
歯科衛生士と歯科助手は、いずれも歯科医院などで働く職種ですが、さまざまな違いがあります。
本記事では、歯科衛生士と歯科助手の違いについて、仕事内容や必要な資格、給与など、さまざまな切り口から解説していきます。
目次
歯科衛生士と歯科助手の違い一覧
下表は、歯科衛生士と歯科助手の違いを一覧にしたものです。
項目 | 歯科衛生士 | 歯科助手 |
資格 | 歯科衛生士国家資格が必須 | 公的資格はなく、民間資格のみ。必須ではない |
資格取得方法 | 厚生労働省の養成学校を修了し、国家試験に合格する | 各資格によって異なる |
取得までに必要な時間 | 3〜4年 | 各資格によって異なる |
できる業務 | 歯科予防処置 歯科診療補助 歯科保健指導 |
歯科医行為以外(受付、医療事務、診療補助、片付け、掃除など |
できない業務 | 絶対的歯科医行為(歯の治療、詰め物、レントゲン撮影など) | 直接口の中に触れる行為 |
平均年収 | 約382.5万円 | 約312万円 |
歯科衛生士と歯科助手の資格
歯科衛生士と歯科助手は、必要となる資格が異なります。
歯科衛生士になるためには、歯科衛生士国家資格の取得が必須です。
一方で、歯科助手は必須となる資格がなく、無資格の人でも就くことができます。
歯科衛生士になるための資格
歯科衛生士になるために必要な歯科衛生士国家資格は、受験資格を満たしたうえで国家試験に合格すると取得が可能です。
受験資格を満たすためには、所定の養成校で3年以上学び、卒業しなければなりません。
国家試験が行われるのは、毎年3月初旬です。
年に1度しか実施されないため、不合格の場合、次の挑戦は1年後になってしまいます。
合格すると厚生労働大臣によって歯科衛生士名簿に登録され、歯科衛生士免許証が発行されます。
歯科助手の資格
歯科助手は、歯科衛生士と違い、就業するうえで必須となる資格はありません。
そのため、無資格の人でも歯科助手になることはできます。
しかし、民間の資格や認定制度は複数存在しており、取得することでキャリアアップや給料アップを狙いやすく就職にも有利になるでしょう。
資格取得にかかる時間は、各資格ごとに大きく異なります。
例えば、公益社団法人日本歯科医師会の歯科助手資格認定制度における甲種歯科助手の場合、訓練時間が420時間以上必要です。
取得方法も資格によって異なります。
こちらも公益社団法人日本歯科医師会の歯科助手資格認定制度を例に出しますが、3種類(甲種・乙種第一・乙種第二)ある認定の取得要件は、それぞれ下記のとおりです。
【甲種歯科助手】
- 甲種歯科助手訓練基準による訓練を420時間以上受講し、修了した者
- 乙種第一歯科助手の資格を有しており、業務経験が3年以上あり、補充研修訓練基準の訓練を修了した者
【乙種第一歯科助手】
- 主に診療室内の仕事に52時間以上従事する者
【乙種第二歯科助手】
- 主に事務的な仕事に40時間従事する者
できる業務・できない業務
歯科衛生士と歯科助手は、できる業務とできない業務がそれぞれ異なります。
大きな違いとしては、歯科衛生士は業務のなかで患者さんの口の中に触れることがありますが、歯科助手は患者さんの口の中に触れる業務は一切できません。
歯科衛生士のできる業務・できない業務
歯科医行為は、相対的歯科医行為と、絶対的歯科医行為の2つに分類できます。
歯科衛生士は、歯科医の指示のもとで、相対的歯科医行為を行うことが可能です。
相対的歯科医行為には、以下のようなものがあります。
- 歯石・歯垢の除去
- 表面麻酔
- ホワイトニング など
一方、絶対的歯科医行為は、歯科衛生士が行うことはできません。
絶対的歯科医行為を行えるのは、歯科医に限られます。
絶対的歯科医行為に該当するのは、以下のようなものです。
- 歯を削る
- 歯を抜く
- 歯につめものをつける
- レントゲンを撮る
- 歯石取り以外の麻酔注射 など
また、歯科衛生士の主な仕事内容は、歯科衛生士法により、以下の3つが定められています。
- 歯科予防処置
- 歯科診療補助
- 歯科保健指導
歯科助手のできる業務・できない業務
歯科助手も、歯科衛生士と同じく、歯科医において診療の補助を行う仕事です。
ですが歯科衛生士とは異なり、歯科医行為に該当するものはすべて行えず、患者さんの口の中に触れることはできません。
歯科助手が行っても良い業務には、以下のようなものがあります。
- 簡単な診療補助
- 器具の準備
- 使用後の器具の洗浄・滅菌
- 受付・会計業務
- 在庫管理
- レセプトの作成 など
一方で、以下のような行為は、歯科医行為に該当するため行うことができません。
- 歯石取り
- フッ素薬の塗布
- 歯型を取る
- 歯ブラシの指導 など
歯科衛生士と歯科助手の給料の違い
厚生労働省によると、歯科衛生士の平均年収は382.5万円、歯科助手の平均年収は312万円です。
ただし、年齢や地域によっても収入は大きく変わります。
歯科衛生士と歯科助手の働き方
歯科衛生士、歯科助手ともに、正社員やパート・アルバイトなど、さまざまな働き方があります。
ただし、歯科衛生士は派遣で働くことが原則禁止されています。
歯科衛生士が例外的に派遣で働くためには、以下の条件を満たさなければなりません。
- 紹介予定派遣
- 産前産後休業や育児休業、介護休業の代替業務
- 就業場所が僻地などであり、都道府県が地域医療の確保として認めた場合
一方歯科助手は、派遣で働くことを制限されていません。
歯科衛生士と歯科助手はどのような人におすすめ?
歯科衛生士と歯科助手は、患者さんや歯科医師などとのやり取りを頻繁に行うため、コミュニケーションスキルの高さは、どちらの職種でも共通して求められる要素です。
加えて歯科衛生士の場合は、実際に患者さんに触れる場面が多いため、責任感や集中力、手先の器用さなどが重要になってきます。
歯科助手の場合は、受付業務などの比率が歯科衛生士よりも多くなるぶん、気配りや人当たりの良さが求められるでしょう。
また、歯科助手は必須となる資格がないぶん、スキルアップのためには自分で資格を選んで取得する必要があるため、そういったことを苦にしない向上心の高さも重要です。
歯科衛生士と歯科助手の違いを理解して将来の道を検討してみよう
歯科衛生士と歯科助手の違いについて解説しました。
歯科衛生士は国家資格が必要な職種であり、資格取得のために学校を修了し、国家試験合格後は一部の歯科医行為を行うことが可能です。
一方で歯科助手は、必須の資格はありませんが、歯科医行為が一切行えません。
また、年収は歯科衛生士のほうが高い水準となっています。