
ケアマネジャーは訪問看護職のなかでも、介護サービス全体をマネジメントする立場であり、各訪問看護職との連携が求められます。
利用者さんの健康状態や生活環境などの情報からニーズを探り、適切な介護サービスを提供する必要があるからです。
本記事では、訪問看護でのケアマネジャーの重要性や役割、連携先や連携時の注意点を解説します。
訪問看護の現場でケアマネジャーとして活躍するために欠かせない、重要な要素なので参考にしてください。
目次
ケアマネジャーの訪問看護における重要性
訪問介護に携わる職種はさまざまです。
訪問看護ステーションに相談したご家族や利用者さんの、日常生活を送りやすくするために、ケアマネジャーはニーズに合った介護プランを組み立てて提案します。
適切な介護サービスを提案し、利用者さんの満足度を向上させて、日常生活の支障を軽減するのが、ケアマネジャーとしてのマネジメント業務です。
そのようなケアマネジャーが訪問看護の現場で、どのような役割を担っているのか、具体的に説明します。
ケアマネジャーの訪問看護における役割
ケアマネジャーが訪問介護で担っている役割は、主に次の3つがあります。
- 利用者さんやご家族のニーズにあわせたケアプラン作成
- 介護サービスや自治体との連絡・調整
- 利用者さんやご家族と定期的に面談
詳しく説明するので、イメージしてみてください。
利用者さんやご家族のニーズにあわせたケアプラン作成
在宅介護のサポーターとして、ケアマネジャーは利用者さんやご家族のニーズにあわせたケアプランを作成します。
最初に、ニーズを知るためにアセスメントを実施します。
いきなり利用者さんと直接対面するのではなく、利用者さんが関わりのある医療・介護関係者から情報を収集して、利用者さんの全体像をつかんでいきましょう。
関係する専門職やご本人から得た情報で、日常生活での支障や課題を分析します。
課題解決をめざして、ニーズにあった介護サービスを組み合わせるケアプラン作成は、訪問介護において重要なステップです。
介護サービスや自治体との連絡・調整
利用者さんとご家族の意向にあわせて提供する介護サービスを決めたら、サービス提供のための連絡や調整を行います。
まずは、ケアプランを医療・介護サービスなどの関係事業者と共有したり、利用者さんの負担額の計算や給付金の申請などを進めたりしましょう。
金額面での負担や介護サービスの提供日時などを調整したら、実際にサービスを実行していきます。
介護サービス提供者間で情報共有の機会を設けるなど、利用者さんの介護全体を見渡し、適切にマネジメントします。

利用者さんやご家族との定期的な面談
利用者さんへ介護サービスを提供すれば、ケアマネジャーの役割は終了ではありません。
ケアプランのとおりにサービスが提供されているかどうかをチェックし、利用者さんから感想や現状などを伺います。
介護サービスに対しての不満や苦情もあるかもしれません。
病気の悪化や転倒など、生活に新たな支障が出ている場合は、ケアプランの再作成が必要です。
面談をとおして状況を把握し、利用者さんやご家族が快適に満足して生活できるように力を尽くします。
ケアマネジャーが連携する訪問看護の職業一覧
ケアマネジャーは、介護サービス提供者や医療関係者など、利用者さんと関わる専門家との連携が必要です。
訪問介護の現場では、おもに次のような専門家と連携する機会があります。
- 訪問看護師
- 介護福祉士
- 保健師
- ホームヘルパー
- 作業療法士
- 理学療法士
- 言語聴覚士
各専門家の概要を以下にわかりやすく説明するので、連携時の参考にしてください。
訪問看護師
訪問看護師は、主治医からの指示を受けて点滴やカテーテルの交換などの医療行為を行います。
一般病院の看護師は医療サポートが主ですが、訪問看護師は生活面のサポートも重要な仕事です。
病気が原因で生活に支障が出ていないかどうかを把握し、排泄や入浴などの状況にあわせてサポートします。
特に在宅介護では、介護疲れしてしまうご家族のメンタルケアも必要でしょう。
自宅での看取りを希望する利用者さんにも、病院と同様の医療や、生活サポートなどを提供します。

介護福祉士
介護福祉士は介護界で唯一の国家資格を持ち、利用者さんの生活面や身体面などの支援を行います。
例えば、寝返り補助のような身体介助や、家事を行うのが困難な利用者さんへの生活サポートなどです。
また、利用者さんやご家族の相談に答えたり、指導したり、介護目標にあわせて現場を監督したりする役割もあります。
国家資格所持者としての専門性を発揮するポジションともいえるでしょう。
保健師
保健師は、乳幼児から高齢者まで幅広い地域住民に保健指導を行っています。
