
保育士の離職率は9.3%であり、全職種の平均より低いとはいえ、業界別に見ると上位に位置しています。
保育士の離職率や離職する理由を知っておかないと、後悔するかもしれません。
離職率や離職理由をあらかじめ把握したうえで、保育士をめざしたいのではないでしょうか。
ここでは、保育士の離職率をデータを用いて徹底解説します。
合わせて、保育士の離職理由や保育士として離職を防ぐ方法も紹介します。
目次
保育士全体の離職率は9.3%
令和2年に厚生労働省から発表された「保育士の現状と主な取組」には、常勤保育士(※)の離職率は9.3%と記されています。
同じく厚生労働省から発表されている、令和4年の雇用動向調査結果の概要では、一般労働者全体(※)の離職率は11.9%でした。
– 一般的にはフルタイム勤務で働いている者(雇用形態は問わない)
※一般労働者
– 期間の定めなく雇われている、または1ヵ月以上の期間を定めて雇われている者で、フルタイム勤務で働いている者(雇用形態は問わない)
上記より、保育士単独の離職率はすべての職種の平均よりも低いことがわかります。
ただし、産業別で比較すると、保育士が含まれる医療福祉業界は5番目に離職率が高い結果でした。
つまり、保育士の離職率は全産業の平均よりは低いものの、産業別に比較すると上位に位置していることになります。
参考:2 産業別の入職と離職の状況 令和4年上半期の労働移動者を主要な産業別にみると
なお、医療福祉業界のなかには保育士以外にも医療職や介護職なども含まれており、保育士単独の離職率でない点は留意しましょう。
とはいえ、先ほど紹介したように保育士単独の離職率は9.3%と、医療福祉業界での離職率(9.9%)とそれほど変わりません。
いずれも高い水準に位置していることに変わりはないでしょう。
保育士の離職率をさらに掘り下げて見ていきましょう。
運営元別の離職率
先ほど紹介した「保育士の現状と主な取組」には、運営元別の離職率についても、以下のように記されています。
- 公営:5.9%
- 私営:10.7%
公営と私営で離職率に2倍近く差があることがわかります。
公営の離職率が極めて低く、理由としては以下のものが考えられます。
- 公務員として働ける
- 給与や退職金が良い
- 福利厚生が充実している
- 勤務時間が決まっており残業が少ない
私立よりも待遇がよく残業が少ない点から離職率が低くなっています。
経験年数別の離職傾向
保育士の経験年数から、離職する年代の傾向を見ていきましょう。
以下のグラフは、離職率ではなく保育所で働く保育士の経験年数別の割合を表しています。
2年未満 | 2~4年 未満 |
4~6年未満 | 6~8年 未満 |
8~10年 未満 |
10~12年未満 | 12~14年未満 | 14年以上 |
15.5% | 13.3% | 11.1% | 9.5% | 7.9% | 6.7% | 5.8% | 30.1% |
厚生労働省が公開している「保育士の現状と主な取組」の中では、「平成27年社会福祉施設等調査」より、保育士の経験年数と離職率のデータが取り上げられています。
この調査によると、8年未満の保育士が全体の約半分の49.4%を占めています。
保育士の離職理由
「保育士の現状と主な取組について」で取り上げている、「過去に保育士として就業した者が退職した理由」によると、保育士が離職した理由として最も多いのが「職場の人間関係」で、33.5%の割合です。
次いで、給料の安さ、仕事量の多さがランキング上位に入っています。
画像出典:保育士の現状と主な取組について
ここでは、上記の調査結果で多かった、以下の5つの退職理由について詳しく解説します。
- 職場の人間関係
- 給料が安い
- 仕事量が多い
- 労働時間が長い
- 妊娠・出産
職場の人間関係
保育士の離職理由として多いのが、職場の人間関係です。
保育園では女性が多く、同性のみの閉鎖された職場環境のなかで派閥ができたり、職員同士でいじめが起きたりすることがあります。
例えば、多忙な仕事をこなすなかで、イライラしたり、八つ当たりしたりしてトラブルとなることもあるでしょう。
さらに、過度な要求をしてくるモンスターペアレンツの対応や保護者とのやりとりなどもストレスの原因となります。
給料が安い
保育士のきまって支給される給料は、月27万円前後です。
