
医療の専門知識を活かし、医療施設や介護施設で医師のサポートや患者さんの看護、医療行為などを行う看護師。
専門知識と技術が必要な職種なので、年収も高めだと考える人もいるでしょう。
看護師の年収は、経験年数・働く場所・年齢などによって異なるうえ、勤務内容でも上下します。
単純な金額の比較だけではなく、年収が高くなる理由や収入アップの方法を知ることも大切です。
今回は、看護師の年収がどれくらいなのか、給料の内訳や年収アップの方法も交えて詳しく解説します。
目次
看護師の平均年収は約508万円
医療の専門職である看護師は、年収が高いというイメージを持つ人も多いでしょう。
実際に、看護師の年収を全職種・准看護師と比較すると、以下のようになります。
※企業規模計(10人以上)
職種の平均 | 月収 | 賞与 | 年収 |
全職種 | 340,100円 | 884,500円 | 4,965,700円 |
看護師 | 351,600円 | 862,100円 | 5,081,300円 |
准看護師 | 296,200円 | 627,300円 | 4,181,700円 |
上記の金額は、都道府県・年齢・性別などで区別せず、単純に全体の平均をあらわした結果です。
看護師と全職種を比較した場合、賞与は全職種より低いものの月収が高いので、年収は全職種を上回ります。
准看護師と看護師を比較した場合、月収・賞与・年収すべてにおいて看護師のほうが高いです。
看護師は准看護師よりも担える業務が幅広く、自己判断での業務や准看護師への指示といった、重要な役割も担います。
看護師と准看護師の収入差は、仕事内容の違いから出ていると考えて良いでしょう。
准看護師の給料に関する情報は、以下のページをご参照ください。
【項目別】看護師の平均年収
看護師の年収は、年齢・性別・経験年数など、さまざまな要素によっても変わります。
ここからは、令和4年賃金構造基本統計調査のデータをもとに、男女別・年齢別・経験年数別・企業規模別・都道府県の5つの項目に分けて、看護師の年収をご紹介しましょう。
看護師の平均年収:男女別
男女別の看護師の平均年収は、次のとおりです。
※企業規模計(10人以上)
性別 | 年収 |
男性 | 5,227,200円 |
女性 | 5,063,800円 |
先の項目でご紹介した、看護師全体の平均年収は5,081,300円。
男性看護師の場合、全体の平均年収より約15万円金額が上回ります。
女性の看護師は全体の平均年収を若干下回り、男性看護師の平均年収より約16万円低いです。
全職種の女性の平均年収が約394万円なので、働く女性全体と比較するなら、看護師の年収は高いといえるでしょう。
看護師の平均年収:年齢別の平均年収
年齢別に見た、看護師の平均年収は次のとおりです。
※企業規模計(10人以上)
年齢別 | 年収 |
20~24歳 | 4,003,500円 |
25~29歳 | 4,770,400円 |
30~34歳 | 4,788,700円 |
35~39歳 | 5,058,300円 |
40~44歳 | 5,297,400円 |
45~49歳 | 5,653,600円 |
50~54歳 | 5,663,800円 |
55~59歳 | 5,784,500円 |
60~64歳 | 4,831,100円 |
65~69歳 | 3,939,400円 |
70歳~ | 3,955,300円 |
上表を見ると、看護師の平均年収は20代から徐々にアップし、50代後半にピークを迎えます。
50代は、勤続年数も長く看護師として技術も経験も成熟する時期といえます。
基本給がアップするのに加え、後進を育てるために管理職を務めるケースもあり、役職に就く分収入も上がるのです。
また、25〜34歳にかけては、看護師の平均年収に大きな伸びや変化がありません。
女性にとって25歳から34歳は、結婚・出産・育児などのライフイベントが起こりやすい年代です。
状況によっては、働く時間をセーブしなければならないこともあり、平均年収が伸びにくいと考えられます。
20代看護師の平均年収に関する情報は、以下のページをご参照ください。

看護師の平均年収:企業規模別
企業規模別で見た場合の、看護師の平均年収は次のとおりです。
企業規模 | 年収 |
10~99人 | 4,373,900円 |
100~999人 | 4,504,700円 |
1,000人以上 | 5,018,900円 |
※時間外勤務手当や深夜勤務手当などの各種手当は含まれていません(基本給と賞与を含んだ金額)
上記の表を見ると、企業規模が大きいほど看護師の平均年収が高くなっています。
企業規模の大きさに比例して年収が上がる要因として考えられるのは、次のような点です。
- 大規模医療施設は評価・昇給制度が整っている
- 諸手当の金額が小規模医療施設より高い
- 患者さんが多く業務が増えるため給与が高くなる
大きな医療施設は、利用する患者さんも多く業務が多岐にわたります。
