
医療系の仕事はいろいろありますが、そのなかでも助産師は魅力的な職種です。
しかし、助産師の具体的な仕事内容は、あまりよく知られていないかもしれません。
そこで本記事では、助産師の仕事を知ってもらうために下記4つの項目を解説します。
- 助産師とは
- 助産師の主な仕事内容と役割
- 助産師になるルートは2つある
- 助産師の仕事の魅力
助産師の仕事内容や待遇を知りたい方は、参考にしてください。
目次
助産師とは
まず、助産師がどのような仕事かを下記3項目に分けて解説します。
- 助産師の概要
- 助産師は女性のみ(保健師助産師看護師法第3条)
- 助産師ができないこと
助産師の仕事を説明するので、参考にしてください。
助産師の概要
助産師は助産師国家試験に合格後、厚生労働大臣の免許を受け業務に携わります。
正常分娩にかぎり医師の指示なしで、自分の判断により出産介助ができる職種です。
助産師が携わる業務は、出産の介助に加えて、出産前・出産後の母子の世話や保健指導などがあります。
つまり、母子の健康管理や出産のサポートが助産師の仕事です。
また、令和元年の助産師のおもな勤務場所は、
- 病院が24,738人(60.9%)
- 診療所が9,968人(24.5%)
であり、ほとんどの助産師が病院か診療所に勤めています。
ほかにも助産師は自らの助産院を開設することができます 。
助産師は女性のみ(保健師助産師看護師法 第3条)
現在、助産師になれるのは女性のみです。
保健師助産師看護師法に次のように規定されています。
この法律において「助産師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、助産又は妊婦、じょく婦若しくは新生児の保健指導を行うことを業とする女子をいう。
引用元:保健師助産師看護師法 第3条
この規定が男性差別にあたるとの意見があり、改正の必要性が30年以上前から議論されています。
しかし、助産師会の反対が強く、男性助産師の導入は実現していません。
反対の理由として、助産の対象が女性のみということがあります。
分娩の介助や乳房のケアを男性がすることに、抵抗感や羞恥心を感じる妊婦がいるということです。
このようにセクシュアリティの観点から、男性助産師の導入は見送られているのが現状です。
一方、男性助産師が誕生すれば、男性の育児参加の促進や父親へのサポートが期待できるという意見もあります。
男性看護学生も母性看護実習に参加している現在、このような実践的な取り組みが広がれば社会のセクシュアリティの認識が変化する可能性があります。
男性助産師導入の行方は道半ばです。
助産師ができないこと
助産師の概要で助産師ができることは、母子の健康管理や保健指導、正常分娩の介助であることを解説しました。
では、次に助産師ができないことを解説します。
【助産師ができないこと】
医療行為 | ・帝王切開 ・会陰切開 ・吸引分娩 ・陣痛促進剤の使用 など |
ハイリスク妊娠 | ・帝王切開の既往 ・多胎妊娠や逆子妊娠 ・子宮癌など婦人科疾患がある妊婦 ・糖尿病などの合併症のある妊婦 など |
つまり助産師は、医療行為や正常分娩に該当しない出産の介助、母子に異常がある場合の処置や介助を行うことはできません。
ただし、緊急時は実施可能です。
助産師の主な仕事内容と役割
次に、助産師の具体的な仕事内容や役割を下記3つの項目に分けて解説します。
- 出産前の妊娠期
- 出産時の分娩期
- 出産後の産褥期
下記を参考にして、助産師の仕事内容を具体的にイメージしてみてください。
出産前の妊娠期
出産前の助産師の仕事内容は、妊婦や父親への保健指導や相談になります。
具体的な仕事内容は、
生活・健康指導 | ・食事の選び方や運動指導 ・体重のコントロール ・不安や悩みに対する相談 |
出産前の教育 | ・母子手帳の受け取り方、今後の妊婦検診の説明 ・陣痛が来たときの対応方法、出産に向けた心構えの指導 ・妊娠中や出産時、出産後の母子の経過や心身の変化に対する指導 |
などです。
妊婦は妊娠中における心身の変化や、分娩および出産後に対する不安などにより、さまざまな負担が生じています。
この時期の助産師の役割は、出産前の妊婦の精神的・肉体的負担をサポートすることとまとめることができるでしょう。
