
生活相談員は、福祉施設とご家族のあいだに立ち、必要な支援の策定や相談などを行う存在です。
大きなやりがいを得られると同時に、ゆくゆくは介護業界でのキャリアアップもめざせます。
一方で、「資格なしの状態から生活相談員として働くことは可能なのか」「無資格でも就業先に困ることはないのか」と気になる方も多いでしょう。
本記事では、資格なしでも生活相談員をめざせるのかどうかを詳しく解説しています。
生活相談員として働くための条件や無資格からめざすための方法も紹介しているため、参考にしてみてください。
目次
生活相談員は資格なしは原則不可
生活相談員になるためには資格が必要となるケースが一般的ですが、必須の資格が決まっているわけではありません。
資格なしで生活相談員として働くことは不可能なのか、詳しく解説します。
生活相談員は各自治体の要件を満たす必要がある
多くの自治体では、以下のように生活相談員の基準を設けています。
- 社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当している
- あるいは、それと同等以上の能力があると認められる
生活相談員を名乗るため、必要な資格が明確に定められているわけではありません。
具体的な基準も自治体ごとに変わりますが、多くの場合は上記有資格者と同等以上の能力が求められるため、資格を取得するのが望ましいといえます。
資格があれば自分の能力をアピールしやすく、生活相談員として活躍できる可能性も高まるでしょう。
無資格OKの求人は存在する
生活相談員の求人のなかには、無資格でも応募できるものも存在します。
しかし、これらの求人は初めから生活相談員として働けるわけではなく、入社したあとに研修や実務を通じてスキルアップし、生活相談員をめざしながら働く形になるでしょう。
「経験を積んで資格を取得したのちに、最終的に生活相談員としてのキャリアを歩む」という意味合いが強いことを覚えておきましょう。
生活相談員の資格なしの求人は自治体にある?
生活相談員の求人のうち資格なしでも応募できるものは、自治体ごとで満たすべき要件が定められています。
ここでは東京都・大阪府・福岡県の生活相談員の資格要件を例に見てみましょう。
東京都の生活相談員の資格要件
東京都では、上記で触れた「社会福祉法第19条第1項各号のいずれかの該当者と同等以上の能力があると認められる者」について、以下のように定義しています。
内容 | 証明書類等 |
1 介護支援専門員 【要介護者等が自立した日常生活を営むの に必要な援助に関する専門的知識及び技術 を有する者】 |
介護支援専門員証の写し |
2 特別養護老人ホームにおいて、介護の提供 に係る計画の作成に関し、1年以上(勤務日 数180日以上)の実務経験を有する者 【介護の提供に係る計画の作成に関し経験の ある者】 |
勤務先で発行する在職証明書(職務内容、在職 期間が確認できるもの) |
3 老人福祉施設の施設長経験者 【介護の提供に係る計画の作成や処遇等に、 専門的な知識経験を有する者】 |
勤務先で発行する在職証明書(役職、職務内容、 在職期間が確認できるもの) |
4 通所介護事業所、通所リハビリテーション 事業所、短期入所生活介護事業所、短期入所 療養介護事業所、特定施設入居者生活介護 (外部サービス利用型を除く)の特定施設、 地域密着型通所介護事業所、認知症対応型通 所介護事業所、小規模多機能型居宅介護事業 所(訪問サービスに係る実務経験は除く)、 認知症対応型共同生活介護事業所、地域密着 型特定施設入居者生活介護の地域密着型特 定施設、地域密着型介護老人福祉施設、介護 老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養 型医療施設及び介護予防・日常生活支援総合 事業における通所型サービスにおいて、当該 事業所又は施設における介護に関する実務 経験が通算で1年以上(勤務日数180日以 上)あり、介護福祉士の資格を有する者 【介護の提供について豊富な知識及び経験を 有する者】 |
勤務先で発行する在職証明書(事業種別、職務 内容、在職期間が確認できるもの)及び介護福 祉士登録証の写し ※「介護に関する実務経験」とは、各事業所や 施設において、人員基準に定められ、利用者の 処遇に直接関わる職種として勤務した経験を 指します。 したがって、利用者の処遇に直接関わらな い、管理者業務、送迎業務、調理業務、清掃業 務等については、当該実務経験には算入できま せん。 |