待機児童問題解消に向けた国の取り組みなどにより保育士の賃金は増加しているとはいえ、あとで紹介する仕事量の多さや、子どもの命を預かるという責任の重さと見合っていないことが、給料を理由とする離職の原因と考えられます。
また、保育士の国家資格を取得するためにかかる期間や費用に、報酬が釣り合わないと感じるケースもあります。
保育園によっては、残業手当がなかったり、昇給が期待できなかったりすることも、保育士が給料が安いと感じることの多い理由です。
仕事量が多い
仕事量の多さも、保育士が離職する理由です。
保育士は、子どもにご飯を食べさせたり、一緒に遊んだりするだけでなく、その他にも多くの仕事を抱えています。
例えば、書類関係をまとめる事務作業やイベントの準備、保護者との連絡などです。
さらに、保育士同士の会議や研修なども業務に含まれます。
すべての業務を労働時間内で終わらせるのは困難であり、残業や休日出勤が必要となることもあります。
時間外や休日に自由な時間が取れないと、不満を抱えることになるでしょう。

労働時間が長い
令和4年賃金構造基本統計調査によると、保育士の時間外労働は1ヵ月あたり3時間と、統計上は多くありません。
しかし、退職理由として労働時間の長さが挙げられていることから、実際にはサービス残業が行われているケースも多いと考えられます。
労働時間が長くなるのは、保育士不足が大きな原因でしょう。
仕事が終わってから育児や家事をする必要がある人にとっては、働きにくい環境といえます。
一度退職したあと再就職しようとしても、厳しい労働時間に対応できず復帰を諦めるケースもあります。
妊娠・出産
保育士が離職する理由として、妊娠や出産もあります。
妊娠や出産をすると、体力が必要となる保育士の業務がしにくくなるからです。
他にも、妊娠した状態で活発な子どもがいる保育園で働きにくかったり、人手が足りない状況で育休を取ると迷惑をかけてしまうと感じたりすることなども退職を選ぶ理由です。
産休や育休制度があるとはいえ、利用しづらい雰囲気があったり、体調に自信がなかったりして、しかたなく退職を選ぶケースも多いとされています。
保育士として働く方が離職を防ぐ方法
ここまで保育士の離職率や離職理由を紹介してきましたが、保育士には多くのやりがいがあることも事実です。
離職につながる原因を解消すれば、やりがいを感じながら保育士として働き続けることもできるでしょう。
そこで、保育士として離職を防ぐ方法を2つ紹介します。
働きやすい職場を選ぶ
保育士として離職を防ぐ方法は、働きやすい職場を選ぶことです。
職場によって働きやすさは大きく異なります。
就職先や転職先を見つける際は、以下のポイントを押さえておくと、ミスマッチや早期退職を防げるでしょう。
- 職場の雰囲気や人間関係が良好か
- 有給休暇の取得率が高いか
- 福利厚生がしっかりしているか
- 保育士の人数に余裕があるか
- 園の保育方針が自分の考えと合っているか
保育士の離職理由として多い、職場の雰囲気や人間関係はとても大切です。
なぜなら、心身ともに健康に働くためには、一緒に働く人との関係が重要だからです。
保育士の適性があるかを確認する
保育士の適性があるかを確認することも、保育士として働いた際の離職を防ぐ方法です。
どの仕事にも適正があるように、保育士にも向いている人と向いていない人がいます。
実際に働いてみて向いていないと感じれば、残念ながら離職につながってしまいます。
これから保育士をめざしたいと考えている方は、自身が保育士に向いているかを確認しておきましょう。
<保育士に向いている人の一例>
- 子どもが好き
- 世代を問わずコミュニケーションがとれる
- 忍耐力がある
<保育士に向いていない人の一例>
- 子どもが苦手
- 人付き合いが苦手
- 複数の仕事をこなすのが苦手
保育士の離職率は全職種の平均より低く業界別に見ると高い
保育士の離職率は9.3%で、全職種の平均より低いとはいえ、業界別に見ると上位に位置しています。
保育士の離職率や離職する理由、離職を防ぐ方法を把握しておかないと、こんなはずではなかったと後悔するかもしれません。
保育士の離職理由で多いのが、職場の人間関係です。
そして、給料の安さや仕事量の多さ、労働時間の長さなども挙げられます。
離職を防ぐには、働きやすい職場を選んだり、保育士の適性があるかを確認したりしましょう。
この記事を参考に、保育士の離職率や離職を防ぐ方法を知ってチャレンジしてください。