
臨床心理士や精神科医は、医療現場においてそれぞれ違った役割を担っています。
「心理」「精神」という単語だけ聞くと、患者さんのメンタルケアを行っているという想像ができます。
では、具体的に臨床心理士と精神科医にはどのような違いがあるのでしょうか。
これから臨床心理士や精神科医として働きたいと考えている方にもわかりやすく、それぞれの違いを説明します。
目次
臨床心理士と精神科医の違い
臨床心理士と精神科医、名前だけ聞くと似たような職種に思う方もいるのではないでしょうか。
実際はそれぞれが違う役目を担って、さまざまな勤務先で働いています。
この記事では、臨床心理士と精神科医がメンタルケアにどのように携わっているのか、それぞれの違いを紹介します。
臨床心理士とは
臨床心理士は、公益財団法人日本臨床心理士資格認定協会において、下記のように定義されています。
臨床心理士は、心の問題に取り組む“心理専門職”の証となる資格です。
〜中略〜
臨床心理士は、人(クライエント)にかかわり、人(クライエント)に影響を与える専門家です。
しかし、医師や教師と異なることは、あくまでもクライエント自身の固有な、いわばクライエントの数だけある、多種多様な価値観を尊重しつつ、その人の自己実現をお手伝いしようとする専門家なのです。
このように、臨床心理士はクライエントの悩みや不安に感じていることなど、心の問題に向き合い、問題を解決へと導く役割を担っています。
クライエントが臨床心理士とのカウンセリングを通して、考えを整理したり、悩みが薄れて気が楽になったりと、心理面での安定を補助するのが臨床心理士の仕事です。
以下の記事でも臨床心理士に関して詳しく説明していますのでご参照ください。
>>臨床心理士とは?必要な資格やできることなどを解説
精神科医とは
精神科医は厚生労働省において、下記のように定義されています。
統合失調症、うつ病、ストレス障害、不眠症、拒食症、自閉症、認知症、アルコールや薬物の依存症などの治療を行う。
引用元:厚生労働省 精神科医
精神科医は患者さんの相談にものりますが、最近の調子や眠れているかなど、話のなかで治療に関わる情報を引き出しています。
また、精神科医は精神に病を患った患者さんと向き合い、病気の解決に向けて検査や診断、投薬などの治療を行うのが仕事です。
臨床心理士と精神科医の仕事の違い
臨床心理士と精神科医は、勤務先や仕事内容も異なっています。
この項では、臨床心理士と精神科医の仕事内容の違いを紹介します。
どちらの職種が自分に向いているのかも含め、これからの資格取得の参考にしてください。
臨床心理士の仕事内容
臨床心理士は、クライエントの心理面での安定を補助する役割を担っています。
具体的に臨床心理士は、どのような業務を行っているのか、詳しい仕事内容について説明します。
【臨床心理士の仕事内容】
- 悩みを抱えている方に向けたカウンセリング
- 心理テストの実施
- 地域住民(コミュニティー)に向けて心の健康に関するサポート
- 臨床心理に関する研究や調査
臨床心理士のおもな仕事内容は、悩みを抱えた方に向けた心理学に基づくカウンセリングです。
カウンセリングのなかで、場合によっては心理テストを実施し、潜在的にクライエントが抱えている問題を引き出します。
また、個人を対象とした対応だけでなく、企業や地域住民などのコミュニティーにおいても、心の健康を援助する活動を行います。
心理に関わる情報を地域や企業などに提供したり、臨床心理に関する研究や調査を行ったりすることが臨床心理士の仕事です。
臨床心理士の勤務先としては、病院やクリニック、児童相談所や企業の健康管理室などがあげられます。
【精神科医と異なる点】
- カウンセリングの対象は、精神疾患の有無に関わらず悩みを相談したい人
- 病気の診断や治療を目的とせず、クライエントの問題解決の補助を目的とする
- 臨床心理士の資格は認定資格であり国家資格ではない
- 薬物療法は行わない
以下の記事では、臨床心理士に向いている人について紹介していますのでご参照ください。
>>臨床心理士に向いている人・向いていない人の特徴は?
精神科医の仕事内容
精神科医は精神疾患を患った患者さんと向き合い、病気の診断・治療を行う役割を担っています。
具体的に精神科医はどのような患者さんと関わり、どのような治療を行っているのか、詳しい仕事内容について説明します。
【精神科医の仕事内容】
- 患者さんの相談内容を把握し病気の診断を行う
- 心理療法や薬物療法などを組み合わせた治療を行う
- 診断書の記入
精神科医は、ストレス障害やうつ病など心の病を抱えた患者さんに対して、その病気の診断と治療を行います。
問診のなかで、食欲はあるのか、眠れているのかなど、患者さんの話を傾聴しながら普段の生活状況や症状を聞き出します。
その情報をもとに薬を処方し、会社を休む場合など必要に応じて診断書の記入をするのが精神科医の仕事です。
精神科医は病院やクリニックの精神科や心療内科、自治体の精神福祉センターなどに勤務します。
精神内科と心療内科の違いについてはあとで詳しく説明します。
【臨床心理士と異なる点】
- 国家資格であり、医師免許を取得している
- 薬物療法を行う
- 心理療法を用いた治療を行う
- 精神疾患を抱えた患者さんが対象
精神科
精神科は、心の病を専門として病気の治療を行います。
【精神科の対象疾患】
- うつ病
- 強迫性障害
- 摂食障害
- てんかん
- 統合失調症
- 認知症
- アルコール依存症
- 薬物依存症
- 適応障害
このように、精神科はうつ病などの精神疾患に加えて、アルコール依存症や不眠など幅広い疾患に対応しています。
そして、これらの疾患に対し投薬治療などを行い病気の改善に導きます。
心療内科
心療内科は、ストレスなどが原因で起こる身体的不調に対して治療を行います。
【心療内科の対象症状】
- 胃の痛み
- 動悸・息切れ
- ぜんそく
- 腹痛、下痢
- 吐き気、嘔吐
- 不眠
- イライラ
これらの症状は、ストレスが溜まることによって引き起こされることがあるものです。
内科的な検査をして所見が見当たらなくても、上記のような症状がある場合は、心療内科を受診します。
心療内科では薬物療法だけでなく心理療法も行い、ストレスの原因にアプローチすることで心身の健康を援助します。
臨床心理士と精神科医の違いを知りどちらが合っているかを選ぼう
この記事では、臨床心理士と精神科医の違いについて説明しました。
臨床心理士は国家資格ではなく、認定資格です。
また、精神疾患の有無に関わらずクライエントの相談にのり、悩みの解決に向けた補助を行います。
一方で、医師免許が必要な精神科医は、病院やクリニックで精神疾患を患っている患者さんに対し診断と治療を行います。
臨床心理士も精神科医も、精神的に疾患や悩みを抱えたクライエントと関わる仕事です。
クライエントの心のケアに携わりたいという方は臨床心理士を、心のケアにプラスして病気の診断や治療をしたいというかたは精神科医をめざしましょう。