
臨床心理士の資格を取得するには、資格試験に合格する必要があります。
ただし、卒業する大学院によっては受験要件として実務経験を要する場合もあり、すぐには試験を受けられない可能性があることを念頭に置いておかなければなりません。
実務経験が必要になる大学院を修了した方は、資格取得が年単位でずれ込むことになるため、自分の選んだルートに合わせて計画を立てましょう。
本記事では、臨床心理士になるために実務経験が必要なケースと、実務経験の積み方を解説します。
臨床心理士の資格取得をめざしている方は、参考にしてみてください。
目次
臨床心理士になるには実務経験が必要なルートがある
臨床心理士の受験資格を得るためには、日本臨床心理士資格認定協会が定めた以下3種の大学院のいずれかを修了する必要があります。
- 第1種指定大学院
- 第2種指定大学院
- 臨床心理士養成のための専門職大学院
上記のうち、第2種指定大学院を修了した方は修了後1年以上の実務経験が必要です。
臨床心理士の受験資格として求められる1年以上の実務経験とは、以下の機関・施設で給料をもらいながら、心理臨床に関する従業者(心理相談員、カウンセラー等)として働くことを指します。
- 教育相談機関
- 医療施設
- 心理相談機関
このとき、ボランティアや実習・研修員での勤務は実務経験には該当しません。
無報酬で働いた場合、実務経験として認められない点に注意しましょう。
正社員やパート・アルバイトなど、給料が発生する形であれば雇用形態に指定はないものの、週に何日、何時間勤務するかによって実務経験年数の計算式が変わってきます。
詳しくは、毎年発行されている日本臨床心理士資格認定協会の『新・臨床心理士になるために』に掲載されていますので、申請前に確認が必要です。

臨床心理士の実務経験の積み方
臨床心理士の受験資格を得るための実務経験が積める代表的な勤務先は、以下の3ヵ所です。
- 教育相談機関
- 医療施設
- 心理相談機関
大学院を修了していれば、無資格者でも応募できる職種があります。
臨床心理士の資格を得るまでは、心理系大学院修了や心理系大学卒業を要件として応募できる求人を探すことになります。
第2種指定大学院を修了した方の、各機関・施設での実務経験の積み方を詳しく見てみましょう。
教育相談機関の実務内容
教育や子どもの分野では、各自治体の教育相談員や適応指導教室の心理スタッフ、放課後等デイサービスや療育施設の心理職員などで実務経験を積むことができます。
業務内容は、教育上の悩みを抱える子どもや保護者への支援が中心です。
また、自治体により名称はさまざまですが、学校内での支援を必要とする児童生徒のサポートを行う職種もあります。
臨床心理士資格を取得し、将来的にスクールカウンセラーとして児童や学生などの心のケアに携わりたい方は、教育相談機関で実務経験を積むことを検討してみましょう。
医療施設の実務内容
病院やクリニックでは、インテーカー(問診担当)やテスター(心理検査員)として実務経験を積むことができます。
臨床心理士の資格がないため、心理療法やカウンセリング等の本格的な業務にあたることは難しく、医師や看護師、ソーシャルワーカー等と協働し患者さんの支援にあたります。
心理検査や面接を実施し、患者さんの心理状態を分析した結果が、治療方法や看護方針に役立てられます。
精神科や心療内科、小児科での主な実務内容は、不眠や気分の落ち込み、不安、トラウマ、ストレス、不登校や発達障害、育児・家族関係について悩みを抱えている患者さんのカウンセリングや心理検査です。
臨床心理士資格を取得し、将来的に医療領域で働くことをめざす方は、医療施設で実務経験を積むことを選択肢に入れてみましょう。
心理相談機関の実務内容
心理相談機関とは、保健所や企業、外部EAP(従業員援助プログラム)、大学等の心理相談部門などのことで、相談員としての経験を積むことができます。
公的機関から法人、私的相談室までさまざまな場所にあり、それぞれ実務内容が異なります。
場所 | 実務内容 |
---|---|
保健所 | 地域住民のメンタルヘルスに関わる悩みや乳幼児の育児の悩み、発達に関する相談に対応する |
企業 | 大手の企業では社内に相談室を設けており、ハラスメントによるストレスやメンタル不調などの問題に対応する |
外部EAP機関 | 企業・地方自治体と契約し、従業員や公務員のメンタルヘルスをはじめとして幅広い心の悩みに対応する |
大学付属の相談機関 | ・心理学が学べる大学院の多くは、実習の場として心理相談室を設けている ・教員の指導のもと大学院生が面談を担当することもあり、必要であれば相談者に医療施設の紹介も行 |
心理相談を行っている機関・企業で働けば良いというわけではなく、心理業務を行う相談員やカウンセラーとして採用される必要があります。
自分の適性や興味のある分野に合わせて実務経験を積みたい場所を選び、臨床心理士資格を持っていなくても応募可能な求人を探してみましょう。
実務経験を積み臨床心理士の受験資格を獲得しよう
臨床心理士の受験資格を得るためには、実務経験を要するルートがあります。
第2種指定大学院に該当する大学院に通っている方は、修了後に1年以上の実務経験を積む必要があり、卒業後すぐに臨床心理士の資格試験を受けられるわけではありません。
実務経験を積む場所の例として日本臨床心理士資格認定協会は、教育相談機関・医療施設・心理相談機関の3種類を挙げており、具体例として学校や病院、保健所などがあります。
自分の適性に合った場所を選び、実践のなかで臨床心理を学びながら、試験合格をめざしてみてください。