
看護師のなかには、現在の職場を退職したいと考えている人もいるのではないでしょうか。
しかし、今までお世話になった職場だからこそ、退職理由を伝えにくいと感じる方も多いでしょう。
今回の記事では、看護師の主な退職理由を紹介するとともに、理由別に職場への伝え方を解説します。
伝え方の例文も紹介していますので、退職を職場に伝えたいと悩んでいる人は、本記事の内容を参考にして、勇気を持って伝えてみましょう。
また、看護師の離職率や退職の流れについては、こちらの記事で紹介しています。
目次
看護師が退職したい理由の1位は「他の職場への興味」
2022年度『ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析』によると、就業している看護師の退職したい理由の1位は「看護職の他の職場への興味」でした。
以下、上位10の理由を表にまとめます。(単位:%)
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 看護職の他の職場への興味 | 13.6 | 11.5 |
2位 | 子育て | 9.4 | 7.4 |
3位 | 結婚 | 8.2 | 6.9(4位) |
4位 | 転居 | 8.2 | 7.2(3位) |
5位 | 勤務時間が長い・超過勤務が多い | 6.8 | 5.2 |
6位 | 自分の健康 (主に身体的理由) |
6.7 | 5.0 |
7位 | 夜勤の負担が大きい | 5.5 | 4.4(8位) |
8位 | 親族の健康・介護 | 5.5 | 4.0(10位) |
9位 | 昇進・昇給・給与に不満 | 5.2 | 4.7(7位) |
10位 | 妊娠・出産 | 4.8 | 4.3(9位) |
参照:
2022年度『ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析』結果
2021年度「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」 結果
他にも「上司との関係」「休暇が取れない」「家事と両立しない」など、処遇や労働条件に関する理由が多くなっています。
また「自分の適性・能力への不安」「責任の重さ・医療事故への不安」といった職務に関わる不安や、「リフレッシュ」「自分の健康(主に精神的理由)」などの精神面での理由も挙げられています。
【年代別】看護師の退職理由
看護師の退職理由は、年代によって少しずつ傾向が異なります。
ここでは、2022年度『ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析』の結果をもとに、年代別の看護師の退職理由上位3つを紹介していきます。
(※以下表の単位:%)
20~30代
20代では、他の職場への興味や夜勤の負担、自分の健康などが上位の転職理由となっています。
特に24歳以下の比較的看護師経験が浅い世代では、業務に対する精神的なプレッシャーを感じる傾向が強いことも考えられます。
■24歳以下
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 自分の健康 (主に精神的理由) |
20.3 | 11.8(6位) |
2位 | 看護職の他の職場への興味 | 16.9 | 16.7 |
3位 | 勤務時間が長い・超過勤務が多い | 12.9 | 17.0(1位) |
■25~29歳
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 看護職の他の職場への興味 | 23.3 | 17.8 |
2位 | 転居 | 14.3 | 10.3 |
3位 | 夜勤の負担が大きい | 10.8 | 8.3 |
30代は、結婚や出産、子育てなど、ライフステージに大きな変化がある年代です。
転職理由として「転居」や「子育て」が上位に挙げられています。
■ 30~34歳
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 看護職の他の職場への興味 | 17.2 | 15.4 |
2位 | 転居 | 12.2 | 10.2 |
3位 | 子育て | 10.5 | 7.8(4位) |
■35~39歳
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 看護職の他の職場への興味 | 16.8 | 13.1 |
2位 | 子育て | 16.6 | 11.9 |
3位 | 転居 | 8.6 | 7.2 |
40~60代
40代は、子育てをしている人が多い世代であり、家庭と仕事のバランスを保たなければいけない人もいるでしょう。
