジしてみたい方や自分のやりたいことが見つかっていない方は、ここで紹介する業界・職種も候補に入れてみましょう。
ワークライフバランスを取りやすい業界
ワークライフバランスを取りやすい業界として、以下4つが挙げられます。
- 大手メーカー
- 金融業界
- Web業界
- 医薬品業界
業界ごとの特徴を見ていきましょう。
大手メーカー
ファッション・アパレル・食品・医療機器などを製造し販売するメーカーは、ワークライフバランスに注力している傾向にあります。
特に、多くの従業員を抱える大手メーカーでは、業務が細分化されているため、仕事の負担が比較的少ないと考えられるでしょう。
上述したホワイトマークやくるみん認定などを取得している企業も多く存在し、ワークライフバランスを維持しやすいといえます。
金融業界
ワークライフバランスを重視した転職であれば、金融業界も選択肢の一つです。
銀行・証券会社・保険会社・クレジットカード会社などが該当します。
金融業界は休日がきちんと設けられており、有給休暇や連続休暇などを取得しやすいことが特徴です。
また、福利厚生が充実した企業も珍しくなく、残業や休日出勤の抑制にも積極的な場合があるでしょう。
Web業界
ワークライフバランスが実現しやすい転職先として、Web業界も挙げられます。
Web業界とは、インターネットを通じて顧客にサービスを提供する業界のことで、サイト制作やシステム・アプリ開発、広告運用代行などが主な仕事です。
テレワークやフレックスタイムを導入している企業も多く、決まった時間に出勤せずとも仕事ができるような自由な働き方が叶います。
こうした転職先であれば、仕事とプライベートの時間を柔軟にコントロールでき、ワークライフバランスを保ちやすいでしょう。
医薬品業界
医薬品業界も、ワークライフバランスを取りやすい業界の一つです。
企業が行っている取り組み例として、従業員が始業・就業時間を決定できるスーパーフレックス制度の導入やベビーシッター派遣会社との契約、休暇制度の充実などがあります。
これらの制度が整った職場であれば、仕事と生活のバランスが取りやすく、労働環境に満足しながら働ける可能性があるでしょう。
ワークライフバランスを取りやすい職種
ワークライフバランスを取りやすい職種には、以下が挙げられます。
- 事務職
- 社内SE
- コールセンター・カスタマーサポートスタッフ
- 美容関連職
自身の経験やスキル、興味に合った職業を見つける際の参考にしてみてください。
事務職
事務職は残業が比較的少なく、ワークライフバランスを取りやすい職種といえます。
営業事務や医療事務、貿易・経理・秘書など、データ入力をはじめとして資料作成、電話応対まで社内のサポート役を担う仕事です。
職場によっても仕事内容はまちまちですが、定型的な業務が多く残業が少ない傾向であることから、プライベートな時間を確保しやすい可能性があります。
社内SE
ワークライフバランス重視の転職には、社内SEもおすすめです。
社内SEは、自社のシステム開発やネットワークの管理・保守、システムの使い方に関する問い合わせ対応などを担当する職種です。
自社のミッションに取り組む社内SEは、クライアントと取引のあるシステム開発のSEと比較すると、スケジュール調整がしやすく精神的なプレッシャーも少ない傾向にあります。
また、パソコンがあれば仕事場所を選ばないため、ワークライフバランスを保ちやすいでしょう。
コールセンター・カスタマーサポートスタッフ
コールセンターやカスタマーサポートのスタッフも、仕事とプライベートが両立しやすい職種の一つです。
電話を通じた顧客からの注文や問い合わせ、サポートなどが主な業務となります。
近年では「在宅型のコールセンタースタッフ」という働き方ができる場合もあり、転職先に導入されていれば通勤の必要がありません。
残業がないケースが多く、定時に帰りやすい点も魅力です。
美容関連職
美容関連職も、自由な働き方が可能な職業として挙げられます。
美容関連職の仕事は、理美容師・ネイリスト・エステティシャン・美容部員などさまざまです。
職種ごとで収入にはバラつきがありますが、自宅で開業できる場合もあるのが大きな利点でしょう。
また、職場によっては子育て支援が充実しており、育児や家事との両立がしやすいと考えられます。
ワークライフバランスを軸にした転職の注意点
ワークライフバランスを転職の軸とする際には、以下の3点に注意が必要です。
- 多角的な視点で労働条件を確認する
- 転職後の目標を明確に設定する
- 転職理由の伝え方を工夫する
いざ転職してから後悔することがないよう、下調べや事前準備は入念にしておきましょう。
多角的な視点で労働条件を確認する
ワークライフバランスを重視して転職先を探す際には、さまざまな視点から労働条件を確認することが大切です。
社内の制度だけに焦点を当てると、転職後のミスマッチを招く可能性があります。
ワークライフバランスを実現しやすいと謳った企業に転職できたとしても、社内の雰囲気や業務内容が合わなければ、働きにくさを感じるかもしれません。
