
看護師のキャリアアップには多くの選択肢がありますが、方向性によっては経験年数やスキルを求められることもあります。
看護技術を高めたい、管理職に就きたいなど、どのようにキャリアアップをしていきたいのか、あらかじめ方向性を定めておく必要があるでしょう。
また、看護師の経験を活かして転職や別職種へチャレンジする方法もあります。
本記事では、看護師のキャリアアップの種類についてまとめました。
今後のキャリアに迷っている看護師の方は、参考にしてみてください。
目次
看護師のキャリアアップとは?
看護師のキャリアアップの方向性は、大きく以下の3種類に分けられます。
- 看護師として看護実践能力を高めたい
- 管理職としてマネジメントを行いたい
- 看護教員として将来の看護師を育てたい
それぞれ詳しく見ていきましょう。
看護師として看護実践能力を高めたい
看護師として患者さんにより質の良い看護を提供したい、一つの看護領域の専門性を高めたいなど、スキルの向上に興味がある方には次のようなキャリアアップが考えられます。
- 特定の看護分野の専門性を極めたスペシャリストになる
- 幅広い分野で活躍できるジェネラリストになる
認定看護師と専門看護師、ジェネラリストという働き方について解説します。
専門性を発揮できる「認定看護師」
認定看護師は、日本看護協会が定める資格の一つにあたり、特定の看護分野において3年以上の経験と必要な教育を積むことで認定されます。
高い技術と専門知識を発揮して、看護の質の向上に貢献できるスペシャリストです。
認定看護師の資格を取得することで、主に以下3つの役割を担います。
- 患者さんやご家族に対して、豊富な知識や経験をもとにしてより良い看護を提供
- 他の看護職員に対して指導し、現場の看護職員の能力向上に貢献
- 現場での課題に対して、解決策を見出す(コンサル)
認定看護師になることで、患者さんに対するより良い看護の提供に加えて、現場では他のスタッフのお手本として看護の質の向上に寄与できるでしょう。
資格取得のためには、看護師として現場経験を5年以上(3年間は認定看護分野)積み、日本看護協会が定めている600時間以上のカリキュラムを修了したのち、認定審査に合格する必要があります。
看護の発展に貢献できる「専門看護師」
専門看護師も認定看護師と同様に日本看護協会が定めた資格です。
がん看護や精神看護、地域看護など特定の専門分野に特化したスペシャリストとして、施設・地域の看護の発展に貢献できます。
専門看護師が社会で担う役割の例は、以下のとおりです。
- 患者さんが地域で安心して暮らせるよう、ケアマネジャーなどの福祉職とともに病院と地域の調整を行い、連携を強化する
- 患者さんとご家族の権利を守るため、倫理的な問題の解決を図る
- 専門知識と技術の発展のために看護研究を行う
専門看護師になるには、看護師として現場経験を5年以上(専門看護分野で3年以上)積むことと、看護系大学院修士課程を卒業かつ所定の単位の取得が必要です。
その後、書類審査と筆記試験でなる認定審査に合格することで認定されます。
幅広い分野で活躍できる「ジェネラリスト」
ジェネラリストとは、特定の領域に限定せずに活躍できる看護師のことです。
ジェネラリストになるために資格などは必要ありません。
一人前の看護師として能力を発揮できる中堅の看護師や、ある程度の看護師経験年数を重ねた看護師、ベテラン看護師の方であればジェネラリストに当てはまるでしょう。
ジェネラリストになるには、さまざまな分野の知識と経験が必要になるほか、病院以外に介護施設や在宅看護などの役割への理解も大切です。
病院によっては、ジェネラリストを名乗るためにクリニカルラダーを設定しているところもあります。
管理職としてマネジメントを行いたい
勤務先で昇進して看護部長や看護師長のような管理職に就き、病棟・看護部全体のマネジメント業務に関わることもできます。
「病院全体の方針を考えたい」「看護の現場を良くしていきたい」と考えている方は、管理職でのキャリアアップを検討してみましょう。
管理職の種類と役割
看護師の管理職には、大きく分けて看護主任・看護師長・看護部長があります。
- 看護主任
管理職のなかでは現場に近く、病棟内の看護業務が円滑に進むように調整する立場です。
看護師の教育や指導、職場環境の改善などが看護主任の仕事に挙げられます。 - 看護師長
看護主任よりも幅広い視点を持ち、病棟全体をマネジメントしていくのが看護師長です。
担当部署で働いている看護師それぞれが気持ち良く働けるよう管理していくとともに、病棟のベッド調整なども含めて他部署との連携を図ります。
また、トラブル発生時の対応なども看護師長の役割です。 - 看護部長
看護部長は看護師のトップであり、病院の方針や理念に基づいて施設運営に関わったり、他職種との調整を行ったりと、看護師全体と病院の橋渡し役になる存在です。
重要な会議などに出席し、他職種から看護部代表としての意見が求められるようになるでしょう。
管理職に求められるスキル・資格
管理職は、他の人や立場の意見を聞き、調整していける能力が必要です。
そのため的確な指示や問題解決のための豊富な知識・現場経験はもちろんのこと、相手と交渉できるコミュニケーションスキル、現場をまとめられるリーダーシップ、マネジメントスキルなども求められます。