40代前半で最も多い退職理由としては、「子育て」が挙げられています。
■40~44歳
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 子育て | 16.1 | 12.5 |
2位 | 看護職の他の職場への興味 | 15.4 | 12.0 |
3位 | 結婚 | 8.5 | 6.5 |
■45~49歳
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 看護職の他の職場への興味 | 13.6 | 11.0 |
2位 | 子育て | 11.9 | 9.2 |
3位 | 結婚 | 7.8 | 6.6 |
50代や60代では、親の介護や自身の体調が退職理由として挙げられています。
また、60〜65歳で定年としている企業もあり、60代以上では定年による退職が多いです。
■50~54歳
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 看護職の他の職場への興味 | 12.9 | 10.8 |
2位 | 結婚 | 9.2 | 8.3 |
3位 | 親族の健康・介護 | 8.8 | 6.4(5位) |
■ 55~59歳
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 親族の健康・介護 | 10.7 | 9.2 |
2位 | 看護職の他の職場への興味 | 8.6 | 7.5 |
3位 | 転居 | 8.2 | 6.5(4位) |
■ 60歳以上
2022年度 | 2021年度 | ||
1位 | 定年 | 31.3 | 26.3 |
2位 | 親族の健康・介護 | 7.8 | 6.0 |
3位 | 自分の健康 (主に身体的理由) |
5.6 | 4.5 |
参照:
2022年度『ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析』結果
2021年度「ナースセンター登録データに基づく看護職の求職・求人・就職に関する分析」 結果
看護師の代表的な退職理由の詳細
看護師の退職理由を年代別に見てきました。
ここからは、よくある看護師の退職理由について、その背景も含めて紹介していきます。
看護職の他の職場への興味
看護師の最も多い退職理由が「看護職の他の職場への興味」でした。
同じ看護師の仕事でも、職場によって具体的な業務内容や得られる経験、待遇、働き方などは大きく異なります。
代表的な例として、病棟で働く場合は夜勤のあるシフト制の勤務になりますが、入院機能がないクリニックでは夜勤は必要ありません。
「看護師としてキャリアアップのために他の経験を積みたい」「ライフステージに合わせて柔軟に働きたい」「今の職場に不満がある」など後述する理由も絡み、他の職場に興味を持つようになります。
こちらの記事では、看護師のキャリアアップ方法について紹介しています。
キャリアアップのための転職を考えている場合は、参考にしてみてください。

ライフステージや家庭環境の変化
誰しも結婚や出産・育児、転居、家族の介護など、ライフステージや家庭環境の変化がともなう時期はあるでしょう。
ライフステージや家庭環境の変化は、看護師のよくある退職理由にもなっています。
看護師の職場では2交代・3交代などといった変則的なシフトを取り入れている職場も多いです。
子育てや介護などの家庭の事情により仕事と家庭の両立ができず、現在の職場で仕事を続けることが難しいと感じることもあるでしょう。
一度仕事を離れて家庭の都合を優先させたり、融通が利く職場への転職をめざす人もいます。
シフト制を取り入れている職場での働き方は、こちらの記事で紹介しています。
自身に適した働き方かどうか知りたいと感じている場合は、ぜひ参考にしてみてください。

労働環境や待遇への不満
労働環境や待遇への不満も、看護師の主な退職理由です。
特に人手不足の職場では、一人の業務量が多くなって残業が増えたり、シフトの急な変更により休日の予定が立てづらかったりするなどの状況が増え、労働環境が悪化しやすいです。
個々の負担が増え、プライベートが犠牲になってしまうことで不満を感じてしまうことも考えられます。
また、急性期病院など忙しい職場では、多忙な割に給料が安いと感じてしまったり、経験年数が上がるにつれ看護師としての能力は上がっているのにも関わらず、適切に昇進や昇給されない状況に不満を抱いたりするケースもあります。
仕事内容に見合った評価や対価を得られる職場に転職したいと考え、退職を希望する人もいるでしょう。
看護師の残業時間や年収は、こちらの記事で紹介しています。
自身の労働環境を見つめ直す際に、参考にしてみてください。
体調不良
看護師の仕事は、基本的に立ち仕事が多く、体力や腕力が必要になる場面もあります。