労働環境や社風、教育制度、給与など、ワークライフバランスを保つ以外の労働条件や労働環境も十分にチェックしておく必要があるでしょう。
転職後の目標を明確に設定する
ワークライフバランスの実現をめざして転職する場合、転職後の明確な目標を設定しておく必要があります。
仕事内容を二の次にして、働きやすさばかりに注目した結果、日々の業務にやりがいを感じられなくなる可能性があるためです。
結果として、再び転職を考えることになるかもしれません。
転職後のビジョンを描く際には、勤務時間や休日などの条件面のほか、仕事内容とやりがいにも着目してみてください。
転職理由の伝え方を工夫する
ワークライフバランスを転職理由にするときは、採用担当者への伝え方を工夫しましょう。
「仕事だけでなく私生活も充実させたい」という形で伝えてしまうと、考え方が自分中心で、会社への関心が低いととらえられる可能性があります。
採用担当者に好印象を与えるには、なぜワークライフバランスを充実させたいのかを掘り下げて考え、企業への貢献度につながる転職理由を準備しておくことが重要です。
例えば「ワークライフバランスが整った環境で集中力や生産性を向上させ、自身のめざす成果につなげたい」といった具体的で前向きな理由を示すと良いでしょう。
また「仕事とプライベートのバランスを保ちつつ、専門的なキャリアを築くための時間を増やしたい」など、個人の成長に焦点を当てるのもおすすめです。
ワークライフバランスが取れた転職に関するよくある質問・回答
転職を考えたとき、ワークライフバランスだけを重視するのが最善策とは限りません。
ワークライフバランスとはどのような概念なのか、またワークライフバランスより新しい価値観にはどのようなものがあるのかを知り、自分に最適な働き方を見つけてみましょう。
ワークライフバランスとはどのような考え方?
ワークライフバランスとは、仕事と私生活の調和が取れており、相互に良い影響を与え合っている状態のことです。
仕事は私生活を充実させるために必要であり、ご家族との時間や趣味の時間が確保されてこそ、日々の仕事に対するモチベーションが生まれます。
仕事とプライベートの両方が好循環し、働きながら健康的な生活を送れることが、ワークライフバランスのめざすところといえるでしょう。
ワークライフバランスを重視するのは古い?
労働者のライフスタイルや価値観の変化とともに、ワークライフバランスという考え方に対する課題も指摘されるようになりました。
近年では、リモートワークをはじめとした柔軟な働き方が社会に浸透しつつあり、仕事とプライベートの区別が難しくなってきています。
そこで、ワークライフバランスに変わる新しい概念として、以下のような考え方が生まれました。
- ワークライフインテグレーション
- ワークライフマネジメント
ワークライフインテグレーションとは、仕事と生活を分けずに統合する考え方のことです。
仕事も私生活も人生の一部だととらえ、双方の充実をめざします。
ワークライフマネジメントは、個人の自己管理のうえで、仕事と私生活両方の充実を図る考え方です。
ワークライフバランスは企業が主体となって推進するイメージですが、ワークライフマネジメントでは、従業員も主体性を持って仕事と私生活の調和を図ることが大切になります。
ワークライフバランスの具体例は?
企業が実施しているワークライフバランスに関する具体的な取り組み例には、下表のようなものがあります。
休業・休暇制度 | 育児・介護休業制度、看護休暇、リフレッシュ休暇、療養休暇、ボランティア休暇 |
働く時間の見直し | フレックスタイム制度、短時間勤務制度、時間外労働の削減、勤務時間・勤務場所の柔軟化、 |
働く場所の見直し | 在宅勤務、サテライトオフィス設置 |
その他 | 有給取得の促進、経済的支援、事業所内保育施設、情報提供・相談窓口の設置 |
ワークライフバランスを維持するための取り組みとして、休業制度や休暇制度の充実のほか、働く場所・時間の見直しを行っている企業も珍しくありません。
経済的支援においては、年休を100%消化した従業員に対して金一封の付与、育児サービスの経費援助やエンタメチケット代金の補助などが実施されています。
ワークライフバランスが取れた転職先を見つけるには入念な情報収集を
ワークライフバランスを重視して転職活動を行う際には、自身の達成したい目標に焦点を当てて企業を選ぶ必要があります。
働きやすさや条件だけに着目してしまうと、たとえワークライフバランスが取れる企業に転職できたとしても、仕事にやりがいを見出せない事態にもなりかねません。
転職後のミスマッチを防ぐためには、多角的な視点で転職先の情報を集め、社風や職場環境などにも目を向けるようにしましょう。
さらに時間をかけて自己分析を行い、ワークライフバランスを重視する目的と、企業側が納得できる転職理由をあわせて伝えられるように準備しておくことが大切です。