日本看護協会は認定看護管理の資格を定めており、取得することで客観的に看護管理者として優れた能力を持つことの証明が可能です。
看護教員として未来の看護師を育成したい
未来の看護師を育成したいと考える場合は、看護教員としての道があります。
看護教員になるための条件は以下2つです。
- 保健師/助産師/看護師として5年間現場で働き、約1年間の研修・講習を受講する
- 保健師/助産師/看護師として3年間現場で働き、大学で教育に関する科目を4単位取得し卒業、または大学院において教育に関する科目を4単位取得する
看護教員は多くの看護師を育成でき、学生の成長を実感することでやりがいを感じられるでしょう。
看護師が転職するならキャリアアップをしっかり考慮する
以上のように、看護師のキャリアアップには特定のスキルや経験年数が問われることがあります。
そのため看護師として転職を考える場合、どのような領域で働きたいのか、あるいは将来の方向性を考慮して転職先を選ぶと良いでしょう。
看護師としてのキャリアアップ:クリニカルラダーに応じた研修を受ける
日本看護協会は、看護師のステップアップの指標としてクリニカルラダーを設定しています。
実際に、病院のなかには日本看護協会が提示しているクリニカルラダーを使用し、それぞれのラダーに合わせて研修を用意しているところもあります。
研修を受けながら看護師として現場経験も積むことで、レベルアップが可能です。
自身の看護師としてのレベルや今後のキャリアに悩んだときは、一度このラダーに当てはめて目標を設定するのも一つの手でしょう。
看護師から別職種へのキャリアアップ
一定の看護師経験を積んだあとに、その経験を活かして別の医療職や福祉職にキャリアアップするという選択肢もあります。
どのような職種があるのか一例を見ていきましょう。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは「介護支援相談員」とも呼ばれます。
介護支援などを必要としている方々に対して介護支援サービス計画(ケアプラン)を立てて、地域で暮らす人々の生活を支える仕事です。
ときには担当している利用者と医療機関や介護施設などのあいだに入り、円滑にサービスを提供できるよう調整を行うほか、利用者やご家族の相談相手となることもあります。
看護師として身につけた医療知識やコミュニケーションスキルを活かせるでしょう。
看護師の5年間の実務経験があれば、介護支援専門員実務研修受講試験を通過後、約3ヵ月間の介護支援専門員実務研修を受講することでケアマネジャーになれます。
保健師・助産師
看護師として実務経験を積むなかで、地域の保健事業に貢献したい、母子の健康支援や出産に携わりたいと感じた方は、保健師や助産師へのキャリアチェンジも検討してみましょう。
保健師は、地域住民に対して健康診断や保健指導、健康教育などを行い、地域住民の疾病を予防する役割を担う仕事です。
一方の助産師は、妊娠から出産後まで母子の健康をサポートし、産前・産後の健康指導や産前教育、分娩介助、母乳指導、乳児の健康管理、健康相談などを行います。
保健師や助産師になるためには、看護師資格とは別にそれぞれの国家資格が必要です。
看護師の国家資格を持っている場合は、それぞれの養成課程がある短大や専門学校に1年間または大学院に2年間通い、試験に合格しましょう。
医療系一般企業への転職
看護師として働いてきた現場経験や医療知識を活かして、医療系一般企業への転職も可能です。
ポテンシャル次第で看護師であっても業界関係なく転職はできますが、ここでは看護師の経験が役立つ職種を紹介します。
CRC・CRA:医薬品の開発に貢献する
治験や臨床研究に携わり医薬品の開発に貢献できる職種として、CRCやCRAがあります。
CRC(治験コーディネーター)は、医療機関に出向いて治験や臨床試験全般のサポートを行う仕事です。
具体的な仕事内容としては、患者さんへの治験の説明補助、データ入力、症例報告書の作成などがあります。
CRCとして働きたい方は、医療機関またはSMO(治験施設支援機関)に転職すると良いでしょう。
一方、CRA(臨床開発モニター)は、実施する治験が臨床研究や研究計画書に則って行われているかモニタリングするほか、スケジュールどおりに進むよう調整する仕事です。
製薬会社またはCRO(開発業務受託機関)に転職することでCRAとして活躍できます。
クリニカルスペシャリスト:医療機器の営業を行う
医療機器メーカーに勤め、医療機関で働く医師や看護師などに対して自社製品を営業する仕事が、クリニカルスペシャリストです。
看護師として医療機器を実際に使用してきた経験があるからこそ、現場目線での魅力的な商品のプレゼンテーションができる可能性があります。
外資系の医療機器メーカーが勤め先となる場合も多いため、英語力が身についていると転職を有利に進めやすいでしょう。
看護師のキャリアアップは方向性を定めよう
看護師のキャリアアップには、専門性をより高める働き方やマネジメントに関わる働き方など、さまざまな選択肢があります。
そのなかには、認定看護師やケアマネジャーのように、一定の看護師経験や資格が求められる職種も少なくありません。
自分の選んだ道に後悔しないためにも、将来どのようなフィールドで活躍したいのか、方向性を定めたうえで行動することが大切です。