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病院経営管理指標とは?効果的な経営分析の手法も解説

病院経営管理指標は、収益性・安全性・機能性などの観点から、病院の経営状況を示す指標です。
病院経営の現状を把握し改善につなげるためには、病院経営管理指標を活用した経営分析が欠かせません。

しかし、正しく理解していないと適切な対応ができず、病院が赤字経営に陥る恐れがあります。
本記事では、病院経営管理指標の基礎知識や効果的な経営分析のポイントを詳しく解説します。

病院経営管理指標とは

病院経営管理指標とは

病院経営管理指標とは、医療施設の経営状況を数値で表したもので、経営の健全性や改善の方向性を把握するために用いられます。

経営指標は以下の5つに分類されるのが一般的です。

  • 収益性
  • 安全性
  • 機能性
  • 生産性
  • 成長性

医療機関で使用する主な指標は、収益性・安全性・機能性の3つです。
病院経営管理指標を活用すると、経営状況を客観視できます。
収益の確保や資金繰りが適正か、医療の質が維持できているかなどを、偏りのない視点で評価可能です。

病院経営管理指標を用いて問題点を発見し分析すると、経営計画の見直しもできます。
経営状況の実態が可視化され効果的な判断が行えるため、病院の成長につながるでしょう。

病院経営管理指標の一覧

先にも述べたとおり、病院経営管理指標は収益性と安全性、機能性の3つに分類されます。
それぞれの分析に役立てるための、代表的な指標を一覧で紹介します。

収益性 ● 医業利益率
● 病床利用率
● 平均在院日数
● 人件費率
● 総資本対経常利益率
● 総資本回転率
安全性 ● 自己資本比率
● 流動比率
● 固定長期適合率
● 医業収益対借入金比率
● 償還期間
● 1床あたり固定資産額
● 借入金比率
● 償却金利前経常利益率
機能性 ● 1日平均入院患者数
● 1日平均外来患者数
● 外来/入院比
● 平均在院日数
● 患者一人1日あたり入院収益
● 患者一人1日あたり外来収益
● 医師一人あたり入院患者数
● 医師一人あたり外来患者数
● 看護師一人あたり入院患者数
● 看護師一人あたり外来患者数
● 職員一人あたり入院患者数
● 職員一人あたり外来患者数
● 紹介率
● 逆紹介率

病院経営管理指標に用いる計算式

病院経営管理指標の活用には、主な経営管理指標の把握だけでなく、その意味や計算式も理解しておく必要があります。
一つずつ詳しく見ていきましょう。

収益性

収益性は医療機関の収益力を示す指標で、少ない資産で効果的な利益を上げているか、資本の有効活用ができているかなどを判断します。

収益性の指標 計算式および指標の意味
医業利益率(%) {(医業収入-医業支出)÷医業収益}×100
医業収益に占める医業利益の割合で、高数値なほど収益性が高い
病床利用率(%) 1日平均入院患者数÷稼働または許可病床数×100
病院のベッドがどれだけ効率的に利用されているかを表す
高いと効率的に稼働している
平均在院日数(日) 在院患者延数÷{1/2×(新入院患者数+退院患者数)}
患者の入院から退院までの平均値
平均在院日数が短いほど、医療の質が高いと見なされる
人件費率 (%) (給与費(役員報酬を含む)÷医業収益)×100
売上高に対する人件費の割合で、高いと病院の負担が多い
総資本経常利益率 {経常利益÷(負債+資本)}×100
病院の総資本に対して、経常利益をどれだけ生み出しているかを示す
数値が高いと、効率的な経営ができていると判断できる
総資本回転率 {医業収益÷(負債+資本)}×100
総資本を活用し、どの程度売上を上げているかを表す
回転率が高いほど、総資本の効率的な利用を示す

