
看護師として働くなかで、認定看護師や専門看護師へのキャリアアップを考える方もいるでしょう。
いずれも日本看護協会が認定している資格であり、一見すると似ているようでも、担っている役割や働き方はそれぞれ異なります。
資格の取得方法も違っているため、自身のめざす看護師像を明確にしたうえで、認定看護師と専門看護師のどちらが向いているのか見極めてみましょう。
本記事では、認定看護師と専門看護師の違いとあわせて、それぞれの資格に向いている人を解説します。
目次
認定看護師と専門看護師の違い|役割
認定看護師と専門看護師の2つでは、求められる役割に違いがあります。
専門看護師は、認定看護師よりもより多くの役割を求められるのが特徴です。
看護分野において、それぞれの資格に何が求められるのか詳しく見てみましょう。
認定看護師の役割
認定看護師の役割は、「実践」「指導」「相談」の3つです。
- 実践:患者さんやご家族に対して、高度な知識・スキルに基づいた質の高い看護を提供する
- 指導:自ら看護技術のお手本となり、後輩看護師の育成を行うなど他看護師に対して指導する
- 相談:看護現場での問題に対して、改善策の提案や支援を行う
専門看護師の役割
専門看護師に求められる役割は認定看護師の役割よりも多く、「実践」「相談」「調整」「倫理調整」「教育」「研究」の6つです。
- 実践:患者さんやご家族に対して、高度な知識・スキルに基づいた質の高い看護を提供する
- 相談:患者さんやそのご家族、看護師の相談に乗りアドバイスを行うなど、問題解決に取り組む
- 調整:患者さんへのケアを円滑に行うために、医師や看護師をはじめ、ケアマネジャーなどの他職種に働きかけて調整を行う
- 倫理調整:倫理的問題に関わる場面において、医師や看護師に働きかけ問題解決を図る
- 教育:勉強会の実施など、他看護師の能力を向上させるために教育を行う
- 研究:日々の看護実践をとおして看護の質向上のために研究を行う
認定看護師と専門看護師の違い|特定分野
認定看護師と専門看護師は、専門分野の種類が異なります。
どちらの資格を取るか迷ったときには、自分の興味のある分野に着目してみるのも良いでしょう。
認定看護師の特定分野
認定看護師の特定分野は、熟練した看護知識・技術を必要とする分野として、日本看護協会により定められています。
2023年現在は、認定看護師の教育課程制度の移行時期であり、A課程とB課程が混在している状態です。
従来あったA課程(21分野)の認定審査は2026年度で終了し、2021年度からスタートしたB課程(19分野)に統合・分野名変更されることとなりました。
A課程(旧課程):21分野 | B課程(新課程):19分野 |
救急看護 集中ケア 緩和ケア がん性疼痛看護 がん化学療法看護 訪問看護 不妊症看護 透析看護 摂食・嚥下障害看護 小児救急看護 脳卒中リハビリテーション看護 慢性呼吸器疾患看護 慢性心不全看護 皮膚・排泄ケア 感染管理 糖尿病看護 新生児集中ケア 手術看護 乳がん看護 認知症看護 がん放射線療法看護 |
クリティカルケア 緩和ケア がん薬物療法看護 在宅ケア 生殖看護 腎不全看護 摂食嚥下障害看護 小児プライマリケア 脳卒中看護 呼吸器疾患看護 心不全看護 皮膚・排泄ケア 感染管理 糖尿病看護 新生児集中ケア 手術看護 乳がん看護 認知症看護 がん放射線療法看護 |
専門看護師の特定分野
専門看護師の特定分野とは、時代とともに変化する看護のニーズに対応すべく、独立した専門分野として知識・技術の深まりを専門看護師制度委員会に認められた分野のことです。
2023年現在、専門看護師の専門分野には以下の14分野があります。
専門看護分野一覧 |
がん看護 精神看護 地域看護 老人看護 小児看護 母性看護 慢性疾患看護 急性・重症患者看護 感染症看護 家族支援 在宅看護 遺伝看護 災害看護 放射線看護 |
専門看護師の専門分野についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

認定看護師と専門看護師の違い|働き方
認定看護師と専門看護師は、活躍のフィールドにも違いがあります。
認定看護師よりも専門看護師のほうが、より広範囲での活動に関わることになるでしょう。
認定看護師の働き方
認定看護師は基本的に、病院やクリニックなど勤務している施設内を中心に活動します。
専門的なスキルを活かして患者さんに看護ケアを提供したり、ときにはケアの提供方法についてカンファレンス内で他看護師から助言を求められたりもするでしょう。
活動の範囲を院外まで広げることは少なく、あくまでも患者さんへの看護の提供が中心であり、勤務先の看護現場での活躍にとどまります。
専門看護師の働き方