特に体位変換や清拭など患者さんのケアでは腰に負担がかかり、腰痛になってしまうなど、年齢を重ねるなかで肉体的に仕事を続けることが難しいと感じる人もいるでしょう。
また、看護師の仕事に慣れない新人看護師の頃は、夜勤を含む変則的なシフトや患者さんの命に関わるプレッシャーを感じ、精神的ストレスにより体調不良に陥ってしまうケースもあります。
人間関係の悩み
看護師はチームで連携しながら働かなければいけません。
看護師同士はもちろんのこと、医師や薬剤師をはじめとする他の医療スタッフとも良好なコミュニケーションを取ることが、患者さんへより良い医療を提供するために重要です。
同僚と価値観が合わない、パワハラを受けている、うまくコミュニケーションが取れないなどの人間関係の悩みは、仕事に大きな支障を及ぼします。
どれほど関係が悪化していても、業務上ではやりとりを行わなければいけないため、ストレスを抱えてしまいかねません。
部署移動なども含めて人間関係の悩みが解決できない場合に、退職する人もいるでしょう。
看護師が退職理由を伝える際のポイント
看護師が退職したい理由はさまざまですが、伝え方によっては引き留められるケースがあります。
ここでは、看護師が退職理由を伝える際に押さえておきたい3つのポイントを解説します。
- やむを得ない理由を見つける
- 嘘をつかない
- ネガティブな理由は言い換える
1つずつ解説します。
やむを得ない理由を見つける
看護師が退職理由を伝える際、やむを得ない理由を見つけるようにしましょう。
自身の健康状態や、家族の介護、パートナーの転勤など、本人の意思ではどうにもならない理由であれば円満退職しやすくなります。
できるだけ具体的な理由を説明すれば、引き留められにくくなるでしょう。
嘘をつかない
退職理由を伝えるときは、嘘をつかないことが大切です。
嘘をついてのちのちそれが発覚してしまうと、信用を失ったり、金銭トラブルに発展したりするリスクがあります。
どうしても辞めたいからとはいえ、退職理由は嘘をつかず、事実のみを伝えることが大切です。
ネガティブな理由は言い換える
ネガティブな退職理由の場合、前向きな言葉に言い換えるようにしましょう。
例えば、人間関係が理由で退職したい場合「職場に苦手な上司がいるので退職させてください」とストレートに伝えても、受理されないケースがあります。
「自分なりに受け止め方を変える本を読んだり、リフレッシュする方法を試したりしたのですが、もっと前向きに集中できる環境で働きたいと思います。」など、努力した点や前向きな退職である点を伝え、ネガティブな印象を与えないよう心がけましょう。
看護師が円満に辞めるための退職理由と伝え方例文
看護師が円満に辞めるための退職理由と伝え方を、以下6つのケース別に紹介します。
- キャリアアップ
- 結婚
- 出産・育児
- 通勤困難
- 体調不良
- 家族の介護
キャリアアップの場合
看護師としてのキャリアアップは前向きな理由であるため、受け入れられる可能性が高いといえます。
何のために、どうなりたいか、など具体的に伝えると説得力があります。
学生時代から〇〇科に興味がありました。この職場で学んだ知識や経験を活かし、今後〇〇分野に特化した病院で専門性を高めたいと考えています。
そのため、◯月いっぱいで退職させていただきたいです。
結婚の場合
結婚が退職理由の場合、家庭の事情なので受け入れられる可能性が高いでしょう。
とはいえ、結婚して仕事をしている看護師も多いため、職場によってはスムーズにはいかないことも考えられます。
自分だけの意思ではなく、パートナーや家族と相談した結果、退職する方針になったことを伝えれば、引き留められにくくなるでしょう。
◯月に結婚することになりました。
相手と相談し、しばらく家庭に専念したいので、退職させていただきたいです。
出産・育児の場合
出産・育児が退職理由の場合、結婚と同様、家庭の事情なので受け入れられる可能性が高いでしょう。
その反面、産休・育休制度や託児所を活用すれば仕事との両立は可能だと、引き留められるケースもあります。
結婚の場合と同様、パートナーや家族の意思も反映させた結果、退職する方針になったことを伝えると引き留められにくくなるでしょう。
◯月に出産予定です。
出産後も働き続ける予定でしたが、限られた子育ての期間、家庭に専念したいと考えるようになりました。
家族の意向もあり、出産を機に退職を希望いたします。
現在子育てをしながら働いておりますが、育児と仕事の両立が難しくなってきました。
体力的・精神的にも余裕がなく、家族に相談したところ、しばらく育児に専念して欲しいと言われました。
これまで自分なりに努力してきましたが、子どもと家庭のことをまずは優先させたいと考え、退職を希望いたします。