安全性

経営指標の安全性では、財務状況の健全性や倒産のリスクの有無、継続的な経営が可能かどうかを評価します。

安全性の指標 計算式および指標の意味
自己資本比率(%) 純資産 ÷(負債+資本)×100
総資本に占める自己資本の割合
数値が低いと病院経営が不安定であり、高ければ財務状況が健全である
流動比率(%) (流動資産÷流動負債)×100
病院の短期の負債に対する支払い能力
一般的に200%以上が理想とされている
固定長期適合率(%) {固定資産÷(純資産+固定負債)}×100
長期的に使用する固定資産を、安定した資金である自己資本や固定負債でカバーできているかどうかを示す
数値が低いほど、安全性が高い
医業収益対借入金比率(%) 長期借入金÷医業収益×100
収益と借入金のバランスが適正かどうかの割合
数値が高いと、借入金の返済が困難になる可能性を示す

機能性

機能性の分析により、病院のもつ機能による現状や、サービスの効率性などの情報が把握できます。

機能性の指標 計算式および指標の意味
1日平均入院患者数(人) 在院患者延数÷(施設数×365日)
病床ごとの1日の入院患者数
病床の効率を評価する
1日平均外来患者数(人) 外来患者延数÷ (施設数×300日)
病床数に対しての1日の外来患者数
外来/入院比(倍) 1日平均外来患者数÷1日平均在院患者数
入院患者に対する外来患者の比率
平均在院日数(日) {在院患者延数÷{1/2×(新入院患者数+退院患者数)}
入院患者一人の平均日数
患者一人1日あたり入院収益(円) 入院収益÷在院患者延数(24時現在の患者数)
入院患者一人の1日の室料や診療の収益から、収益額の平均値を検証した金額
数値が高ければ収益の単価が高い
患者一人1日あたり外来収益 (円) 外来収益÷外来患者延数
一人の外来患者が診療を受けた際の収益の1日あたりの平均額
高水準の場合は収益性が高い

病院経営管理指標を活用した経営分析のポイント

病院経営管理指標を活用した経営分析は、以下のポイントを押さえて行いましょう。

  • 経営状況の評価と原因の分析
  • 資金の使途と調達のバランスを確認
  • 院内機能の充実度や患者動向の調査

以下で詳しく解説します。

経営状況の評価と原因の分析

経営分析の際は、経営状況の評価と原因の分析が重要です。
まずは収益性を確認し、収益と支出のバランスに焦点を当てましょう。
医療利益率を見ると、収益力が高いか否かを判断できます。

さらに過去5年間の医業利益率の推移の検証により、上昇か低下あるいは横ばいの、傾向を把握しましょう。
例えば、医業利益率が低下している場合は、その背後にある原因の究明が必要です。
結果だけでなく原因を分析し解決策を模索すると、問題の本質が見えて的確な対策を講じやすくなるでしょう。

資金の使途と調達のバランスを確認

安全性を判断する場合には、資金の使途と調達のバランスも検証しましょう。
借入金比率や見込み償還期間を確認して、返済能力に対して借入金が過大ではないかどうか判定してください。
また固定長期適合率では、固定資産額に対する自己資本と長期借入金のバランスも調査し、経営が不安定になる可能性がないかどうかを判断しましょう。

院内機能の充実度や患者動向の調査

病院経営管理指標を活用した、病院機能の充実度や患者動向の把握も必要です。
医師や看護師の配置状況、入院患者数や外来患者数などのデータを分析すると、院内機能の充実度や患者さんのニーズを把握できます。

また、患者さん一人あたりの入院・外来の収益や1床ごとの平均入退院患者数の数値を通じて、患者単価や患者さんの推移がわかります。
これにより、経営の効率性や将来性が判断できるでしょう。

病院経営管理指標を正しく理解して経営分析に有効活用を

病院経営管理指標は、病院の経営状況を理解するために役立ち、収益性・安全性・機能性の3つの要素に分類されます。
経営指標の有効活用には、単なる経営課題の分析にとどまらず、改善策の模索が不可欠です。

表面的な数字に縛られず、さまざまな関連性を探りながら深掘りすることで、より的確な判断が可能となるでしょう。
病院経営管理指標を活用して多角的に現状を分析し、経営の安定性の強化に役立ててください。

執筆者について

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