増えた業務を滞りなく行うためには、スタッフを充実させ、できるだけ長く勤めてもらわなければなりません。
看護師らの安定的な勤務を促すためには、仕事を正当に評価し、働きに見合った収入をえられる環境を整えることが重要です。
上記の理由から、企業規模が大きい医療施設ほど、看護師の平均年収も高くなると考えられます。
看護師の平均年収:経験年数別
経験年数別に見た、看護師の平均年収は次のとおりです。
※企業規模計(10~99人)
経験年数別 | 年収 |
0年 | 3,288,900円 |
1~4年 | 3,989,400円 |
5~9年 | 3,997,500円 |
10~14年 | 4,318,900円 |
15年以上 | 4,604,700円 |
※時間外勤務手当や深夜勤務手当などの各種手当は含まれていません(基本給と賞与を含んだ金額)
上表を見ると、経験年数に比例して、看護師の平均年収がアップしているのがわかります。
経験年数が年収アップにつながる理由として、考えられるのは次の2点です。
- 経験加算制度
- 身につけたスキルへの評価
経験加算制度とは、勤続年数に比例して看護師の評価が上がり、昇給する制度です。
経験加算制度を取り入れている医療施設で働いている場合、長く務めるほどに勤務実績が評価され、徐々に年収が高くなります。
もう一つ考えられるのが、身につけたスキルへの評価です。
経験年数が豊富な看護師は、当然新人の看護師よりもスキルがあります。
より重要な業務を担当できるため、より高い給与を与えられるのです。
看護師の平均年収:都道府県別
都道府県別に見た看護師の平均年収は、次のとおりです。
都道府県別 | 年収 |
北海道 | 5,044,600円 |
青森県 | 4,492,800円 |
岩手県 | 4,787,000円 |
宮城県 | 5,040,300円 |
秋田県 | 4,870,600円 |
山形県 | 4,725,000円 |
福島県 | 4,890,300円 |
茨城県 | 5,024,400円 |
栃木県 | 4,497,700円 |
群馬県 | 4,845,900円 |
埼玉県 | 5,412,500円 |
千葉県 | 5,141,800円 |
東京都 | 5,640,500円 |
神奈川県 | 5,278,600円 |
新潟県 | 5,297,000円 |
富山県 | 5,349,700円 |
石川県 | 4,763,000円 |
福井県 | 5,116,500円 |
山梨県 | 4,983,300円 |
長野県 | 4,967,800円 |
岐阜県 | 5,318,600円 |
静岡県 | 5,229,700円 |
愛知県 | 5,212,000円 |
三重県 | 4,900,900円 |
滋賀県 | 5,182,500円 |
京都府 | 5,161,700円 |
大阪府 | 5,295,500円 |
兵庫県 | 5,414,800円 |
奈良県 | 5,457,500円 |
和歌山県 | 5,301,600円 |
鳥取県 | 4,509,900円 |
島根県 | 4,834,700円 |
岡山県 | 4,822,200円 |
広島県 | 4,908,800円 |
山口県 | 5,133,800円 |
徳島県 | 4,949,200円 |
香川県 | 4,969,200円 |
愛媛県 | 4,378,000円 |
高知県 | 4,580,000円 |
福岡県 | 4,981,800円 |
佐賀県 | 4,843,800円 |
長崎県 | 4,810,200円 |
熊本県 | 4,438,900円 |
大分県 | 4,332,500円 |
宮崎県 | 4,272,600円 |
鹿児島県 | 3,963,700円 |
沖縄県 | 4,775,100円 |
看護師の平均収入を都道府県別で見ると、地域によってかなり差があります。
例えば、東京の看護師の平均収入は約560万円ですが、鹿児島では400万円に届きません。
同じ看護師でなぜ平均年収が違うのか、原因として考えられるのは、地域ごとの給与相場の違いです。
看護師の給与には、診療報酬のように全国統一の基準がありません。
つまり、地域の給与相場が低ければ、相場に合わせて看護師の給与も低くなります。
看護師の平均収入は、勤める地域の給与相場でも左右されると理解しておきましょう。
看護師の給料・年収の傾向
看護師の給料は、学歴・年齢・手当で変わります。
詳しい傾向を、以下で詳しく見ていきましょう。
初任給は高い傾向
看護師は初任給が高いという特徴もあります。
下記は、看護師の初任給と、一般職の平均初任給をまとめた表です。
大卒 | 専門・短大卒 | |
看護師 | 271,730円 | 263,711円 |
一般職 | 228,500円 | 209,431円(高専含む) |
※時間外勤務手当や深夜勤務手当などの各種手当は含まれていません(基本給のみ)
参考:2022 年 病院看護・助産実態調査 報告書
参考:令和4年賃金構造基本統計調査