専門看護師は、認定看護師と同様に施設内でも活躍しますが、病院全体のマネジメントや病院外での活動にも関わるのが特徴です。
例えば地域全体で行う研修の講師を担ったり、他職種とともに適切な医療提供のためのシステム作りに取り組んだりと、より幅広いフィールドで活躍する機会があります。
日本看護協会のアンケート調査によると、看護部長や副看護部長などの管理職の割合は認定看護師より専門看護師のほうが多いという結果でした。
病院のマネジメントなど、調整の役割を担う可能性も高くなるでしょう。
認定看護師と専門看護師の違い|資格取得までの流れ
認定看護師や専門看護師の資格を取得するには、日本看護協会の認定審査を受けて合格しなければなりません。
認定審査を受けるまでに必要な教育課程に大きな違いがあるため、認定看護師と専門看護師のどちらをめざすのかに合わせて計画や対策を立てましょう。
認定看護師の資格取得方法
認定看護師の資格を取得する流れは、以下のとおりです。
- 日本の看護師免許を取得する
- 通算5年以上の実務研修(そのうち3年以上は認定看護分野での実務研修)を修了する
- A課程認定看護師教育機関・B課程認定看護師教育機関にて必要なカリキュラムを修了する
- 認定看護師の認定審査を受験し、合格する
なお、認定看護師の資格を取得後、5年ごとに更新が必要になります。
更新審査を受けるには、過去5年間に看護実践を行った時間が2,000時間以上あること、学会での研究発表や講師活動といった自己研鑽実績が50点以上あることが条件です。
専門看護師の資格取得方法
専門看護師の資格を取得するまでの流れは、以下のとおりです。
- 日本の看護師免許を取得する
- 通算5年以上の実務研修(そのうち3年以上は認定分野での実務研修)を修了する
- 看護系大学院に入学し、専門看護師に必要な教育課程の単位を取得する
- 専門看護師の認定審査を受験し、合格する
認定看護師とは異なり、専門看護師は大学院に通わなければいけません。
入学試験の準備をするほか、2年間大学院で学べるように費用面での準備も必要です。
なお、専門看護師も認定看護師と同様、5年ごとの更新審査を受けることになります。
認定看護師と専門看護師でケア対象の違いはない
認定看護師と専門看護師で、ケア対象の違いはありません。
いずれの資格も、患者さんやご家族など看護ケアを必要としている人に対して、高度な知識やスキルを活かして、質の高い看護を提供します。
ただし、専門看護師はしいていうならトータルでのケアを担い、管理職として施設全体のマネジメントに関わったり、研修の講師活動や研究などを行ったりすることが特徴です。
これにより、患者さんなどに対して直接的なケアを行う時間は少なくなるかもしれません。
認定看護師と専門看護師それぞれに向いている人
ここまで解説したとおり、認定看護師と専門看護師は役割や働き方に違いがあります。
自分自身の理想とする看護が実践できるのはどちらなのか考えるヒントとして、それぞれの資格に向いている人の特徴をチェックしてみましょう。
認定看護師に向いている人
医療現場で患者さんに質の高いケアを提供したい、特定行為など実施できる技術を増やして現場に貢献したいと考えている方は、認定看護師が向いているでしょう。
認定看護師は、医療現場での活躍が中心であるため、自身のスキルや知識を直接的に患者さんのために活かせます。
看護師として働くなかで「より適切なケアを提供できるようになりたい」「看護ケアで直接患者さんの役に立ちたい」と考えているのであれば、認定看護師を検討してみてください。
専門看護師に向いている人
看護現場でのケアだけではなく、研究や教育を通して看護の発展に貢献したい、地域など広範囲のマネジメントに関わりたいと考えている人は、専門看護師が向いているでしょう。
上述でも触れたとおり、専門看護師は地域を対象とした研修の実施など、医療現場以外でも活躍する機会を得られる可能性があります。
部門間の調整や院内外の連携調整に関わることで、マネジメント経験も積むことが可能です。
また、専門看護師の資格取得には大学院での教育が必要になります。
専門的な知識を大学院でしっかりと学びたい場合にも、専門看護師をめざすと良いでしょう。
認定看護師と専門看護師の違いを知りキャリアプランにあわせて選ぼう
認定看護師と専門看護師は、役割や働き方、資格取得の仕方などさまざまな面で違いがあります。
特に専門看護師をめざす場合は、大学院に通わなければなりません。
資格取得に向けた計画を立てるには、まず看護師としてどのように活躍していきたいか、将来像を明確にすることが大切になります。
認定看護師と専門看護師では特定分野も異なるため、興味のある分野から取得すべき資格を見極めるのも一つの方法です。
自身のキャリアプランに合った資格を取得することで、より看護のやりがいを感じられるでしょう。