
「理学療法士の給料は安い?」
「理学療法士に将来性はある?」
理学療法士をめざすうえで、上記のような疑問を持っている方は多いでしょう。
今回の記事では、理学療法士の給料事情を、他の医療職種の給料などと比較しながら紹介していきます。
目次
理学療法士の年収が安いといわれる実態は?
理学療法士の給料は、他の医療職や全産業の平均と比較すると、どのような位置づけなのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
医療職のなかで比較すると安い傾向
下図は、厚生労働省が実施した賃金構造基本統計調査の結果を参考に、理学療法士を含むリハビリ職(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士)の平均年収と、他の医療職の平均年収を比較したものです。
職種 | 平均年収 | 平均年齢 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士 | 426万5千円 | 35.1 |
医師 | 1378万3千円 | 45.3 |
薬剤師 | 580万5千円 | 41.1 |
看護師 | 498万6千円 | 41.2 |
臨床検査技師 | 496万5千円 | 41.6 |
栄養士 | 367万6千円 | 37.4 |
理学療法士の年収が、他の医療職種と比較して低いことがわかります。
一方で、平均年齢も他の医療職種と比較して低い傾向です。
次は年代別平均年収を比較してみましょう。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 5 職種(小分類)
同年代で比較しても、理学療法士の平均年収は低い傾向となっています。
一般的な平均年収と比較しても高くはない傾向
次に、理学療法士と、全産業の正社員の平均年収を比較してみましょう。
年齢 | 理学療法士 | 全産業の正社員の平均 |
20〜24歳 | 328万6千円 | 328万2千円 |
25〜29歳 | 379万6千円 | 410万2千円 |
30〜34歳 | 414万5千円 | 467万8千円 |
35〜39歳 | 437万5千円 | 521万7千円 |
40〜44歳 | 487万2千円 | 561万3千円 |
45〜49歳 | 515万8千円 | 589万6千円 |
50〜54歳 | 539万5千円 | 631万9千円 |
55〜59歳 | 575万円 | 632万6千円 |
60〜64歳 | 479万3千円 | 495万4千円 |
20〜24歳の平均年収は全産業の平均よりもわずかに高いですが、それ以降は平均を下回る水準であることがわかります。
なぜ理学療法士の給料は安いのか?
先述したとおり、理学療法士の給料は医療職のなかで低い傾向にあり、全産業の平均年収と比較しても高くはありません。
理学療法士の給料が安い原因としては、以下の3つがあります。
- 理学療法士の給料は昇給が少ない
- 理学療法士の人数が増加傾向である
- 独立・開業ができない
順番に見ていきましょう。
理学療法士の給料は昇給が少ない
2022年に経団連が発表した平均昇給率は1.84%、ベースアップが0.12%となっています。
この昇給率を理学療法士の給料で計算してみましょう。
年齢 | 平均昇給率(1.96%)で 毎年昇給した場合 |
実際の理学療法士の 平均給料 |
25〜29歳 | 26万3千円 | 26万3千円 |
30〜34歳 | 29万円 | 28万8千円 |
35〜39歳 | 31万9千円 | 30万2千円 |
平均昇給率で計算した場合の給料よりも実際の給料のほうが低いことから、理学療法士の昇給率は一般的な昇給率と比較して低いことがわかります。
昇給率が低い原因として、リハビリの診療報酬などが関係しています。
以下で詳しく見てみましょう。
リハビリの報酬には経験が加味されない
リハビリの診療報酬制度は、以下のように診療項目によって点数が決まっています。
診療項目 | 点数 | 実施時間 |
心大血管疾患リハビリテーション料(I) | 205点 | 1単位20分 |
心大血管疾患リハビリテーション料(Ⅱ) | 125点 | 1単位20分 |
脳血管疾患等リハビリテーション料(I) | 245点 | 1単位20分 |
脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅱ) | 200点 | 1単位20分 |
廃用症候群リハビリテーション料(I) | 180点 | 1単位20分 |
これらの点数によって、病院が診療報酬として収入を得ることができ、それらの一部が理学療法士の給料となっています。
ここでポイントとなるのが、リハビリの診療報酬には経験が加味されないことです。
経験豊富なベテランがリハビリを指導しても新人の理学療法士が指導しても、稼げる金額は同じです。
リハビリは時間・取得単位数が限定されている
上の表でも示したように、1単位を取得するためのリハビリ実施時間が決められていたり、一人の理学療法士が取得できる単位数に上限があることから、一人の理学療法士が取得できる点数も限られています。
これらのことから、理学療法士として経験年数を積んでも、病院の収入源となる診療報酬を得ることに限界があるため、給料に反映されにくいのが現状です。
理学療法士の人数は増加傾向である
理学療法士の養成施設数は、平成11年(1999年)以降急激に増加しました。
出典:理学療法士・作業療法士の需給推計を踏まえた 今後の方向性について(4ページ)
それにともない、理学療法士の数も増加の一途をたどっています。
とはいえ厚生労働省が公表している一般職業紹介状況によると、理学療法士を含む医療技術者の有効求人倍率は令和4年12月の時点で3.44倍であり、全産業の平均である1.31倍よりも高い数値です。
このことから、依然として理学療法士の需要は高い水準にあるといえるでしょう。
独立・開業ができない
理学療法は医師の指示のもとに業務を行うことが原則であるため、理学療法士としてリハビリを提供するために開業することはできません。
そのため、理学療法士として活躍したいのであれば、医療機関などに雇用されて働く必要があり、自分自身で給料を上げることは困難です。
一方で、理学療法士としてではなく、理学療法士の経験を生かしてエステやサロンなどの民間療法を提供する施設を開業することは可能であるため、検討してみても良いでしょう。
理学療法士の給料は他職種と比較して低い傾向
理学療法士の給料は、他の職種の給料と比較して低い傾向にあります。
一方で、高齢化が進む社会においてはより一層の活躍が期待されており、需要の高い仕事であるといえます。
また、理学療法士の給料についてはこちらの記事でも紹介していますので、併せて参照してください。
>>理学療法士の給料はどのくらい?平均年収や初任給も紹介