大卒の新卒でも20万円強しか初任給がない一般職に対し、看護師では20万円代後半の初任給を貰えます。
看護師の初任給が高い理由については、下記の記事を参照してください。
看護師の年収は緩やかに上昇
看護師の年収は年齢とともに徐々に上がっていきますが、大きな昇給はありません。
理由として、看護師の昇給システムは年功序列制を採用しているケースが多く、病院ごとにも昇給システムにばらつきがあるためです。
他にも、看護師は役職に就きづらいのも大きな昇給がない理由の一つです。
看護師の役職には看護師長や看護部長などがありますが、師長は各診療科に一人で、大きな病院でも数十人しかなれません。
看護部長は病院で一人だけです。
さらにこれらの役職はベテラン看護師しかなることはできないため、役職に就くまでに10年以上かかるのが一般的です。
夜勤の有無によって月収が変動しやすい
看護師の月給は基本給+諸手当で構成されています。
基本給は給料の基本となるもので、病院やクリニックなど各施設の規定に基づき決定されます。
以下は主な諸手当です。
病院や診療科ごとに支給されるものとされないものがあるため、注意しましょう。
- 夜勤手当
- 役職手当
- 残業手当
- 住宅手当
- 通勤手当
- 家族手当
- 特殊勤務手当
このなかでも、夜勤の有無は収入に大きく関わってきます。
日本看護協会が調査した職員実施調査によると、夜勤では二交代制で1回につき11,286円、三交代制では深夜5,122円、準夜4,154円が平均して支給されています。
換算すると、月収で4~5万円もの差が出てくる形です。
診療科によっては特別手当が出る場合もある
諸手当のなかには「特殊勤務手当」もあります。
看護師のなかでも専門的な知識や技術が求められたり、勤務によるストレスや心身負担が大きいと考慮される診療科に従事している場合に支払われる特別報酬です。
特別手当が貰える資格や所属先は主に次のとおりです。
- 認定・専門看護師手当
- ドクターヘリ
- 救急センター
- 手術室
- 放射線科
- 精神科
病院ごとに手当は異なるため、転職や就職時にチェックしてみると良いでしょう。
看護師が年収をアップするための方法
看護師は初任給から高い給料を貰うことができますが、年収の上昇は緩やかなのが特徴です。
他の職業に就いた同世代が出世していくなか、焦りを感じることもあるかもしれません。
ここからは、看護師が年収アップする方法をまとめていきます。
工夫や気持ち次第で給料を上げることができるため、ぜひチェックしてみてください。
副業やパート・アルバイトをする
副業として、看護師の資格を生かした単発アルバイトをするのも一つの手でしょう。
訪問入浴や介護タクシーの付き添い、トラベルナースといったアルバイトは看護師の資格を生かした副業の一つといえます。
しかし、看護師は人の命を預かる大きな責任がともなう職業であり、本業に専念させるため副業を禁止している病院も多いです。
もし副業を考えている場合は、まず自分の勤めている病院の規程を見直してみましょう。
転職・異動する
より良い条件の病院や診療科への異動・転職も、年収アップの方法の一つです。
救急病棟や精神科などでは、特別報酬として危険手当が支給される場合もあります。
他にも、夜勤専従看護師といって、日勤は行わず待遇の良い夜勤のみを専門的に行う看護師もいます。
最近では、美容外科や美容皮膚科などの分野も多くなりました。
美容分野は自由診療のため、保険診療の病院とは違って給料が高い傾向にあります。
認定看護師、専門看護師をめざす
マネジメント職ではなく、認定看護師や専門看護師の資格を取得することで自身の希少性を高める方法もあります。
リーダーシップを取ったり、各科の職場環境を整えていくよりも、自分の学んでいる診療科の知識・技術を掘り下げ、専門性を高めたい人におすすめです。
認定看護師や専門看護師は、病院により資格手当の額が異なります。
平均額は3,000円~10,000円です。
師長や部長などの役職に就く
看護師として勤続年数を重ね、知識や技術に自信がついてきたら、看護師長などのマネジメント職をめざす道があります。
看護師長や副看護師長になると、役職手当が受けとれます。
さらに看護部長クラスまで出世すると、月収で40万~50万程度貰える場合も多いです。
管理職になるためには、病院で既定のクリニカルラダーや研修を修了していく必要があります。
各病院によって管理職になるための基準が規定されているため、自分が勤める病院の基準を確認してみましょう。
自分次第で看護師の年収はあげることができる
本記事では、看護師の年収に関する情報を詳しく説明してきました。
看護師は医療職ということもあり、一般職よりも給与が高い職業です。
加えて、マネジメント職についたりスキルアップの資格をとることで、さらなる給料アップが望めます。
これから看護師をめざす人や、現在看護師として働いている人たちも、本記事を参考にして、看護師の給与アップを狙ってみましょう。