引用:通所介護及び短期入所生活介護事業所における生活相談員の資格要件について|東京都
社会福祉法第19条第1項各号の該当者とは、社会福祉士・社会福祉主事(3科目主事)・精神保健福祉士のことであり、これらと同等の資格や実務経験がなければなりません。
上記のとおり、特別養護老人ホームや通所介護事業所、地域密着型通所介護事業所など特定の施設で経験を積み、その在職を示す証明書を提出することで生活相談員となれます。
大阪府の生活相談員の資格要件
大阪府では、生活相談員の資格要件を以下のように定めています。
1)社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者
2)介護福祉士(H27.4.1から)
3)介護支援専門員(H27.4.1から)
大阪府については実務経験や勤続年数などが考慮されず、専門的な資格が必要です。
資格取得にはそれなりの時間がかかるものの、求人の幅を広げられるほか、施設によっては資格手当てがつくこともあります。
一概にすべての求人が資格を重んじているとは限りませんが、取得のメリットは大きいでしょう。
なお隣接県である兵庫県や奈良県、和歌山県では実務経験があれば資格なしでも生活相談員として働けるため、大阪府にこだわらない方は周辺で求人を探すのも手です。
福岡県の生活相談員の資格要件
福岡県における生活相談員の資格要件は、以下のようになっています。
(1)社会福祉法第19条第1項各号のいずれかに該当する者
①社会福祉士
②精神保健福祉士
③社会福祉主事任用資格
(2)これと同等以上の能力を有すると認められる者
次のいずれかに該当する者
①介護福祉士
②介護支援専門員
③社会福祉施設等(注)で3年以上勤務し又は勤務したことのある者
※社会福祉法第2条に定める社会福祉事業
福岡県の場合、条件はあるものの社会福祉施設で3年以上の実務経験がある方は資格がなくても生活相談員として認められます。
社会福祉施設に数えられるのは、老人福祉施設や障がい者支援施設、児童福祉施設、精神障がい者社会復帰施設、老人デイサービスセンターなどです。
資格なしから生活相談員をめざす方法
資格なしの状態から生活相談員をめざすには、次の2つのルートが考えられます。
- 介護職として実務経験を積む
- 資格なしでOKな自治体に就職する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
介護職として実務経験を積む
専門的な資格を取得せず生活相談員として働くには、介護職としての実務経験が必要です。
一部の自治体では、資格保有を生活相談員の必須要件とはしていません。
ただし、その場合には介護職としての実務経験が条件となります。
また、介護の現場で働くなかで、介護福祉士をはじめとした資格取得の機会に恵まれることもあるでしょう。
介護福祉士の資格を取得できれば、さまざまな自治体で生活相談員として働くための基準を満たせます。
まずは介護職での経験値を上げ、資格要件を満たすことが大切です。
資格なしでOKな自治体に就職する
資格取得の予定がない方は、実務経験だけで生活相談員になれる自治体で就職するのも一つの方法です。
すでに実務経験がある場合、働くエリアを変えるだけで基準を満たせる場合もあります。
無資格でも生活相談員として働ける自治体は、上記で挙げた東京都や福岡県のほか、青森県、愛知県、三重県、島根県など数多くあるため確認してみましょう。
まずはお近くの県や自治体の資格基準をチェックし、実務経験だけで生活相談員としての条件をクリアできるところがあれば応募を検討してみてください。
資格なしで生活相談員になるには実務経験が大切
自治体によっては、資格なしでも生活相談員として働くことが可能です。
ただし、資格がない場合は一定の実務経験が必要になるため、まずは介護職としてのキャリアを積むことから始めてみましょう。
実務経験を積むなかで、社会福祉士などの生活相談員に必要な資格の取得もできます。
資格があれば就職先の選択肢が広がると同時に、給与アップもめざせるかもしれません。
まずは介護の現場で活躍できる人材となるべく、経験を積んでいきましょう。