
薬剤師の仕事の一つである調剤薬局での業務は調剤だけをする立場だと思われがちです。
しかし、実際には地域との関わりを持ちながら、自由度の高い働き方ができる仕事です。
ここでは、調剤薬局の薬剤師の仕事内容や、薬剤師として調剤薬局で働くメリット・デメリットについて詳しく説明していきます。
目次
調剤薬局の薬剤師の仕事とは?
調剤薬局の薬剤師は、以下のような業務を行います。
- 処方監査・調剤監査
- 疑義照会
- 調剤
- 服薬指導
- 薬歴管理
- 在宅訪問
このように、調剤薬局では薬に関する幅広い業務があり、患者さんの健康を守る重要な役割を担っています。
処方監査・調剤監査
薬剤師は、医師の処方箋の内容が妥当であるかどうかを監査し、調剤後は調剤された薬に間違いがないかを確認します。
医師の処方を受け、調剤前に薬剤師の職能を活かして行うチェック作業が処方監査です。
重複投与がないか、併用すると危険な薬が処方されていないか、薬剤同士の相互作用によって効き目が想定より強くなったり弱くなったりしないかなどを確認します。
調剤監査は、調剤された薬が間違っていないかを確認する作業です。
通常、調剤を行った薬剤師とは別の薬剤師が担当します。
これらの監査の元となる知識は、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のホームページにデータベース化されて常に更新されています。処方監査・調剤監査を適切に行うには、これらの情報を利用して最新の知識を身につけておく必要があります。
疑義照会
処方監査の結果、処方箋に疑わしい点がある場合は、処方した医師に問い合わせを行います。
この問い合わせを疑義照会と呼び、疑義が解消されるまでは調剤を行ってはいけません。
疑義照会には、形式的疑義照会と薬学的疑義照会があります。形式的疑義照会は処方箋の記載内容の不備に関するもので、薬学的疑義照会は薬剤師の専門知識に基づいて行われます。薬学的疑義照会は、処方せんの内容だけでなく服薬指導や薬歴などの情報も考慮します。平成27年に日本薬剤師会が調査した結果によると、薬学的疑義照会によって処方が変更された割合は疑義照会の74.88%にのぼります。
疑義照会は、患者さんを健康被害から守る重要な役割を担っています。
疑義照会を行ったら、その旨を処方箋に記載しておきます。
調剤
調剤とは、処方箋に基づいて薬を調製することです。
錠剤やカプセル剤などのシート状の薬を揃えるほかに、シロップ剤を調製したり、粉薬を1回分ごとに一包化して飲みやすい状態にしたりします。
監査から患者さんに薬の説明をするまでの一連の作業を、調剤という場合もあります。
服薬指導
薬は正しく使われてこそ効果を発揮します。
そのため、薬剤師は患者さんに薬の詳細や飲み方などを丁寧に伝える必要があります。
尿の色が変わる、眠たくなるなど、患者さんの生活に影響する副作用についても説明し、患者さんの理解を得ておくことが大切です。
服薬指導を通じて患者さんとコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくことが、より良い薬物療法につながります。
薬歴管理
薬歴は「薬剤服用歴」のことで、患者ごとに医薬品の処方履歴を管理する重要な情報です。
具体的には、処方された薬の種類や分量、用法、処方日数などが記載されます。
患者さんのアレルギー歴や体質、飲酒・喫煙の習慣、妊娠の有無なども記録され、薬物による事故や重大な副作用を未然に防ぎ、安全に薬を使うために必要な情報となります。
最近では、薬歴が電子化されている調剤薬局も増えてきています。
在宅訪問
薬剤師の在宅訪問は、薬の受け取りや管理が難しく、医師が訪問の必要性を認めた場合のみ利用できるサービスです。
薬剤師による在宅訪問サービスは年々増加しています。
薬剤師が在宅訪問を行うには、在勤する調剤薬局が在宅患者訪問薬剤管理指導薬局として登録されていなければなりません。
在宅訪問を行う薬剤師は在宅薬剤師と呼ばれます。
調剤薬局の薬剤師に求められるスキル
調剤薬局で働く薬剤師は、保険薬剤師の資格を持っていることが望ましいでしょう。
国民健康保険や健康保険などの公的医療保険を使った調剤業務は保険薬剤師が行わなければ保険料が支払われません。
保険薬剤師になるためには、6年制の薬剤師養成課程(2005年以前入学の場合は4年)を修了後、薬剤師の国家試験に合格し薬剤師となったのちに、居住地、もしくは勤務先の管轄である地方厚生局登録が必要です。
また、在宅訪問を実施する薬剤師として、在宅療養支援認定薬剤師という資格もありますが、在宅療養支援認定薬剤師は現在は在宅訪問をする際に必須の資格にはなっていません。
ただし、この資格を持っていると市場価値を高められるメリットがあります。
調剤薬局の薬剤師の勤務時間
ほとんどの調剤薬局は、平日の日中に営業しています。
周辺の医療機関よりも少し長めの営業時間が設定されていることが多く、朝8〜9時頃に出勤し、17〜18時頃に退勤するのが一般的です。
大病院の門前薬局などの場合、病院に合わせて週休二日制を採用しているところも多いです。
詳しくは、下の内部リンクで薬剤師の勤務時間について紹介していますので、参考にしてみてください。
調剤薬局の薬剤師の給料
調剤薬局の薬剤師の給料には幅がありますが、病院や企業に勤める薬剤師よりも高い傾向にあります。
令和5年の第24回医療経済実態調査 (医療機関等調査) 報告によると、保険薬局に勤務する薬剤師の年収の平均年収は、483万4,284円です。
ただし、給与は勤務先の規模や勤務地、経験年数などによって異なるので、一概にはいえません。
薬剤師が調剤薬局で働くメリット・デメリット
調剤薬局で働く薬剤師のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 患者さんと直接関わることができる
- 幅広い知識を活用できる
- 雇用が安定している
- 比較的高収入
- 夜勤や休日出勤が少ない
一方、デメリットとしては、以下のようなものがあります。
- 業務が単調になりがち
- 責任が重い
- 病院薬剤師と比べると、福利厚生面が弱い
- 薬剤師の数が少ないと休みが取りづらい
- 職場の人数が少ないと人間関係が窮屈に感じる
調剤薬局の薬剤師には、メリットだけでなくデメリットもあります。転職の際には、よく検討しましょう。
調剤薬局での業務は調剤を通じて患者さんとつながる仕事
調剤薬局の薬剤師は、患者さんの健康を守り、地域医療に貢献する仕事です。
処方監査や調剤監査、服薬指導、調剤、薬歴管理、在宅訪問など、薬剤の調製業務を中心に幅広い仕事を行い、患者さんと直接関わることができますが、コミュニケーション能力が求められ、責任も重大です。
また、夜勤や休日出勤が少なく働きやすいことが多いですが、業務が単調になりがちなデメリットもあります。
それでも、多くの薬剤師が調剤薬局で働くのは、患者さんの健康を守るという使命感と、やりがいを感じられるからかもしれません。
調剤薬局の薬剤師は、調剤を通じて患者さんとつながる、地域医療に欠かせない存在といえるでしょう。