出産時の分娩期
母子ともに健康な出産に導くのが助産師の役割です。
助産師は、分娩期に名前のとおり出産の助けとなるように介助を行います。
具体的には、
- 分娩前・分娩中の母子健康状態の観察
- 分娩の進行具合の状況判断
- 異常分娩時の医師の補助
などがあります。
正常分娩の場合、分娩介助の中心的役割を担うのが助産師です。
また、妊婦の心身のサポートをするため、声かけやマッサージ、呼吸法の促しなども行います。
出産後の産褥期
産褥期(さんじょくき)とは、出産から2ヵ月までの期間をいいます。
産褥期の助産師の役割は、出産後の女性が母親となるまでのサポートです。
助産師は、母体に異常がないか経過観察 しながら、
- おむつの替え方や沐浴の方法
- 授乳や乳房ケアの方法
- 赤ちゃんの観察ポイント
- 産後の運動方法
など、育児方法や自分の身体のケア方法を指導します。
また、赤ちゃんの健康状態を観察するのも助産師の役割です。
呼吸状態は正常であるか、体温調整はできているかなどを観察し、早期に異常発見できるように努めます 。
さらに、退院後の1ヵ月検診の際に、母子に異常はないか、悩みや不安がないかの観察・相談をするのも助産師の役割です。
助産師になるルートは2つある
助産師になるルートは2つあります。
1つ目は、4年制看護大学で看護課程と助産科課程を両方とも修了し、看護師・助産師国家試験の両方に合格するルートです。
2つ目は、看護師になってから助産師になるルートです。
4年制看護大学か3年制の短大・専門学校の看護課程を修了し、看護師国家試験を受け看護師資格を取得します。
その後、大学院・短大・専門学校の助産科課程を修了し、助産師国家試験を受け、助産師資格を取得します。
助産師の仕事の魅力
助産師の仕事の魅力を知ることは、助産師をめざすモチベーションにつながります。
ここからは、助産師の魅力を知るために、
- 赤ちゃんの誕生に立ち会える
- 安定した収入が見込める
- 開業権が認められている
という3つの項目を解説します。
赤ちゃんの誕生に立ち会える
助産師の仕事の魅力は、新たな命の誕生に立ち会えることです。
赤ちゃんが生まれたことの喜びや幸せをご家族とともに感じられます。
こういった経験を味わえるのも助産師の魅力であり特徴です 。
ほかにも、
- 流産・中絶・死産を通して、命の大切さを肌で感じることができる
- 出産という、女性にとって大切なライフイベントをサポートできる
- 妊娠や出産により、揺れ動く母親の心のケアができる
などがあります。
このように命の誕生の喜びや大切さを感じ、母子を支えることができるのが助産師の魅力です。
安定した収入が見込める
助産師の魅力の一つは、安定した収入と求人があることでしょう。
厚生労働省の調べでは、助産師の平均年収は看護師よりも70万円以上高いことがわかります。
【令和2年度調査】
職業 | 平均月給 | 平均年収 |
助産師 | 約29万円 | 570万円 |
看護師 | 約25万円 | 約492万円 |
一般企業 | 約23万円(大卒新卒) | 433万円 |
また、助産師は有効求人倍率が1.32倍 であり、求職者よりも求人数が上回っている状態です。
つまり、人手が足りていない状態となっています。
以上のような状況なので、助産師の有資格者が仕事探しで困ることはないでしょう。
開業権が認められている
助産院を開業できるのも、助産師の魅力の一つです。
例えば、自分が助産院の施設長となり、
- 妊婦の健康管理や指導
- マタニティクラスの運営
- 地域の育児支援
などが行えます。
自ら経営する助産院では、自分が今まで培ってきた経験や行いたい活動を積極的に取り入れることもできます。
病院とは違う家庭的な雰囲気のなかで、出産をサポートできるのもやりがいになるでしょう。
助産師についての理解を深め、自分に合ったキャリアを構築しよう
今回は助産師の仕事内容や役割・魅力を解説しました。
助産師は、命の誕生を支える責任があり簡単な仕事ではありません。
しかし、
- 命の大切さや誕生の喜びを味わえる
- 需要のある仕事で収入が安定している
- 独立して助産院を開業できる
など、やりがいや将来性のある職業です。
「同じ女性として妊婦を支えたい」「専門性の高い仕事に就きたい」という方は、助産師に向いているでしょう。