利用者さんの健康管理や認知症対策などの取り組み、医療機関や必要な介護サービスへの紹介、連携など、保健師の訪問看護現場でのサポートはさまざまです。
訪問看護では、一人暮らしの高齢者を訪ねたり、地域コミュニティとのつながりをサポートしたりと、QOLを向上させる役割もあります。
個人だけではなく地域に広く働きかけていく、重要な役割です。
ホームヘルパー
ホームヘルパーの役割は介護福祉士と似ており、医療行為が求められない現場での介護実務がメインです。
例えば、食事、入浴、排泄、買い物、洗濯、薬の受け取り、通院補助など、利用者さんやご家族が快適に日常生活を送れるように、在宅介護のプロとして支援します。
介護福祉士の国家資格は不要ですが、介護の専門実務が求められ、自治体が実施する介護職員初任者研修課程の受講が必要です。
作業療法士
作業療法士は、精神的および身体的に障害があり、生活に不自由を感じている利用者さんに対して、必要な動きを指導する専門家です。
例えば、食事や着替えなどを自力で行うには、「スプーンで口まで運ぶ」「ボタンを正しくかける」などの細かな動作がともないます。
細かな動作が困難な利用者さんも課題を克服できるように、作業を通してリハビリを提供していくのが作業療法士です。
訪問看護でも同様に、生活に必要な動きのリハビリを行っていきます。
理学療法士
理学療法士は、歩く、立つ、座るなどの生活に必要な大きな動きに対して、リハビリを提供する専門家です。
病気や怪我などの影響で動きに課題がある利用者さんの回復や、さらなる悪化を防いで機能を維持することをめざしてサポートします。
大きな動きの回復は、利用者さんの健康や自立した生活を向上させるだけではありません。
動きがスムーズになれば介護も楽になることから、介護に携わるご家族へのサポートとしても必要です。
言語聴覚士
言語聴覚士は、言語障害、音声障害、嚥下障害、聴覚障害などに対応し、利用者さんが快適な生活を送るためにサポートする専門家です。
発達障害などの子どもへリハビリを提供するイメージがありますが、高齢者に対しても重要な役割を果たしています。
訪問看護では、コミュニケーションに必要な言語や聞き取りに加えて、食事に必要な噛む動作、飲み込む動作などのサポートも言語聴覚士の仕事です。
動作が困難な理由や本質的な原因をとらえて、利用者さんにあった課題解決方法でアプローチします。
ケアマネジャーが訪問看護職との連携時に注意すること
ケアマネジャーが訪問看護職との連携を充実させると、さらに利用者さんを満足させられて良い効果を得られます。
一方で、各訪問看護職との連携には次の点に注意しましょう。
- 信頼関係を築く
- 必要な医療知識も勉強する
- 情報共有して利用者さんのニーズに寄り添う
ケアマネジャーのマネジメントに欠かせないため、参考にしてください。
信頼関係を築く
ケアマネジャーとして訪問看護職と連携するには、信頼関係を築く必要があります。
利用者さんのために連携が必要だとわかっていても、訪問看護職はみなそれぞれの仕事があり、余裕がない人もいるでしょう。
施設によっては、ケアマネタイムという時間が用意されています。
まずは相談しやすい日時でアポをとるなどのマナーを守ることから、信頼関係を築きましょう。
必要な医療知識も勉強する
訪問看護職との連携では、たびたび専門用語が使われるため、必要な医療知識も勉強する必要があります。
医療知識を身につけておくと、訪問看護職が伝えたい意図が理解でき、連携時間を有意義に過ごせるでしょう。
「どういう意味ですか?」と逐一説明を求めていては、頼りない印象も与えてしまいます。
現場に入る前に、一般的な用語は理解しておいたほうが良いでしょう。
情報共有して利用者さんのニーズに寄り添う
ケアマネジャーは、利用者さんの情報を積極的に訪問看護職と共有し、利用者さんのニーズに寄り添えるようマネジメントする必要があります。
ケアマネジャーが利用者さんの日常生活や現状を詳しく把握し、各方面に情報共有することで、課題や目標を明確にします。
利用者さんに変化がみられたら積極的に情報共有し、常に利用者さんに寄り添った支援ができるように心がけると良いでしょう。
ケアマネジャーとして訪問看護の各機関とスムーズな連携をはかろう
ケアマネジャーは、利用者さんやご家族の環境や日常生活での支障などを把握しやすい立場であり、各訪問看護職との連携が求められます。
常に、利用者さんの実態や課題にアプローチできるよう、積極的に情報共有をすると良いでしょう。
また、相手の都合に配慮しつつ、専門用語も勉強するなど、訪問看護ケアマネジャーとして自己研鑽するのがおすすめです。
ケアマネジャーとしての役割を理解してスムーズな連携をはかりましょう。