転居による通勤困難の場合
通勤困難が退職理由の場合、パートナーの転勤などによる転居であれば引き留められることは少ないでしょう。
とはいえ、通勤可能な範囲内での引越しの場合、職場によっては引き留められるケースがあります。
転居先の近くの職場で、キャリアアップをめざしたい、といった前向きな理由を伝えれば、受け入れられやすくなるでしょう。
他に、腰痛などが原因で通勤が困難になったような場合、やむを得ない理由なので受け入れられやすくなります。
◯月に家族の転勤が決まり、引越しをすることになりました。
転居先からの通勤が困難なため、非常に残念ではありますが、退職させていただきたいと思います。
◯月に引越しをすることになりました。
こちらの職場で働き続けることも検討したのですが、転居先の近くに訪問看護ステーションがあり、以前から興味があった訪問看護の専門性を高めたいと考えるようになりました。
そのため、◯月◯日付で退職させていただきたいと思います。
家族の介護の場合
家族の介護が退職理由の場合、やむを得ない理由なので受け入れられやすいでしょう。
場合によっては、自身の働く職場への転院を提案されるケースがあるため、家族の状況を具体的に説明することが大切です。
一人暮らしの母が脳梗塞で倒れ、寝たきりになってしまいました。
家族と話し合い、私が介護をすることになりました。
仕事と両立が難しく、介護に専念したいため退職させていただきたいと思います。
待遇や労働環境への不満の場合
待遇や労働環境への不満による退職であったとしても、職場に主な退職理由として伝えることは避けましょう。
一時的な改善策を提案されてしまい、すぐに辞めにくい状態になってしまう可能性があります。
今の職場では叶えることができないキャリアやスキルアップなど、ポジティブな理由と組み合わせて伝えましょう。
急性期対応で、患者さんに対して必要なケアを行えているのか自問自答する日々が続いていました。
あらためて自分自身が行いたい看護を見つめ直したところ、患者さん一人ひとりとゆっくり向き合っていきたいと感じるようになりました。
今までの経験を糧にしつつ、他の分野で患者さんとの信頼関係を大切にキャリアアップしていきたいと思い、退職させていただきたいと考えています。
ここ数年残業が増え、なかなか自分自身の時間が取れない状況が続いてしまいました。
今後のキャリアのためにも自分の時間を確保し、スキルアップのために勉強する時間を取りたいと考えたため、○月○日付で退職させていただきたく思います。
体調不良の場合
体調不良が退職理由の場合、やむを得ない理由なので引き留められにくいといえます。
とはいえ、夜勤をしている場合は日勤のみにしたり、一時的に休職したり、体力的な負担の少ない部署へ異動を提案されたりと、引き留められるケースもあります。
どうしても受け入れてもらえない場合、医師の診断書を提出するのも一つの方法です。
退職の意思が変わらなければ「不定期に休むことで、周りのスタッフに迷惑をかけたくない」と伝えると良いでしょう。
以前から調子が悪かったので受診したところ、〇〇という診断でしばらく休養するように言われました。
治療に専念したいため、退職させていただきたいです。
持病の〇〇の症状が安定せず、急に休みをいただくことが多くなってしまいました。
周りのスタッフの勤務調整などでご迷惑をかけてしまうため、心苦しく感じております。体調が安定するまでしばらく治療に専念したいため、退職を希望いたします。
人間関係の悩みの場合
人間関係の悩みも、職場に事細かに伝えるのは避けましょう。
「どの職場でも人間関係の悩みはつきもの」「人間関係を良好にするのもあなたの成長につながる」などと言われてしまうかもしれません。
他の職場への興味やスキルアップなどといった、前向きな理由と合わせて伝えましょう。
ここ数年、職場内の人間関係に悩んできました。
接し方を変えてみたりなど工夫を重ねてきましたが、改善できず働き続けることが難しいと感じています。
加えて、私自身在宅看護分野に興味があり、看護師としてのキャリアを変えていきたいと考えるようになったため、退職させていただきたいです。
職場内でのコミュニケーションがうまくいかず、仕事上でのやり取りに悩んでいました。
これからのキャリアを見つめ直し、看護教員として看護師を育てていきたいと考えるようになったため、退職いたします。
新たな環境のなかで、心機一転新しい人間関係を築いていきたいと考えております。
看護師の退職理由はポイントを押さえて伝えよう
看護師の退職理由は、キャリアアップ、職場の処遇や労働条件、家庭の事情など、人によってさまざまです。
なかにはネガティブな理由もありますが、できるだけ前向きな言葉に言い換えることが大切です。
退職理由の伝え方のポイントを押さえ、円満退職につなげましょう。