
看護師には准看護師と正看護師があり、准看護師は戦後の病院増設に対応できる医療従事者を増やすために設けられました。
近年、准看護師制度の廃止が議論されており、すでに准看護師として働いている方や、これから准看護師をめざす方は不安を感じているのではないでしょうか。
この記事では、准看護師廃止に向けた意見や今後の動きを解説します。
目次
准看護師制度の廃止が検討されている理由
准看護師制度の廃止に向けて、日本看護協会と日本医師会で大きく意見が対立しているのが現状です。
それぞれの意見について、詳しく解説していきます。
日本看護協会の意見
日本看護協会は、准看護師養成の停止、正看護師への一本化を訴えています。
准看護師養成の停止をめざす理由は、おもに次の4点です。
- 准看護師の養成カリキュラムでは、医療の高度化・多様化に対応しきれなくなっている
- 医師や看護師の指示のもと業務を行うという養成所での教育内容の不足など、仕事をする職能としては不十分
- チーム医療には自律的に判断し行動できる能力が求められている
- 臨床の場で看護師と准看護師2つの職種があるため、「この仕事をして良いのか」という曖昧さによる葛藤が生じる
准看護師の養成を停止しても、今働いている准看護師が働けなくなるわけではなく、研修や進学支援を通じたキャリアアップをサポートする方針です。
日本医師会の意見
日本医師会は、准看護師制度の廃止に反対しています。
理由を以下にまとめました。
- 地方やへき地において看護師確保は困難であり、准看護師は地域医療に必要な存在である
- 准看護師がこれまで果たしてきた功績は誰にも否定できない
- 業務を円滑に進めるためには指示系統と機能分担が必要であり、一本化された看護師が業務を一手に引き受けることで、ミスを起こすことも考えられる
- 准看護師は初期医療や高齢者の療養分野で活躍が期待できる
- 看護師・准看護師・看護補助者の三層構造が最適だと考える
全国レベルで准看護師のさらなる能力向上をめざし、2015年には日本医師会・四病院団体協議会の支援のもと、日本准看護師連絡協議会が設立されました。
准看護師の廃止はいつから?廃止に向けた動きと現状
准看護師制度の廃止は具体的に決まっているわけではありません。
日本看護協会のデータをもとに、准看護師制度の廃止に向けた動きと現状をみていきます。
日本看護協会のデータ上、准看護師学校養成所の数は2000年の529校から2020年の214校へと、半分以下に減少しています。
2022年9月には182校へとさらに減少し、秋田県・山形県・新潟県・福井県・沖縄県など、准看護師学校養成所がゼロの自治体も増えてきているのが現状です。
また、入学者数は2000年から2020年のあいだで、約25,000人から約7,000人と1/4程度にまで減少しています。
2012年以降5年間の就業者数は、看護師は14.3万人増加している一方で、准看護師は3万人減少しています。
准看護師は看護師に比べて有効求人数が圧倒的に少なく、労働条件や教育体制、給与など、希望する就職先への就職が厳しい状況です。

准看護師制度が廃止になったら?今後のキャリアの考え方
准看護師制度は、今すぐ廃止されるわけではありません。
しかし、准看護師の養成所が廃止される可能性はあるといえるでしょう。
世の中の動きとして准看護師制度は廃止へと向かう可能性もあるため、今後のキャリアを考えておくことが大切です。
これから看護職をめざす人や、すでに准看護師として働いている人は、状況が許すのであれば正看護師をめざす手もあるでしょう。
正看護師をめざせば、給与アップが見込めます。
准看護師に比べて求人が多く、状況に合わせて転職しやすいのも特徴です。
また、役職、専門・認定看護師、助産師、保健師などへのキャリアアップも見込めるでしょう。
国をあげて在宅医療を推進している状況下で、訪問看護師や専門性の高い看護師などの需要が高くなっています。
正看護師であれば、自分で判断して行える医療行為も多く、仕事内容の幅が広がり自信につながるでしょう。
准看護師は状況に合わせて自分のキャリアを考えよう
准看護師制度は、今すぐ廃止されるわけではありません。
しかし、准看護師の養成停止や看護師の一本化に向けての意見もあり、今後、准看護師制度が廃止になる可能性はあるでしょう。
現在准看護師として働いている方や看護職をめざす方は、それぞれの状況に合わせてキャリアを考えてみましょう。
これから准看護師をめざす方は、以下の記事も参考にしてみてください。